魔王ちゃんとその罪の行方
「はい、裁判」
「離せぇ僕たちは無実だぁ!」
「他に拘束されるなぞ久々だ。アヤメ=ジブリッド、随分と上等な拘束スキルを持っているな、スキルが使えん」
ホムンクルスを完成させたすぐ、僕とアンデルセンはアヤメちゃんのスキルに拘束され、学園の一室にて女神さまに囲まれて、女神裁判ミニを執り行っていた。
「アンデルセンは極刑で」
「ヘリオス貴様っ」
今この場にはアヤメちゃんラムダ様、テルネちゃんクオンさん、それにヘリオス先生とソフィアとカナデ、ガイルとテッカ、アルマリアとロイさん、ミルドがいる。
ソフィアとカナデ、ロイさん以外はひどく呆れた顔をしており、僕たちを囲んで座っている面々の視線がチクチクしている。
「弁護士、弁護士を要求します!」
「そんなもんはいない。大人しく罰を受けなさい」
「リョカ=ジブリッドはともかく、俺に関しては咎められる謂れはない」
「お前自分の名前を言ってみろや」
「まあ待て。そもそも俺のあの側は、元々頼まれごとだ。どっかのアホの幼馴染が七日以内に量産戦力を作れとか言う無茶ぶりの末に出来上がったものだ。俺は生もの専門ではない」
「無王を顎で使う人がいるんだ、そっちの方がヤバくね?」
「……ああそうだな、お前もよく知る人物だぞ」
無王をそんな雑に使える人間なぞいただろうかと僕が首を傾げていると、ソフィアがそっと手を上げたのが見えた。
いいぞソフィア、そのまま僕の弁護をよろしく。
「あの、私たちは理解できていないのですが、そもそもリョカさんのあれはそれほど咎められるものなのでしょうか?」
「そうだそうだぁ、僕がなにしたって言うんだ」
「……そうね、まずはその説明からね。いいソフィア、俺たちは仮に人間が新たな生命を作ったとしても文句なんか言わないわ」
「それなら――」
「問題なのはそこの馬鹿が、俺たちがまったく干渉できない生命を作り出したことよ」
「ん~?」
小首を傾げて幼い思案顔を見せるソフィアに興奮していると、テルネちゃんがため息をこぼしながら僕が用意した焼き菓子を口に運び、それを紅茶で流し込んだのち、口を開いた。
「良いですかソフィア、この世界に存在する以上、女神の干渉は必ず受けます。信仰然り、加護然り、ギフト然り――魔物ですら私たちの干渉を受けています。けれどリョカさんが作り出したあれにはそれがない。すなわち、世界に存在を認められていないバグみたいな存在ということです」
「ばぐ?」
「しかもリョカ、お前それを狙ってやったな?」
「……」
僕はスッと顔を逸らし、そっと目の前のロイさんに目をやるのだが、彼は神官である。女神さまが把握していない生命を生み出すことを良しとしていない。首を横に振られた。
僕はがっくりとうな垂れると、アヤメちゃんに弁明する。
「ちゃんと理由があるんですよ」
「よし聞いてやろう」
「なにも世界や女神さまに叛逆を画策したわけではありません。いや違うんすよ、実はベルギルマでのことがあって大変なことに気が付いてしまいまして」
「なによ――」
「女神さまの加護を通して女神さまの視界をジャックできることに気が付いてしまいましたぁ」
「――はぁっ!」
アヤメちゃんの大きな声を皮切りに、女神さま方が揃って頭を抱えてしまった。
「ん、つまりどういうことだ?」
「えっとねテッカ、エンギとの戦いのときに、女神さまの加護はいい加減って話をしたでしょ? まさにその通りでね、あれの応用で、加護を辿って女神さまの視界、それと声を引き込むことが出来るんだよ。女神さまは加護を通して世界を見ている、情報の宝庫だ。そんなもん、魔王に与えてみろ、何でもできるぞ」
「ああ確かに、世界そのものの情報か。俺のように闇に生きていた人間には喉から手が出るほど欲しいだろうな」
「そういうこと。だからこそのこれ――別にホムンクルスに付与する必要はなかったかもだけれど、出来るんなら試しておこうと思ってね。あれら、人体実験にも使えるし」
「発想がこええのよ。いやだが、え? なにお前俺たちの視界奪えるの?」
「ばっちり持って行けますね。でも僕でも出来るってことはエンギみたいに出来る魔王がいるかもしれないってことです。そもそも女神さま方のリテラシーどうなってるんですか?」
「逆に説教始めやがったわよこいつ」
「心配してるんですぅ」
僕がガルルと声を上げると、手を叩いたラムダ様が僕たちから視線を集め、盛大なため息をついた。
「そういうことなら話が変わってくるね。とりあえずご飯食べながらにしよっか?」
そう言ってラムダ様が締めてくれ、僕とアンデルセンの拘束が解かれるのだった。




