魔王ちゃんと融解する望郷
「あ~もうっ、アヤメちゃんに泣かされたぁ」
「たまには泣きなさい、お前は人だろう?」
「……神獣様、僕の好感度上げて何をするつもりですか?」
「そうねぇ、新しいギフトでも考えてもらおうかしら?」
「僕の信仰でも好きなだけ使ってくださいな」
「頼りにしてるわよおね~ちゃんっ」
ニヒヒと笑うケモ神様を赤ら顔の呆れ顔で見つめ、僕は肩を竦ませると背中にふわりと心地よい重さが乗っかり、首を回して背後に目をやる。
「リョカちゃんは意外とアヤメに弱いよね。あたしもそういうことを言ってあげられたらいいんだけれど、あっちのこととなると管轄外でね」
「いえいえ、ラムダ様にもいつもお世話になりっぱなしですよ」
「役に立っているのなら良かったよ。でもアヤメの言う通り、爆発する前にはひと声かけてね」
僕がラムダ様に苦笑いを向けると、同じくやってきたテルネちゃんがアヤメちゃんを訝しんだ様な目で見ていた。
「リョカさん、騙されてはいけませんよ。そこの獣はどうせ後々威厳を地に落とす行動をするので、今マイナスにならないように蓄えているだけなのです。いつもそうです」
「おいテルネ、俺がいつ威厳を地面に埋めたのよ?」
「いつもって言っているでしょうが。カグラの時もそれが起きる前に大分威厳を稼いでましたからね。あの時はさすが長女なんて感心したものですが、すぐに失墜しましたよ」
呆れたように話すテルネちゃんも、普段ならしないのに僕の隣に腰を下ろしてくれる。
ああこれは――。
「ルナがいるとこうして落ち着いて話も出来ないからいい機会だよね。僕もゆっくりとリョカちゃんと話したかったから、こういう機会は助かるよ」
「そのルナが拗ねてんだが?」
「ミーシャちゃんに慰めてもらってるんだからいいでしょ~」
クオンさんがテルネちゃんと反対側に寄り添ってくれ、僕の口元はついモニョモニョとした形で顔の温度と涙腺から水分が上がってくる感覚に頭が働かなくなる。
「月の魔王様にも人らしく、女の子らしい一面があったんだね。あたしはもっと強がるんじゃあないかと思っていたよ」
「ヴィヴィラ、こいつは強がるんじゃなくて本当にそこに考えが及んでいないだけなのよ。自分本位のくせに、自分のことを考えられない奴なのよ」
「あたし、リョカちゃんちょっと怖かったんだけれど、なんだ、意外と可愛い所があるんだねぇ」
フワフワ浮いたまま、顔をずいっと近づけてからからと笑うヴィヴィラ様に、僕は半目で睨めつける。
ああもう、囲われてる。
「……あの、僕こっちに来てから本当に涙腺弱まってるので勘弁してくれません?」
「あと他人への好感度の受け入れ上限も下がっているわよ。いいことじゃない、そうやって甘えられる人をどんどん増やしなさい」
僕は頬を膨らませ、再度アヤメちゃんの頭に顔を埋める。
ああもう、どんどん溶けていく。
こびりついた汚れも、私であった証明も――ああ、これだけ可愛いに囲まれているのだから当然か。
「あまりにも贅沢では?」
「でしょ? 敬いなさい」
僕は小さく笑みをこぼし、救われていく心に心地よい温もりを覚えるのだった。




