魔王ちゃんと世界を渡るデメリット
「へいへいへ~い! どうしたどうした金色炎!」
「最良の勇者が年下の女の子に煽られまくって身動き取れないって恥ずかしくないんですかぁ?」
「……」
「……アルマリア」
ミーシャが聖都に攫われてから1週間ほど経った現在――僕たち学園組はあらゆる手段と人手を駆使してダンジョンを作り上げようとしていた。
その一環で、世界を渡った際に発生するデメリットの検証をしていた。
その検証をガイルにやってもらっているのだけれど、体が重たそうで、まともに動けないという状態になった。
それを僕とアルマリアで煽っているところなのだけれど、ガイルは額に青筋を浮かべ、ロイさんは頭を抱えていた。
「カナデあれは悪い例だ、貴様は真似するなよ。魔王としての品位もなければ、ギルドマスターとしての矜持もない」
「あ~そういえば、ミルドはギルマスもしてたんだっけ?」
「極星だからな」
「……お前の言葉には同意しかないが、俺が聞いた話ではあいつらもお前にだけは言われたくはないと思うぞ」
「風切り、貴様も教育者なのだろう。ダメなものはダメと言わねば――いだだだだだ」
「ミルドさ~ん、どの口で言っているのですか?」
「げぇ! ソフィア!」
そんな愉快な声がソフィアとカナデ、テッカとミルドの方から聞こえてきた。
テッカの言う通りミルドにだけは言われたくはなかったが、それよりも僕の視線はアルマリアの臀部にだけ向けられており、彼女がガイルを煽るたびに揺れるそれを首を振って見続けている。
「怖い怖い怖い」
「……アヤメちゃんも混じってきてくださいよ」
「やだよ」
「二十歳超えたメスガキも大変結構ですが、ケモミミ携えたメスガキも大好物――それでガイル、どんな感じ?」
「いきなり素に戻るな!」
ガウガウしてツッコんでくれるアヤメちゃんを撫でながら、まったく身動きの取れないガイルに声をかけた。
「……どうもこうも、体の違和感がやべぇ。これって俺が俺でありながら別人ってことなんだよな?」
「そうそう」
今僕が試しているのは不特定多数の強制世界渡りなのだけれど、僕の世界渡りには収束の結果が適応されており、世界を渡ったのならこの姿だろう。という結論があるために、自分とは違う人生を歩んだ別人の体を動かさなければならず、ガイルのような戦闘のプロフェッショナルにとってはそれは隙どころか不快でしかないようで、その検証を行っていた。
「それって動けないほど?」
「ん、無理。なんか体が重い」
「ふむ……」
どこか適当な世界から持ってきたからか、どうにも体が適応されていないのだろうか。
僕はチラとアヤメちゃんを見ると、彼女はため息をつき、耳をピンと立てた。
「リョカ、その世界にはその世界の理がある。お前自身その辺り曖昧にしちまうし、俺やルナなんかはその類は効きやしねぇ。でもただの一般人じゃ世界なんて渡るのは自殺行為だぞ」
所謂、異世界転移というのは難しいという話なのだろう。
でもあれはそれなりに浪漫が――。
「ああそうか、だから所謂、神様からのチート能力か」
「は?」
「世界を渡る際に上位者からの特典にしちゃえばいいんだ」
「……お前女神でもやんの?」
「あっちで必要ならそれもやぶさかではないかな」
「もうどうにでもしてくれ~。楽しければ俺ももう何も言わないわよ」
アヤメちゃんが呆れたように肩を竦ませたから、彼女を抱き上げてそのまま撫でる。
そんな僕たちをテルネちゃんが苦虫噛んだような顔で見ているけれど、もう決定事項故に反論は受け付けません。
僕はそんなことを考えながら指を鳴らすと、ガイルの世界渡りの状態を解くのだった。




