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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
52章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、離れてもいつも通り。

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聖女ちゃんと勇者たちとの悪だくみ

「……本当、仕方のない子ね」



「あぅ、テルネのばかぁ」



 聖都にてミリアに連れられて神殿内を歩んでいると、突然この大聖女やその他勇者、聖女の内の数人かが切羽詰まったかのように顔を青ざめた。

 シィラも深刻そうな顔を浮かべており、あたしたちを放ってあちこちに動き出した。



 なぜこれだけ聖女たちが焦っているのか――それには覚えがあった。

 先ほど世界を揺るがすほどの脅威、世界を揺るがすほどの圧倒的な気配。

 まるで災害だ、あんな気配を見せつけられて、あたしの拳が疼かないはずはない。ないのだけれど、どうにも本意ではないらしく、それはすぐに収まった。



 けれどここの聖都の人間はそう捉えなかった。

 災害がやってくる。今すぐに備えなければ――そうしてこうやってじたばたと忙しなくしている。



 ここの戦力でどうにかなる相手ではないのに、相手を知らないというのはそれなりに無謀なことも出来るということを知れた。

 あたしがそうして神殿の壁に背を預けていると、コソと3人が近づいてきた。



「ミーシャ」



「ん――別に何ともないわよ」



「ヒナ様から聞きました。今はリョカ様も落ち着いているそうで、本当に一瞬だけだったみたいです」



「あぅ、女神があれだけそばにいながら、申し訳ないですよぅ」



 セルネ、クレイン、ピヨ子が先ほど世界に奔ったリョカの威圧についてあたしに声をかけてきた。



「も~、リョカは何をやってるのさ」



「……ごめんなさい、内なる魔王を抑えられなかったみたいで」



「リョカさん、可愛いが足りなくなると思考が冴えちゃうですね。テル姉には1人コスプレ大会を開くの刑を科したほうが良いと思うです」



「アヤメとラムダに言っておきますね」



 どうにもテルネか、もしくはアンデルセンか――どちらの影響かわからないけれど、リョカが全思考を回した結果、世界を威圧するほどの魔王面を表に出してしまったらしい。



 ルナとヒナリアは女神が悪いと言っているけれど、抑えが利かなくなるほど好き勝手していたリョカが悪い。

 あたしはルナとピヨ子の頭を一撫でし、女神はそれほど悪くはないと告げる。



「まっ、ミーシャが気にしていないならいいか」



「なによ、一丁前にあたしの心配をしていたの?」



「いやそりゃあするよ。リョカに何かあったら一番影響受けるのミーシャでしょ」



「あの子はそんなに弱くないわよ」



「俺はミーシャのことを話しているんだけれど」



「なら愚問でしょ」



「そりゃそうだ」



 セルネが肩を竦ませるからあたしは彼の頭も撫でてやると、クレインが微笑みながらあたしに手を差し出してきた。



「とりあえず移動しませんか? こうも周囲の目があると話したいことも話せませんから」



「それじゃあお願いするわね」



 あたしはクレインの手を取り、彼の脚の向くままそのままエスコートしてもらう。

 そうして神殿から中庭に出ると、そこにあるベンチにクレインが敷物を敷いてくれ、そこに手を差し出しどうぞと座るのを促してくれる。



「ありがとう――セルネは見習いなさい」



「うぇ~い」



 こいつは日を追うごとにダメ男になっていくわね。

 あたしがため息を吐くと、あたしと同じようにルナとヒナリアのお尻にも敷物を敷いたクレインがあたしの正面に立って口を開いた。



「それでミーシャ様、ここからどうしますか? 学園に帰るのなら色々調達してきますけれど」



「ん~、もう少しいようかしらね。なんというかミリアが放っておけないのよ」



「あ~、俺も遠目で見ていたけれど、あの大聖女様、ちょっと空気感がほわほわしているというか、なんというか」



「人の善性を強く信じているのよ、聖女としては優秀だわ」



「ミーシャにないものじゃん」



「お?」



「あっすみませんすみません、胸ぐら掴まないで」



「えっと、それじゃあしばらくこちらにいると?」



「ええ、だからあんたたちは帰っていいわよ」



 するとセルネとクレインは顔を見合わせた後、2人揃ってあたしに顔をくれる。



「ミーシャを置いて帰るわけないでしょ。大聖女様に助力したいって言うのなら、俺たちもそれなりに力になるよ」



「はい、これでも勇者とその剣です。聖女様を守ることも俺たちの務めです」



「……そう、それじゃあ頼むわね」



 あたしはふっと息を漏らすと、そのまま思いついたことがあり手を叩いた。



「ああそれじゃあ、あんたたちにはちょっとこの聖都について調べてもらおうかしら。シィラが言うにはそれなりの派閥があるようだし、しょうもない奴らは潰しちゃいましょ」



「……簡単に言うよなぁ」



「でも、それは正しいことだ。そうでしょセルネ」



「だね。いいよ付き合ったげる――それでは聖女ミーシャ=グリムガント様、我々銀狼の勇者一行はあなたの力になるべき奔走いたします。どうかどうか、くれぐれも我々の目がない間、その御身をご自愛くださいね」



「あんた言い回しがリョカに似てきたわね。はいはい、自重するわよ」



 セルネは満足げに頷き、あたしに背を向けた。

 クレインはヒナリアの手を取るとそのままあたしにその手を繋がせてきた。



「ヒナ様はミーシャ様と一緒にいてくださいね。ここの方が安全です」



「わかったですっ! ルナ姉とミーシャさんの面倒はヒナが見るですね。ちゃんと終わったら褒めてくださいっ」



 クレインがヒナリアを一撫でし、セルネと一緒に神殿へと脚を進ませていった。



「ピヨ子も面倒かけて悪いわね」



「いえいえ~、それにミーシャさんを放っておくと危ないことするですし、ヒナがしっかり見張っておくですよ」



「ヒナリアどうしましたそんな熱心に、拾い食いでもしましたか?」



「……ラムダお姉さまが最近は傍観者止めたです。ヒナは別に、信者(だんなさま)以外は興味なかったですけれですけれど、ヴィーラやラムダお姉さまを見ていて、私の旦那様に報いられる女神でいられるにはどうしたらいいのかを考えたら、もう少し世界と関わろうと思ったのです」



「ヒナリア、そんなに立派に――」



「ルナお姉さまもいい加減覚悟を決めてくださいね」



「――」



 神鳥・ヒナリアの言葉に月神が言葉を詰まらせた。

 妹に発破をかけられ、ルナも立ち止まっているわけにはいかなくなるだろう。

 あたしはそっとルナを撫で、あたしもあたしの出来ることをするために神殿へと戻るのだった。

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