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よくある魔王ちゃんと聖女ちゃんのお話。  作者: 筆々
52章 魔王ちゃんと聖女ちゃん、離れてもいつも通り。

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聖女ちゃんと座るだけの大聖女ちゃん

「ミーシャさん、神獣様ごめんなさい、お客様を放っておいて――」



 セルネとクレインと別れた後、あたしとルナ、ピヨ子で神殿の中に戻ってきたのだけれど、さっきまで駆けまわっていたミリアと目が合うと、彼女は駆け寄ってきた。



「別にいいわよ。それよりそっちの用事は終わったの?」



「え? ええ、皆さん中々落ち着いてくれなくて――でもびっくりしましたよね。なんだったのでしょうか」



「ああ、それなら別に気にしなくても――」



 あたしがミリアにリョカのことを伝えようとしたのだけれど、突如廊下の奥から怒声が放たれた。



「やはり魔王とは悪だ! 今もこうして我々を滅ぼすために奴らは画策している! 我らが討つのだ、我らはこの世界の光になるのだ!」



 魔狩りの勇者・ワイズ=スピアードがまだ完治していない体を引きずり、勇者たちを引き連れて神殿内から外に向かおうとしていた。

 そんな集団の先頭にいるワイズにミリアが駆けていく。



「わ、ワイズ! いたずらに聖都の戦力を持ち出さないでください! この間もそれで――」



「黙れ! 聖女ごときが俺に指図をするな、貴様はいつも通りに座っていればいい!」



「……」



 ワイズのあまりにも身勝手な発言にミリアが息をのみ、そのまま顔を伏せてしまう。

 あたしはそんなミリアの顔に、指の骨を鳴らすたびに空気が破裂する音が鳴り、圧を込めた瞳をワイズ含めた勇者集団に向ける。



「――っ、ケダモノがぁ」



「ミリアが止めろっつってんのよ」



 奥歯を噛みしめて怨嗟の表情であたしを見ている。

 恨まれる覚えもなく、勘違いも甚だしいけれどそんなにあたしと戦いたいのならもう一度殺してあげよう。



 ワイズがミリアを腕で退かし、殺意をもってあたしに脚を進めてくる。そして彼は腕に圧を持たせ、その燦然たる輝きをその手に現す。



「『聖剣顕現――」



 この間は使わせてあげられなかったけれど、今回は聖剣も見てみてたい。こいつが一体何を以て勇者を名乗っているのか、何を世界にもたらしているのか――勇者としてのこいつを測らなければならない。



魔を穿つ追憶の従剣メルディノクローディア』」



 ワイズの手に装飾の凝った剣が現れ、そして彼に追従するようにいくつかの剣が浮いていた。



「……」



 ああ、これがこいつの勇者(・・)か。



「我が聖剣から逃れる術はなし! この剣に斬られた者は深層に眠る最も忌むべき記憶を呼び起こされる――」



「浅い」



 つい呟いてしまった言葉に、ワイズが怪訝な顔を向けてきた。

 あたしの背中に控えていたルナがその小さな口を開いた。



「……魔王は、その性質故に必ずそれ(・・)を持っています。だからワイズの聖剣は魔王にとって本当に厄介なのです」



「それだけでしょ」



 あたしが呆れの混じった吐息を漏らすとワイズが浮かせていた剣をあたしに向けて放ってきた。



 この程度のもの、ただ圧を放出だけで落とせるけれど――そんなことを考えてあたしはそれに気が付いた。



シィラ(・・・)――」



 そこにあるはずなのにそこにおらず、あたしの瞳は確かに彼女を捉えていた。



「そこまでになさい。これ以上続けるというのなら、いくらあんたといえどもあたしが排除するわ」



「――赤姫(・・)ぇ」



 存在転置――以前テッカが使ったスキルにそんなものがあった。けれどシィラの場合、本体の気配も、匂いも、ましてや生者であるすべてが感じられない。

 生き物としてのすべてを、あたしが気配察知している彼女に向けられている。

 気配やその他を別に付与するスキルなのだろう。いや、それともこれが彼女の技能なのか。



 あたしは息を吐くとシィラに小さく手を振り、すぐにミリアの手を取ってその場から移動する。



「……」



 顔を伏せたままのミリアに目をやるのだけれど、彼女はどこか光のない瞳で呟くような声を出していた。



「……座っているだけ。私は、でも、私……大聖女、には――」



 あたしはルナとピヨ子と顔を見合わせ、彼女を静かな場所へと連れていくのだった。

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