聖女ちゃん、ついにプッツンする
「おかしい」
「どうかしましたのミーシャさん?」
「リョカの様子が変」
「そうですか? さっきから普通にしているように見えますけれど」
昨日、リョカは部屋に帰ってくるなりあたしの部屋にやって来て謝罪をした。土下座と呼ばれる謝り方らしいけれど、あたしは良く知らないし、あの子がちゃんと謝ってきたから深くは考えなかった。
けれどその時、リョカはどう考えてもあたしのご機嫌取りにしては過剰なほど礼を尽くしていた。
その段階で変だと思っていたけれど、今日になってそれはさらに加速していた。
「あのリョカ様」
「お~どうしたオタク3連星、可愛い僕を前にして何を辛気臭い顔をしているんだい?」
「いえ、昨日はその、えっと」
「ほらほら、暗い顔していないで、もっとリョカちゃんのこと褒めてくれない?」
オタク3連星が困惑しており、いよいよとリョカの様子がおかしいことに周りが気が付き始めた。
なにをするのか。と、あたしは身構えるのだけれど、ふとそこで気が付く。
「いや、なんでソフィアがいるのよ。あんた別のクラスでしょ?」
「へ? 私はリョカさんに呼ばれたのでここにいますよ」
「リョカに?」
あたしは辺りを見渡してみると、そこには見覚えのない生徒が幾人か紛れ込んでおり、どういうことかと首を傾げる。
「あのっ! リョカ様」
「うん、後で聞いてあげるから、今は大人しくしてね。それじゃ僕は先生呼んでくるね」
先生を呼びに行く? 何故? あたしはあまり優れていない頭をグルグルと回してみるのだけれど、リョカが教室の出入り口に手をかける瞬間、その頭が停止の文字を浮かび上がらせた。
「――っ! リョカあんた!」
「ミーシャ、ごめんね」
あたしは飛び出したけれど、すでにリョカに扉を閉められ、激突する。
「み、ミーシャさん?」
「やられた」
「一体何ですの?」
「開かないのよ」
クラス中が騒然となるけれど、あたしは現状を知るために頭を急速に冷やす。
扉を開けようにも開かない。この扉はノブを回して押すことで開く扉なのだけれど、何かに突っかかっているような感触から、反対側を押さえられているのだろう。というより、この教室全体が膜で覆われている。
その証拠に窓を開けても透明な壁に遮られており、教室から出ることが出来ない。
「これって絶気――魔王オーラね。こんな使い方をする奴なんて1人しかいないでしょ。ソフィアとか他の奴がいる時点で気が付けばよかったわ」
「お、おい、あれってなんでござるか!」
オタク3連星のオルタリヴァ=ヴァイスが窓から外を指して言った。
あたしは窓に近づいて彼が指し示す方向に目を向けるのだけれど、リョカが今からやることに、頭が爆発してしまうのではないかと腹が立った。
「あれは、セルネ=ルーデルさんですか? なんであんなに大勢を連れて学校に。ってまさか」
「もうリョカさんったら! わたくしたちのことをなんだと思ってらっしゃるの!」
「おいオルタ、クレイン、この扉をぶち壊すぞ」
「ほいきた」
「うん任せて」
オタク3連星が扉に向かってスキルを放つけれど、リョカの魔王オーラがあの程度でどうにかなるわけがない。
イライラする。
あの幼馴染はこのあたしすらだまくらかした。
「リョカさんったらここまでして」
「ええ、あたしたちが役に立たないと思っている。舐めているわね」
「へ? いえリョカさんは別にそんなことは思っていないと思いますわ――」
「いい度胸しているわ」
「あ、あのミーシャさん。ぴぇっ!」
「ねえそこのあんたたち、あんたたちは別のクラスの奴よね? 何でここに」
彼らはリョカに敵対心は持っていないといった。むしろ別のクラスなのにジブリッドさんには親切にしてもらったと話した。
「あ、あのミーシャさん? 聖女がしたらヤバい顔をしておりますわ」
「オタクども、退きなさい」
「へ? ひぇっ」
あたしは腕を回し、ゆっくり時間をかけて集中する。
使用回数があるから時間をかけることに意味はないかもしれないけれど、この7発分の信仰をどう使うのかを考える。
「リョカ、あたしと合流したその瞬間、どうなるのか覚悟しておきなさい」
ここにはいないアホ魔王、もといアホ幼馴染に恨み言を告げ、あたしはただその拳に信仰を込めていくのだった。




