第四十三話「王宮探検」
「ねえ、ミカン、鍵ってどこにあるのかな?」
「えーと、宝箱とか……かな?」
「じゃあ、王宮探検にしようか」
……一昨日、私たちが紳士シャルルから聞いた話は、信じられない内容だった。
私たちがいるトランプの国――名前はグロワ・ルージュだと今回初めて知った――は明るい世界にあって、もう一つのトランプの国――国名はまだ分からなかったが、私たちがいる場所とは真逆の、暗い世界にあるらしかった。その二つの国は大変仲が悪く、お互いに行き来ができない状態だけど、人間だけが通れる所が数か所、たまにだけ開くと。
そして、誰でも通れる、二つの世界を繋ぐ洞窟が一つだけあるのだと。いや、三つの世界を。二つのトランプ界と、人間界とだ。その洞窟には、ちょうど真ん中に鍵が掛けられているらしくて、その居場所は現在行方不明。この鍵もこの国の厄除けの図と同じ意識から作られたもので、暗い世界からグロワ・ルージュを守るために付けられたとか。もしかして、この鍵もその図と同じように緑に金色の絵か字が描かれているんじゃないか。
つまり、人間界へ戻るためにはその行方不明になった鍵を見つけることが第一なのである。この説明をしている時、王宮の私たちがいつも暮らしている一室には、私たち双子の片割れとシャルルだけだった。最後に彼は、この内容は絶対に外に漏らさないようにとの注意をした。暗い世界へも繋がっている洞窟なので、良く思わないトランプが多いからだそうだ。
そして今、鍵を探すことを決心した人と、王宮探検をしたい子供たちとが男女分かれて王宮をうろうろしたり開いている部屋の中へ入ったりしていた。行くことになった女子チームは、私、実夏、色拍、優子の四人。一番年下だけどタフで三つ程上の男子とばかり遊ぶエイは、男子チームに行ってしまった。男子チームには六年生二人と、五年生一人と、エイと龍が行くことになった。龍がやんちゃな四人と一緒になって、少し可哀相な気もする。
なんとなくの直感で歩いていくと、この開いた王宮の一室に来ていた。夕焼けのような上品さと明るさを持ち備え、ベッドもあったので来賓用の部屋に見えた。しかし、その部屋の奥にあるもう一つの一回り小さな部屋には、まさに宝箱という素敵で大きな箱があった。来賓の方のためのプレゼントでもなさそうだ。その箱もやはり厄除けの図や王宮の壁と同じく、濃い緑に金の絵が描かれていた。
「これよ、これ! 厄除けの図そっくりだし、鍵もこの中ね!」実夏は興奮気味に言った。
「うわぁ、実夏ちゃん、小竹ちゃん、早く開けよう!」色拍は嬉しそうに言った。
しかし、私は確信していた。この宝箱らしき箱の中には、鍵はない。そもそも開いた部屋にそんな重要なものはないはずだし、確率はあっても五パーセントくらいになる。しかし、私の第六感はその五パーセントさえも完全に否定していた。と同時に、鍵ではなくても何か重要なものがあってもおかしくないとも思っていた。実夏と一緒に蓋を開けると、なんと人間の女性用の服があった。
「えっ、これやばい! すんごく可愛い! ピンク色!」実夏の興奮度合は、地震に例えると強度六ほどになっていた。
確かに彼女のキラキラした性格には、一番上に見えているピンク色のふわりとした少女らしさも残っているドレスがぴったりだった。実夏はそれをすぐに取り出し、自分の身体へ当てた。それは、大昔に食べたシフォンケーキを思い出させた。ラズベリーが乗っていて、ピンク色で、甘くて、でも小さめで柔らかいシフォンケーキ。まるでそのシフォンケーキをイメージして作られたように雰囲気が似ていた。
他にも色々なドレスやスカートがあった。実夏が気に入ったドレスと比べれば、そこまで豪華でもなかったが、トランプ界にいるせいで同じ服に飽きていた私たちには十分すぎるくらいだった。結局、その後は鍵どころではなく、女子部屋で延々とファッションショーが行われた。




