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第四十二話「プラネタリウム」

 静かな、夜の隠れ家に、甘く小さな唄声が響き渡る。緊張しているのか深い睡眠に入っていなかった僕は、目を覚ました。

 蝋燭はもう切れていたので、隠れ家の中は真っ暗なはずだ。しかし、明るい。きらきらとした夜空の様な無数の青い光の中に、女の子が立っていた。この子が、僕が恋をした相手、杏琉だ。唄声は彼女のものだった。甘いだけでなく、彼女の声は驚くほどに透き通った綺麗な声だった。しばらく、彼女の可愛らしい唄声があの有名な唄を唄うのを聴いていた。

 僕は立ち上がり、傍まで歩いて行った。他のみんなは寝ていた。

「杏琉ちゃん」

「あ、秋! え、もう、聞いちゃだめだよー」

 青い光の中で、彼女の頬は赤く染まった。

「でも、唄、良かったよ」

「ありがとう……」

  僕たちは隠れ家の天井を見上げた。土でできていると思っていた、天井と壁。その土の間に何かのかけらが挟まっているのだろうか。青い光の一つ一つは、それはそれは小さくてつぶれてしまいそうなのに、全部集まるとその空間全体を昼間のように明るくした――この世界の昼なんて、夜も同然だが。どらごんが言っていた明るい世界と暗い世界。僕たちがいるのが、きっと暗い世界で、明るい世界にはどらごんの双子の弟や僕の双子がいる。

「綺麗だね……お星さまみたい……」

「そうだね。あ、あれ、北斗七星に似てない?」

「ほくとしちせい?」

「七つの星がほら、スプーンみたいなひしゃく型っていうのに見えるの。あの端っこが北極星で」

「へえー。あ、あそこ三角形だね!」

「うわ、本当だ! 本物の星空も、こんな感じかな……」

 家族旅行で一度、空気の澄んだところに行ったことがある。そこではいろいろな星座が見えたが、今の光景とは全然違った。その時に見たものにも僕は感動したが、これはレベルが違った。杏琉の存在もあってか、とても幸せな気分で、これがこのまま続くといいなと思えた。

 僕たちは寝っ転がって、そのまま吸い込まれそうな天井を見つめていた。明日あす、ここを出る。どらごんの仮説を頼りにし、マツの家まで行けば、とりあえずヘヤの脱出は成功だ。食べ物もそのあと倉庫まで行って、取りに行ける。

 杏琉がころん、と僕のそばへ転がってきた。僕は動かなかった。彼女は僕の体の隣で、くるまって寝た。起こしたくなくて、一ミリも動けなかった。ドキドキで一言も、発せなかった。

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