第三十九話「時代遅れ」
「そうだな……残っているのはポテチ一袋、パン二枚、キャベツ半玉だけのようだが……」
どらごんはバスケットの中を数え、困ったように言った。傍にある小さくなった蝋燭が、最後の力を振り絞って僕たちにぼやぼやと光を与えている。どらごんはため息をついた。
「何日生き延びられるだろうね。この隠れ家を見渡そうにも光はもうじき消える。処刑部から隠れられる点と、仲間がいることが不幸中の幸いだね」
光が弱いせいか、他のみんなも僕たちの周りでどらごんの話を聞いていた。
「でもね、どらごん、マツは暗くても大丈夫だよ。食べ物がなくても」
「俺もヘヤでは食べ物少なかったから……」マツに加えて、寛太郎が言った。
「俺だってそうだぜ。みんな毎日腹ペコで生きて、慣れちまったんだよ。逆にそこまで食えねーし」夜磨が言った。
僕以外は、皆ヘヤで生きてきた。マツだって、自己流テントに自分で遠い倉庫から食糧を持ってきて一人で暮らしていた。僕だけが、時代遅れな気がした。僕だけが、原始人かのような気分だった。僕のお腹だけが、パニックだった。
「じゃあ三日間はこのままでいいという結果になったね。君もいいかい、兄ちゃん?」
「え、うん。極力……動かないようにしようかな」
「非常に残念だが、動くよ」
「えっ」
「三日間経つ前に、マツの家へ移動する予定だ。この間聞いたところでは、保存食がある」
「うん、あるよー!」
僕には、今後のプランさえも時代遅れなのだろうか。
「あ、秋」杏琉が僕を呼んだ。がっかりな顔がばれただろうか。
「何? 杏琉ちゃん」
「大丈夫だよ。飴ちゃんなら持ってるよ」
杏琉はそう囁くと、音をたてないようにこっそりとポケットから黄色い飴を取り出した。パインアメだった。
「それ……どこで貰ったの?」
「……来る前」
「どこに?」
「トランプ界……」
少しヒヤッとした。確か杏琉は”長い間閉じ込められていた”はずだ。五年くらい前の飴なんて、期限も切れているんじゃないか。
「いや、いいよ。えっと……僕、ダイエットしてるし」
ありきたりな嘘をついた。
「カロリーゼロだよ」
「でも……古いんでしょ?」
「一年前だよ。古くないと思う……」
「あっ。じゃあ、今度死にそうな時にくれる?」
杏琉がパッ、と笑顔になった。
「うん!」
杏琉は素早くその飴をポケットにしまい込んだ。一年、か。五年と思ったが、確かに小学校入学時からずっといると考えるのもおかしい。推理力も、時代遅れだ。




