第三十七話「隠れ家」
やっぱり、思っているほど簡単に隠れ家は見つからない。マツは天井に何かないか探し、どらごんは壁という壁を押しながら歩き、杏琉はきょろきょろして、黒トラのことを心配しているように見える。他の子達は事の重大さにまだ気付いていないのか、後ろからマツやどらごんの真似をしたりだけしている。
すると、後ろで一人の足音が止まった。
「これ、見て」
僕たちは後ろを振り返った。さすが背の低い小学生。僕たちには気付かないような中くらいの暗い穴があった。しかし入り口がぬかるんでいる。
その小学生――優貴というらしい――は迷う事なくその穴に入っていった。心配で僕たちはその中を覗き込んだ。どらごんが持っていた蝋燭を中に照らす。優貴はその穴の低い筒の先へ進んでいった。
「みんなー! 広いよ!」
その声を合図に、近い人順に僕たちは中へ入った。
確かに、不思議なくらい広い。しかも中の方では地面のぬかるみも無かった。
「すごい! 竹秋君は合ってたんだね! 予言者みたい!」冬華は嬉しそうに言った。
「な、なんで予言者!?」
「ここならトランプは来ないじゃない。こんな場所があったなんて。不思議」
本当に不思議だ。この間どらごんが言っていたが、トランプは水に弱いらしい。この洞窟のような隠れ家は、入口のぬかるみのおかげでトランプが入って来れなさそうなのだ。
「それにしても……」
どらごんは端へ歩いて行き、"何か"を拾った。
「この洞窟、いや隠れ家は、人間が作ったように見えるな……ほら、兄ちゃん」
彼が僕に近寄り、その"何か"を突き出した。彼が持っていたのは、スコップだった。マツと一緒に行った倉庫で見かけたものとすごく似ている。
僕はそれを手に取った。思ったよりも汚れている。乾いた土がこびりついて、蜘蛛の巣をぐちゃぐちゃにしたものがくっついているように見える。
「大昔に作られたのかな……?」
「そのようだね。僕たちみたいにヘヤから逃げて、持っていたスコップで掘ったということか。しかしただのスコップでここまで……」
どらごんは隠れ家を見渡した。一つの普通サイズのスコップでここまで一人で掘れる人なんているだろうか。
その時、ある声に皆一斉に息を詰まらせた。マジシャンの声だ。すぐ近くを通り過ぎようとしている。
「うっ」マツが少しふらふらしている。しかし眩暈はすぐに終わったようだ。
「マツ、大丈夫?」
「へいきへいき」
しかしマツは入口へと歩き出そうとする。
「ちょ、マツ! そっち出たら危ねえぞ!」
皆でマツを止め、数秒してやっと納まった。デジャブだろうか。以前にもこういう風にマツが倒れて……そうだ、マジシャンに捕まる前だ。ペル、という名前でマツを操ったとかなんとか……。
マツはもう元に戻っていた。が、油断は禁物だ。




