第三十六話「情報交換」
僕にはわからないが、杏琉のおかげで黒トラから隠れることにはある程度成功したようだった。僕たちはしばらく移動を続け、桃色の光が目印のヘヤへ移動し、次に群青色の光のヘヤへと僕たちは移っていった。今は新しく中学生の冬華と小学生男子2人と僕たちは紫色の光に近いヘヤにいた。
一緒に移動してきた仲間は、緊張がある程度解けているようで、楽しそうに会話をしていた。僕は、一人で座って周りを眺めてだけいる杏琉を見つめていた。
「にーちゃん、何してるの?」
とん、といきなり後ろからマツが現れた。
「えっ、別に……ぼーっとしてた」
「あ、あんるちゃんだ」
「いやいや違うっ!」
「何がちがうの?」
「いや、えっと、何も違わない」
「あんるちゃん何してるんだろ」
「さあ……ずっとあんな感じなんだよ」
「ふーん」
幸いに、マツは特に不思議にも思わなかったらしく、新しく来た小学生たちのところへ戻っていった。僕は杏琉の観察に飽きたので、どらごんを探して彼の元へ行った。
どらごんもまた一人で誰とも話さず突っ立っていた。
「どらごん、何してるの?」
「考えている」
「いや、それは分かるけど……」
「僕はきっと目覚めてしまったんだ」
「えっ」
「僕には能力がある……。テレパシー能力だ」
また始まった……。
「つまりだね、兄ちゃん。僕は自身の弟と情報交換できているのだよ。夢という形でね」
「弟……って、人間界にいるの?」
「全くの不正解だよ。僕の双子だ。……ただし僕を嫌っているようでね」
人間界にいない……つまり、僕たちと同じトランプ界にいるということだ。どらごんの双子は生きている。じゃあきっと、小竹も生きている……。でも本当だろうか。夢で会っているなんて言うけど、それならただの夢ではないか。
「本当にそれ、テレパシーなの?」
「うむ。今まで交換した回数は五回。僕は自分の情報を伝えるだけでなく、彼からの情報も少なからず得た」
「例えば?」
そう訊いた時、間近で杏琉の甘い声が言った。
「どうしよう! また来ちゃってるよ……私達のこと話してるみたい……」
どうやらどらごんへ報告しに来たようだった。残念。
「そうか」
ヘヤにいたみんなも杏琉の報告に気付き一瞬で静かになった。
「移動しよう」
「ちょっと待って。また違うヘヤへ行くの?」
どうやら飽きっぽい冬華がどらごんに訊いた。
「それ以外場所はないはずだ」
「あるはずでしょ?」
「何があるんだ」
冬華は思いつかないらしく、口をつぐんだ。でも、何かはあるはずだ。僕たちとトランプの違い……。
「処刑部はトランプだ。僕たちは人間だ。トランプには絶対に行けないようなところが、きっとある」
「マツさんせーい」
「私もヘヤはあんまり好きじゃない……」
僕たち計七人は半分ほどに減った籠を持ってヘヤを出た。言った本人は僕だが、本当にそんな隠れ家のような場所があるのかどうか、内心すごく不安だった。




