第三十五話「変な奴」
すっかり静まった夜の王宮には、ほかの女の子達の寝息が聞こえてくるだけだった。その中の一人、夢を見ている者により、私は起こされた。だまれピーナッツ、と誰かが言ったのだ。
私は浅い睡眠だったのだろうか、脳が起きてしまった。時間は……5時24分。皆が起きないように静かに布団をどけ、足音を立てないようにドアへと向かう。ドアの先は、いつも私達が団らんする部屋だ。ゆっくりとドアノブを回し、引くと暗いはずの向こうの部屋から光が漏れてきた。その眩しさに私は思わず手をかざした。
「おはよう」
「あっ、龍……おはよう」
なんと起きていた人物は龍だった。
「早いね。どうしたの?」
まだ眠く頭があまり回らない。龍はまだパジャマ姿だ。
「まあ、ちょっとした悪夢や。心配せんでええよ」
私がミニテーブルの元で座ると、龍も隣に来て座った。
「どんな悪夢だったの?」
「まあ……変な奴に話しかけられる夢や。それより新人ちゃんは何で起きたんや」
「誰かの寝言で起きちゃった。変な奴ってどんな奴だったの?」
「なんやろなあ。なんか人間界で一番最後に見た奴やねんなあ」
「えっ? それって……」
「いや、ちゃう。俺の双子ちゃう。絶対ちゃうから」
「あ、そう……変な奴って、その人、名前はなんていうの?」
「それが知らんねん。俺が遊園地で並んどったら勝手に話しかけてきてんで? 俺の双子やったら、そんなことせんわ。そもそも変なことしか言わんし」
「どんなこと?」
「分からんけど今朝の夢では『新しい場所を確保した。君たちは順調にいってるのかね?』とか言うとんねん」
「はあ……」
「俺が『順調やで』っつったら『よろしい。僕たちはまだワープホールまで時間がかかる』とかなんたら……」
ワープホール……? じゃあ、龍は遊園地で重度のSFオタクにあったのか……な?
「ここんとこそんな夢ばっかりやねん」
「そっか……。でも、ここに来る直前にその人に会ったんでしょ? 龍の双子はじゃあ誰なの?」
「知らんわ。でもな、新人ちゃん。あんな変な奴は、何があっても俺の双子やない。絶対に俺と兄弟なんてありえへん」




