第二十八話「バスケット」
夜磨としばらくの雑談があった。夜磨は無愛想で、人間関係にあまり興味がなさそうな中学生だということが分かった。でも、マツと歳が近いと知ると、仲間だと思ったのか高校生の僕たちよりも心を開いていた。
「マツ、お腹すいてきた〜」
「黒トラなら飯くれるぜ。1日1食」
「えっ、いつ?!」
「あと10時間じゃね?」
それでも、必要事項以外に話したくないような夜磨は仕方なくマツに答えた。どらごんは実験が上手くいかない博士のような顔をして言った。
「マツ君、確か君は来たときに食べ物の入ったバスケットを持っていたようだけど、見たところ忘れてきたようだね」
思い出した。僕とマツは倉庫へ行って食糧を取ってきた帰りに捕まったんだ。そういうわけでどらごんから鍵を借り、2人で取りに行くことになった。
驚くことに、鍵は全部で20個ほどもあった。バスケットの中には、野菜、お菓子、穀類、そして蝋燭2本がそのまま入っていた。
5人でパンとレタスを少しずつ分けた。お菓子は開けずに、本当に食べるものがなくなった時のために取っておく。ペンライトの光はもう薄っすらだけで、頑張れば一人一人の表情が見えるくらいだった。なので一本の蝋燭に火を付けた。
僕たちは静かに食事を取った。すると杏琉が耳をピクッと動かし、声を潜めて言った。
「ね、遠くで黒トラが歩いてるよ。なにか話してるみたいだけど、出たほうがいいと思う」
「えっ、僕には、何も聞こえないけど……」
「僕にも残念ながら聞こえないね」
「マツもー」
「俺だって聞こえねえよ。怖がらせんなよ」
「でも、本当に聞こえるよ! 今、少しずつだけど近付いてきてる!」
「そうか。きっと杏琉君は耳の良さが格別のようだね。よし。合ってるにしろ合ってないにしろ、ここにずっといることはできないはずだ。この機会を取って、移動しよう」
どらごんはこんな事を言うが、まだこのヘヤに来て一晩も越していない。でも杏琉の言う通り、黒トラがパトロールに歩いてきても不思議ではないので、僕たちはもっと奥へ、出口の反対側、黒トラの反対方向へ出発した。
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