第二十三話「どらごん」
「そういえば、名前なんていうの?」
「僕の名前かい? 好きなように呼んでくれて構わない」
「えっ」
「僕の存在のあまりの暗さに、処刑部は僕に気付かず、君たち二人をこのヘヤにいれた。僕達は友達でもなんでもない。ただのルームメイトと言おうか。そんな僕の名前を知る必要も、ないし、いずれなくなるだろう」
彼の最後のフレーズは、トランプによる撤去を匂わせるものだった。僕もいずれ消されてしまう。そう思うと自分の今までの人生は何だったのかと思ってしまう。
「名前はじゃあいいけど、少なくともあだ名をくれたら嬉しいな」
「あだ名? じゃあ在り来たりにどらごんにするよ」
話せば話すほど彼の価値観は分からなかった。どうしてあだ名をどらごんにしたのかすごく不思議だし、どらごんが在り来たりな理由も不明だ。それに、どらごんをドラゴンと言わず、“五右衛門”の発音で言ったのも分からない。
「そうそう、撤去についてだね。僕はここに来てから黒トラの行動や会話を追記している。それで分かったことがいくつかあってね。君がどうしても知りたいって言うなら、教えてやってもいい。どうせ他にすることはないし、暇つぶしにいいだろう?」
そう言って、どらごんは話し始めた。ヘヤに入れられているのは僕達だけではなかった。僕達はたまたま同じヘヤになっただけで、他の人たちは一人一人違うヘヤにいる。しかしそれぞれのヘヤはある程度近く、頑張れば連絡が可能らしい。
「方法はまだ思いついていない。でも君たちの力を借りれば、何かできるんじゃないかな。もう一つは、この世界の謎についてだ。この世界には、表と裏があって、道は一つしかない。一つだけなんて有り得ないと思うが、もう一つの道はなさそうだ」
そこにマツが話に入り込んできた。
「じゃあマツのおうちはこの世界の一番端ってことになるよ?」
「君の家?」
「マツのおうち、真っ暗な洞窟の入り口にあるんだけど、真っ暗だから一番端だよ」
「待て、洞窟……? 処刑部の会話には、全く出てこなかった……そうか……」
どらごんは博士ぶっているのか、顎を摩りながらヘヤのもう片方の隅へ歩いていった。




