第二十二話「寝覚め」
「……で、これが兄ちゃんというわけだね?」
「うん!」
「じゃあ君はどうして来たんだい?」
「にーちゃんがさらわれそうだったから、マツも来ちゃったの」
「そうか。もう三日間も経つのに、一向に起きる気配がないね。処刑部のやつら、相当の量を使ったんじゃないかな」
「相当の量?」
「処刑部は、その名の通り、“マジシャン”だ。彼の服に着いている羽が、今回彼らが使ったもののようだ。予想に反して、二人もいるもんだから大量の羽を使ったんだろうね。あの羽は本来はトラの睡眠導入剤として使われているらしい。一回の使用は、羽一枚くらいかな。普通のトラなら、一度に持てる羽の枚数は、限られている。しかし処刑部はそれとこれとが違うのだよ」
聞きなれない声と口調に、僕は目を覚ました。二つの顔が僕の寝ている隣で話している。片方はマツだった。もう片方は、見知らぬ男の子。黒くて少し脂ぎった髪に、マツよりちょっとだけ高めの低身長。一重で細い目に、低い鼻。無愛想に見えるのに、どこか優しそうな微笑み。博士どった話し方をする彼は、やがて僕の方を向いた。
「やあ、おはよう。兄ちゃん」
なんということだろう。僕は決して兄ちゃんキャラではない。兄ちゃんどころか、僕は一人っ子だ。小竹の件を除いては。二人の兄になるなんて無理だ。せめて妹が欲しかった。
「……といってもだね。もう昼過ぎなのだが、お腹は空いているかい?」
喋ろうと思っても言葉が出なかった。さっきの話によれば、僕は三日間寝たきりだ。それは、僕が三日間飲まず食わずだったということになる。彼が差し出したパンを貰い、ゆっくりと噛んだ。食べ終わると、やっと声が出るようになった。




