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第十五話「名前」

 長い長い、道を二人で歩いていた。私と、赤いトランプと。辺りは少しずつだけど明るくなってきていて、少し見上げると、彼の横顔がはっきりと見えるようにまでなっていた。私に気遣ってなのか、あれから一言も発していない。

 その口は、きゅっと紡がれ、まるで一本の線が描かれているようだった。少し話をしてみたい。なんと言おう。彼?彼じゃない、名前、名前……。

「……あっ、あの、名前……なんていうんですか?」

「名前を云う程の者ではないのですが、周りからはシャルルという名で呼ばれております」

「シャルル?」

「はい、ずいぶんと小さい頃にある友達に付けてもらったあだ名です。しかしその子はとても弱くて……二年間だけのお付き合いでした。今は天界で暮らしておられることでしょう。私の唯一の友達でした。本名を教えたのも、その子一人だけです。なので、(みな)私のことをシャルルという名で呼ぶようになったのです」

 シャルル、か。なんだか雪が降ってきそう。この世界には、雪は降るのかな。春夏秋冬は、あるのかな。でも、皆トランプなんだから雪が降ったら花のようにしおれてしまうのかもしれない。

 花は、咲くのかな。綺麗な、桜。今は冬だけど、春になったら学校中、いや町中が綺麗な桃色に染まる。トランプにも学校があるのかな。

 少し見上げると、彼の横顔が見えた。いまだ一本の線は描かれていたが、その眼差しはさっきのようにしっかりしたものではなく、少し哀しげに見えた。

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