第8話 命のやり取り
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クロス
「こんなゲーム初めてだ!感動レベルだ!」
ミシャ
「感動してないで、牙を切り取るの手伝ってよ!」
ノア
「お前、『感動』とか『ゲーム』とか言ってるけど、大丈夫か?」
ミシャ
「きっと、依頼を達成できて嬉しいのよ!」
クロス
「そうそう!嬉しいんだよ!」
クロスは笑いながら、倒したサーベルタイガーの牙を切り取るのを手伝った。
3人は必要な牙を集めると、街へ戻った。
冒険者ギルドに戻った3人は、受付嬢に依頼の達成を報告した。
受付嬢
「ミシャさん、また依頼に失敗したんじゃないでしょうね?」
ミシャ
「ふふーん!いつもの私とは違うのよ!」
ミシャは得意げに、集めた牙の入った革袋をカウンターに置いた。
受付嬢
「まあ!本当に達成したんですね!おめでとうございます!」
ミシャ
「でしょ!?本気を出せばこんなものよ!」
ノア
「調子に乗るなよ。油断したら命取りになるんだからな」
ミシャ
「むぅ……分かってるわよ!」
受付嬢
「それにしても、街の中にはモンスターはいないですから、いいじゃないですか」
ノア
「⋯モンスターはな……」
ノアは何かを言いかけたが、途中で口を閉じた。
受付嬢
「ところで、そちらの方は?」
受付嬢はクロスに目を向けた。
受付嬢
「見かけない方ですね。魔剣士の方も珍しいですし」
クロス
【魔法を使うのって楽しいな……。でも、使うと疲れるんだよな。魔力が減ってる事を倦怠感にしたのか?】
ミシャ
「クロス!聞いてる?」
クロス
「え?何?」
ミシャ
「もう!さっきから全然話を聞いてないじゃない!」
ノア
「魔法を使ってから、ずっと変だよな。いや、その前から少し変だったか……」
クロス
「そうか?少し考え事はしてる」
受付嬢
「依頼達成で興奮してるのかな」
受付嬢から依頼の報酬を受け取ると、ミシャは嬉しそうに笑った。
ミシャ
「ありがとう!」
ノア
「なあ、これから飲みに行かないか?」
ミシャ
「いいね!クロスも行くでしょ?」
クロス
「え?ああ、行くよ」
クロスは返事をしながら、魔法のことを考えていた。
【他の魔法も試してみたいけど、魔力の回復はどうなってるんだ?】
今までのゲームなら、魔力回復のアイテムを使うか、時間が経つのを待つか、眠れば回復するものもあった。
【今までと同じなら、寝れば回復するのかな……。でも、このゲームはアップデートで色々変わってるみたいだしな】
ミシャ
「クロス!ねぇ、クロス?」
クロス
「……」
ミシャ
「クロス!!」
クロス
「っ!?な、何だ?」
ミシャ
「何だじゃないわよ!さっきから何度も呼んでるのに!」
クロス
「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしてた」
ミシャ
「もう!これから飲みに行くんだから、ちゃんとついてきてよね!」
クロス
「分かったよ」
ミシャとノアは顔を見合わせ、クロスを連れてギルドを出た。
3人が酒場に入ると、ウエイトレスが声をかけてきた。
ウエイトレス
「いらっしゃいませ!あら、ミシャ。久しぶりね!」
ミシャ
「ちょっと色々あってね!」
ノア
「金がなくて来られなかっただけだろ?」
ミシャ
「うるさいわね!」
ノアの言葉にミシャは顔を赤くした。
ウエイトレス
「ふふっ。それじゃあ、こちらへどうぞ!」
3人はテーブルに案内された。
ウエイトレス
「ご注文は?」
ミシャ
「私はいつものビール!と唐揚げ!」
ノア
「俺は焼いた鶏肉とビール頼むよ」
クロス
「俺は唐揚げで」
ウエイトレス
「かしこまりました!」
ミシャ
「クロスはお酒飲まないの?」
クロス
「未成年だからな。それに、酒は苦いし美味しくない」
ミシャ
「えー!せっかくなんだから飲もうよ!」
ノア
「無理に勧めるなよ。誰だって苦手なものくらいあるだろ?」
クロス
「ありがとう、ノア」
ミシャ
「むぅ……つまんないの」
ミシャは頬を膨らませた。
クロス
「そういえば、支払いはどうするんだ?」
ミシャ
「さっき依頼の報酬をもらったでしょ?私はそれで払うわよ。今までお金がなくて、飲みにも来られなかったんだから!」
クロス
「そうなのか。俺もお金なら少しはあるぞ」
クロスはいつものようにコンソールを呼び出そうとした。
しかし、何も現れない。
クロス
「……あれ?」
ノア
「どうした?」
クロス
「いや、コンソールが出ないんだ」
ノア
「コンソール?アイテムボックスのことか?」
クロス
「アイテムボックス……そうだった」
クロスはアイテムボックスを思い浮かべ、手を伸ばした。
すると、手に何かが触れた。
引っ張り出してみると、そこには布袋があった。
クロス
「おっ、出せた!」
ミシャ
「何それ?」
クロス
「お金だよ。確か竜の報酬で10万は貰ったはずなんだけど……」
クロスはアイテムボックス中を探ろうとしたが、取り出せたのは袋ひとつだけだった。
クロス
「……まあ、これだけあれば足りるだろ」
ミシャ
「ちょっと見せて!」
ミシャが袋を受け取り、中を覗き込んだ。
ミシャ
「……えっ!?」
ノア
「どうした?」
ミシャ
「こ、これ……金貨!?」
ミシャは慌てて袋の口を閉じた。
ミシャ
「クロス!早くしまって!」
クロス
「え?何で?」
ノア
「いいから!そんな大金を人前で見せるな!」
クロス
「大金?」
ミシャ
「この袋の中身、全部で金貨が100枚くらいあるわよ!」
クロス
「100枚?」
ミシャ
「銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚。基本的には銅貨で数えるのよ。金貨なんて、そう簡単に使うものじゃないんだから!」
クロス
「そうなのか……」
クロスは言われたとおり、布袋をアイテムボックスにしまった。
ノア
「いいか、金を出すときは1枚ずつだ!1度に何枚も出すんじゃないぞ!」
クロス
「分かった。じゃあ、1枚ミシャに渡しておくよ」
ミシャ
「えっ!?私!?」
ノア
「支払いのときに必要な分だけ出せばいいだろ?」
クロス
「でも……」
ノア
「でもじゃない!とにかく、今は隠しておけ!」
クロス
「……」
「でも、いつ強制ログアウトするか分からないから、持っててほしいんだけど……」
ノア
「何だそれ!……分かった、俺が持ってるよ!」
クロス
「?」
クロスは不思議そうに首を傾げた。
ノアは何か言いたそうだったが、それ以上は何も聞かなかった。
しばらくすると、ウエイトレスが注文した品を運んできた。
ウエイトレス
「お待たせしました!」
ノア
「っ!!」
ウエイトレス
「どうしたの?」
ノア
「いや……なんでもないよ」
ウエイトレスは不思議そうに首を傾げながら、料理を置くとテーブルを離れた。
ミシャ
「改めて!達成祝い!カンパーイ!」
ノア
「カンパーイ!」
クロス
「かんぱい!」
ミシャとノアは、グラスの中身を半分以上飲み干した。
ミシャ
「うーーん!久しぶり!美味しい!」
ノア
「あーー!いいな!」
2人が酒を楽しむ横で、クロスは唐揚げを口に運んだ。
クロス
「美味しい!」
ミシャ
「でしょ!?ここの唐揚げは美味しいのよ!」
クロス
「でも、昨日食べたのと味が違う……。昨日は樹梨の唐揚げの味がしたのに……」
ミシャ
「樹梨?二刀流の人?」
クロス
「違うけど、なんで味が違うんだろ」
ミシャ
「味を変えたのかな……。でも、前に食べたときと味は変わってないと思うけど……」
ノア
「気のせいだろ?」
クロス
「そうだな……。美味しいことに変わりは……」
ミシャ
「えっ!?」
ノア
「はっ!?」
2人の目の前から、突然クロスの姿が消えた。
今後もよろしくお願いします。




