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ヴォルテクス・レルム オンライン  作者: アル治


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第11話  竜殺しのメダル

いつも読んでいただきありがとうございます。

クロスがアイテムボックスから取り出した物。それはメダルだった。


クロス

「メダル? なんでこれが泥棒じゃない証明なんだよ!」


ウェイトレス

「何を言っている! それはこちらの台詞だ! メダルごときで……」


ウェイトレスはクロスの手にあるメダルを見て、声を上げた。


ウェイトレス

「おい! そのメダルを見せろ!!」


クロスは警戒しながらも、メダルをウェイトレスに渡した。


ウェイトレス

「……間違いない! これは竜殺しのメダル! これも盗んだのか!?」


クロス

「だから盗んでない! それは俺のだ! 俺のアイテムボックスから出てきただろ?」


ウェイトレス

「盗んでアイテムボックスに入れれば……」


バチッ!!


「きゃっ!」


メダルから静電気のようなものが走り、ウェイトレスの手から弾き飛ばされた。


ウェイトレス

「……な、何が起きた……?」


その時、酒場の入り口が開いた。


入ってきたのは酒場の店主、ミシャ、ノア、そして冒険者ギルドの受付嬢だった。


受付嬢

「外で話を聞かせてもらいました。竜殺しのメダルは、竜を倒した本人しか持つことができないんです」


ウェイトレス

「……それじゃあ、このメダルはこいつの物だって言うのか?」


受付嬢

「はい、間違いありません」


ウエイトレス

「でも盗んでアイテムボックスに入れておけば良いんじゃないの?」


受付嬢

「やってみてください」


ウェイトレス

「アイテムボックスに入れてみればいいんだな?」


受付嬢

「ええ、試してみてください」


ウェイトレスは床に落ちたメダルを拾い、アイテムボックスに収納した。


しかし、数秒後。


ポンッ!


メダルが再び外へ弾き出された。


ウェイトレス

「……何もしてないのに出てきたぞ?」


受付嬢

「そのメダルには魔法が掛かっています。持ち主以外には持ち運べないんですよ」


ウェイトレス

「……それで、こいつが泥棒じゃないって証明になるのか?」


受付嬢

「いいえ、そこまでは。ただ、竜殺しのメダルを持っている人が泥棒だとは、考えにくいですね」


酒場の店主

「まあ、何も盗まれていないんだ。今回は見逃してやる。ただし、次はないぞ」


クロス

「すみません。今後は気を付けます」


ウェイトレス

「次に同じことをしたら殺すからな」


ウェイトレスは殺気のこもった目でクロスを睨み付けた。


クロス

「……は……はい」


こうして、クロスの泥棒騒ぎはひとまず解決した。


酒場を出ると、ミシャとノアがクロスの両腕を掴んだ。


ミシャ

「そっちの問題は解決したみたいだけどさ……こっちはまだなんだよね!」


ノア

「ちょぉっと付き合ってもらおうか!」


クロス

「……え? はい」


2人はクロスを引っ張り、路地裏へと連れていった。


ミシャ

「で、どういうことなの? お祝いしてた途中で、なんで消えたのよ!」


ノア

「魔法で転移したのか?」


クロス

「いや、強制ログアウトだよ」


ミシャ

「強制ログアウト?」


ノア

「なんだそれ? 魔法か? それとも呪いか?」


クロス

「……お前たち、プレイヤーなのか?」


ミシャ

「プレイヤー? 何それ?」


クロス

「……じゃあ、NPC?」


ノア

「NPCってなんだ?」


クロス

(……もしかして、今回のクエストはNPCだけなのか? ヴォルだとソロで遊ぶ人は少ないからな……)


ミシャ

「ク! ロ! ス!」


クロス

「はいっ!」


ミシャ

「質問に答えなさい!」


クロス

「俺は数時間経つと消えるけど、また現れる……。呪い⋯ そう! 呪いにかかってるんだよ!」


クロス

(なんて説明していいか分からないよ……。これで誤魔化せるのか?)


ミシャ

「それじゃあ、呪いが解けたから酒場に戻ってきたってこと?」


クロス

「いや、消えた場所にまた現れるんだ。だから、酒場で消えたら酒場に現れる」


ノア

「なるほどな。それなら鍵の掛かった酒場にいた理由も分かる」


クロス

「そういうこと」


ミシャ

「……そんな呪い、聞いたことないけど」


ノア

「俺も聞いたことないな。それで、クエスト中でも消えるのか?」


クロス

「うん。時間が来たら、何をしていても自分の意思に関係なく消えるんだ」


ミシャ

「ふ~ん……。それで、どれくらいで消えるの?」


クロス

「大体10時間くらいかな」


ノア

「お前、消えた後はどこにいるんだ? 何をしてる?」


クロス

「小さな部屋で寝てる」


クロス

(まあ、嘘は言ってない!)


ノア

「……なるほどな。それなら、酒場に来るのは避けた方がいいか。いつ消えるか分からないんだろ?」


クロス

「そうだね」


ミシャ

「……」


クロス

「どうしたの?」


ミシャ

「いや……なんか、あんたって何か隠してる気がするんだよね」


クロス

「そ、そんなことないよ」


クロス

(なに、NPCにしてはめっちゃ疑ってくるけど……)


ミシャ

「まあいいや! 次のクエストに行こう!」


クロス

「次?」


ミシャ

「アイスディアの角を4本集めるクエストだよ!」


ノア

「俺たち、アイスディアは苦手なんだ。手伝ってくれないか?」


クロス

「いいよ」


ミシャ

「じゃあ、さっさと行こう! 時間がもったいない!」


クロス

「OK!」


3人は雪原へ向かって歩き始めた。


すると、前方から聞き覚えのある声がした。


ダン

「よぉ! 依頼を1個こなしたくらいで盛り上がってるなよ」


ミシャ

「ダン……うるさいよ! 関係ないんだから!」


ダン

「俺はお前たちのために言ってるだけなんだけどな。冒険者なんて辞めとけ。死にたくないならな」


ダンはミシャに視線を向けた。


ダン

「それに、俺のパーティーに来ないか?」


ミシャ

「誰が行くか! このエロジジイ!」


ダン

「……せっかく好意で誘ってやったのに、残念だな」


ミシャ

「ダンのせいでセーラお姉ちゃんは!」


ダン

「……あいつはモンスターに襲われたんだ。仕方なかったんだよ。俺が見捨てた証拠なんてないだろ?」


ノアは黙ったまま、ダンを見ていた。


ミシャ

「ノア、行こう。こいつと話しても意味ないよ」


ノアは何も言わず、ミシャの後を追った。


ダン

「ノア、お前はいつでも俺のパーティーに来ていいからな」


ノアは振り返ることなく歩き続けた。


ダン

「お前も新人なんだろ? 気を付けろよ。まあ、俺はお前なんかいらないけどな!」


ダンは笑いながら、冒険者ギルドの方へ歩いていった。


クロス

(もしかして、ダンってのを倒すのが今回のクエストなのかな? でも、クエストの詳細が来てないんだよな……)


ミシャ

「クロス、あいつのことは気にしなくていいからね」


クロス

「うん、分かった」


3人はそれ以上何も話さず、雪原へと向かった。


しばらく歩いたところで、ノアが口を開いた。


ノア

「……クロスは、何も聞かないんだな?」


クロス

「話したくないことなんだろ?」


ノア

「……ああ。お前が一緒でよかったよ。あまり話したくないんだ」


クロス

「分かった、ノア! 今を生きよう!」


ノア

「……ありがとう」


クロス

「おぅ!」


クロス

(多分、この2人のどちらかが死んだらクエスト達成できないだろうからな……。俺もこの2人を殺したくない!)


ミシャ

「そろそろモンスターの縄張りに入るよ!」


クロス

「分かった!」


ノア

「了解!」


ミシャ

「あっ、前にいるのはスノーマンマンモスだね。今回のクエストとは関係ないから、無視して進もう」


ノア

「余計な戦闘は避けよう」


クロス

「了解!」


3人は周囲を警戒しながら、アイスディアを探し始めた。


やがて、少し離れた場所にアイスディアの群れを発見した。


クロス

「どうする? あれだけの数がいると、攻撃したら群れ全体と戦うことになりそうだけど……」


ミシャ

「う~ん……」


ノア

「群れを散らして、離れた個体を狙うのはどうだ?」


クロス

「どうやって散らすんだ?」


ミシャ

「クロスが追い立てる?」


クロス

「俺? とりあえず1人で群れに挑んでみるけど、アイスディアは好戦的なモンスターじゃないから、人を見れば散るとは思うけど……」


ミシャ

「じゃあお願い!」


ノア

「サポートはします」


クロス

「OK、やるよ!」


クロス

(この2人のどちらかにやらせて、何かあったらヤバいからな)


クロスは堂々と群れの正面からアイスディアに近付いていった。


アイスディアもクロスに気付き、警戒する。


クロスがさらに近付くと、群れの一部がクロスから離れ始めた。


ミシャ

「上手くやってよ!」


ノア

「もう少し!」


クロス

(もう少しで、後ろの連中が逃げそうだな)


クロスはさらに距離を詰めた。


そして、ここで初めて剣を抜き、アイスディアに向けて構えた。


すると、群れの何匹かがクロスに向かって動き始め、反対側では何匹かが逃げ始めた。


クロス

「よし! 逃げる側と戦う側に分かれた! どっちが少ないかだな」


ミシャ

「割れだした! あと少し!」


ノア

「残るのは何匹だ?」


クロスも立ち止まり、剣を構えた。


クロスとアイスディアが対峙する。


クロスに立ち向かうアイスディアが角を向けた、その瞬間。


群れが動き出した。


そして、クロスと対峙するアイスディアは3匹となった。

今度もよろしくお願いします。

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