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第4話:卵のガレット
今日の記録は、薄く焼かれた「黄金色」と、奇妙な静寂。
フライパンの熱が、いつもより指先に届くのが遅い気がした。
そば粉の生地を薄く引き、中心に卵を落とす。白身が固まり始める音は、どこか遠くのスピーカーから漏れているような、乾いた質感を帯びている。
ふと、窓の外に目をやった。
雲一つない青空。しかし、その一角が、まるで古いモニターの電源を切った瞬間のようにはじけ、一瞬だけ黒い空洞が覗いた。
「……気のせいか」
視線を戻すと、そこには完璧な形のガレットが出来上がっていた。
ハムのピンク色と、卵黄の鮮やかな黄色。
『PED』がその色彩を解析し、最適な彩度へと補正していく。
私は、その器にナイフを入れるシミュレートを脳内で行う。
黄身が溢れ出すはずのタイミングで、一瞬だけ部屋の照明が明滅した。
本日の事故、0件。
ログは、強制的に安定を保っている。
第4話、読んでいただきありがとうございます。
本日は少しお洒落な卵のガレットにしました。
【こだわりレシピ:おうちガレット】
生地の縁がカリッとするまでじっくり焼くのがポイントです。中心の卵は半熟に仕上げて、崩しながら生地に絡めて食べてみてください。チーズをたっぷり入れると、それだけで立派なメインディッシュになりますよ。
今日は少し、部屋の明かりが眩しすぎたかもしれません。




