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「愛とは相手が明日も笑えるようにすることじゃ」――爺の説教が夫たちに刺さりすぎた


――朝。


薄く目を開けたレイラは、最初に違和感を覚えた。


(……動けない……)


次に、気配。


左右から伝わる、ぬくもり。

規則正しい呼吸音。


「…………?」


ゆっくり、視線だけを動かす。


――右。


幸せそうな顔で爆睡しているシャガル。


――左。


同じく、満ち足りた顔で眠るテュエル。


「………………」


一拍。


すべてを、察した。


(……なるほど……)

(……記憶はないが……)

(……原因は……お前たちか……)


全身を襲う、ありえない筋肉痛と、関節の悲鳴。


起き上がろうとしても、指一本すら動かない。


「……っ」


そして、心の底からの叫び。


レイラ

「――――爺……!!!

助けてぇぇぇぇ!!!!」


(半泣き)


――


次の瞬間。


爺、来たる。


――ガラッ!!


扉が開く。


「姫さま!?」


飛び込んできた爺が、寝台の状況を一目見て――すべてを理解した。


「…………」


無言。


だが、こめかみにぴくりと血管が浮く。


――


爺は静かに歩み寄り、まず右へ。


「この、バカ旦那が……!!」


――ゴンッ!!


シャガル、寝ぼけたまま撃沈。


シャガル

「ぐおっ!?」


次に左へ。


「こっちもじゃ!!」


――ゴンッ!!


テュエル、見事に吹き飛ぶ。


テュエル

「ふぁっ!?」


二人、完全覚醒。


シャガル

「な、何が……」


テュエル

「え、あ、あれ……?」


爺、仁王立ち。


「正座せい」


有無を言わせぬ声。


――


間。


正座。


シャガルとテュエルは床へ正座する。


背筋はぴんと伸びる。


レイラは寝台の上で、心の底から安堵する。


(……よかった……)

(爺が来た……)


「姫さま……」


優しく声をかけ、頭に手を当てる。


「……これは、酷いの……」


そして、ゆっくりと振り返る。


「……お主ら」


氷点下。


「よくもまぁ……

この状態で……

幸せそうに寝ておれたなぁ?」


シャガル

「……申し開きもない……」


テュエル

「……本当に……

すみません……」


「はぁ……まったく。

最近の姫さまは……

二匹の猛獣に吸われすぎじゃ」


「ほれ、力抜け」


レイラ

「……?」


次の瞬間。


ごりっ。


レイラ

「……っ!?

い、いた――」


だが、すぐに。


「……あ……

そこ……」


痛いのに、的確すぎて気持ちいい。


爺の手つきは、もはや職人。


筋肉の流れを読み、疲労の芯を外さず、淡々と、確実にほぐしていく。


「姫さまは、無茶をしすぎじゃ」


レイラ

「……あぁ……♡」


声が、思わず甘くなる。


――


部屋の隅の猛獣二匹。


その光景を、正座して見ている二人。


シャガル(小声)

「余だって……レイラの肩を揉みたい……」


テュエル(震え声)

「ボクだって……首元、冷やして差し上げたい……」


だが、爺がちらりと睨む。


二人、即座に石像化。


――


爺は手を止めず、低い声で告げる。


「……お主ら」


びくっ。


「名ばかりの王を気取る前に、まず旦那としての節度を学べい」


「愛とはな……

自分の快楽を満たすことではない。

相手が明日も笑えるようにすることじゃ。」


ゴキィッ!!


(筋が見事に通る音)


レイラ

「あっ……そこ、好き……♡」


シャガル

「…………」


「……爺よ……その技を……余にも……」


「断る!!!!」


ビシィッ!!!


シャガル、硬直。

テュエルも反射で直立不動。


眼鏡がきらり。


「姫さまは強い。

だがな、同時に脆い」


一拍。


「それを守れぬ伴侶など、誇る価値もないわ」


グサり。


シャガル

「……返す言葉もない……」


テュエル

「……本当に……申し訳ありませんでした……」


レイラ、朦朧とした一言。


「……爺の手、気持ち良すぎて……寝そぅ……」


手慣れた揉みほぐしでどんどん回復していくレイラ。


シャガルとテュエルは、その様子を凝視する。


(え、レイラってこんな気持ちよさそうな顔できるの……?)


爺はちらりと二人を睨む。


「見るな。お主らのような欲深き雄に見せる顔ではないわ」


シャガル

「ぐっ……」


(胸に深いダメージ)


テュエル

「……っ……」


(心をえぐられた顔)


ほぐされながら、半分眠ったような声で。


レイラ

「……ふたりとも……」


二人、息を呑む。


「……最近……自分の欲ばっかりで……」


静かに。


「……私のこと……ちゃんと……見てくれてなかった……」


――クリティカルヒット。


シャガル、唇を噛む。

テュエル、目を伏せる。


「よいか、若造ども。姫さまは守るべき主じゃ。お前たちの所有物ではない。」


シャガルとテュエル、同時に姿勢を正す。


シャガル

「……はい……」


テュエル

「……はい……」


――


爺の背中が語るもの。


爺は、湿布を貼り、温い湯を飲ませ、乱れた髪を整える。


それは、欲でも、独占でもない。


ただの献身。


それを見て、二人は悟る。


(……余は……何も分かっていなかった……)

(……ボクは……独り占めしたくて……なんと愚かだったんだ……)


互いに目を合わせ、小さく同時に頷く。


――


その夜。


レイラの両脇で、二人は正座したまま看病する。


シャガル(小声)

「……もう、無茶はさせん……」


テュエル

「……本当に……気をつけます……」


「……やっと反省したか、このバカ夫どもめ……しかしお前らは今日から節制じゃ。無闇に手を出すな。のしかかるな。夜這い禁止。口づけの回数も半分にせい。」


シャガル

「……待て。余は王だ。夫に指図する権限は――」


「文句があるのか?」


シャガル

「ありません」


(王、怯む)


テュエル

「はい、節制がんばります……」


その時――


レイラ

「……もうしばらく、二人の部屋には行かない。しばらく、このまま一人で寝る……」


テュエル

「……レイラ様……!!」


シャガル

「ちょっと待てレイラ!?余と寝室を共にせぬとはどういう――」


完全に顔が青ざめる。


レイラ

「もう決めた」


二人

「………………」


「では本日の議題、“バカ夫二名の処遇”は以上じゃ」


――可決。


その夜。


二人の寝室は、史上最も静かだった。

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