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双国ノ巫女 〜九尾の力を持つ雪女の姫は、戦場でその力を解き放つ〜  作者: Su
出会いと誓い――護衛テュエルとレイラの軌跡
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山国【双国】 ― 友好国の面影と凱帝国の影


ロイロ

「ここが、双国の国境ですよ」


リア

「ここが……」


ロイロ

「言っておきますけど、双国は見ての通り山国です。ずっと上り坂なんで、覚悟してくださいね」


シュン

「たしかに、すごい山だね……てっぺん見えない……」


シュシャ

「ずっとただの森だと思っていたが、これがすべて双国の山の一部だったとは」


ナイル

「国ってだけあって大きいねー。端から端なんて見えないし、一気に上がれるもんじゃないなー」


レオ

「えー、のぼるのー? 俺つかれちゃうー」


シアン

「……上、見えない」


ロイロ

「どうします? やっぱりやめときますか?」


リア

「ううん、行く!

 この目で、ちゃんと双国を見てみたいの。

 しかも、かつては友好的だった国みたいだから……見てみたい」


ロイロ

「……じゃあ、行きますか」


リア

「ロイロは、行ったことあるの?」


ロイロ

「いいえ。国境沿いまでは何度か来たことがありますが、すでに凱帝国の所有国になっていましたから。

 凱の手が想像以上に伸びていて、危険そうだったらすぐ引き返しますよ?」


 リア

「わかってるわ。目立つようなことはしない」


 ――――――――――――


 大きく、立派な鳥居をくぐり、

 一行は山道を登り始めた。


 ――――――――――――


 ロイロ

「昔は、こうやって整地されていなかったから、もっと緩やかな道だったらしいです。

 東西南北に入り口があって、整地されていない道もあるようですが……

 ここは整地されている分、傾斜が急ですね」


リア

「え!? なにか言った!?」

(はぁ、はぁ……ぜぇ……)


 シュン

「あーーー、高低差で耳がキーーンってなる……」


 レオ

「もー、俺つかれたからー……」


 ナイル

「うーん、ちょっと、この辺で休もうか」


 ロイロ

「まだ二合も登れていないと思いますが?」


 シュシャ

「リア様がお疲れなのだ!

 少しくらい休んでもよかろう!」

(はぁ、はぁ……)


 ロイロ

(お前もな)


 リア

「いいえ、あともう少し……頑張るわ!」


 ロイロ

「……少しだけ、休みましょう」


 ――――――――――――


 リア

「それにしても……全然、人里に着かないわね」


 ロイロ

「人里は、四合目くらいからです。

 一合目から三合目までは主に畑など、農作物を育てる場所で、四合目から上が居住区。

 上に行くにつれて、身分が高い者が住む構造だったようですよ」


 リア

「じゃあ、城なんかは一番上ってことね?

 国王は大変だったでしょうね……寒そうだし、空気も薄そう……」


 シュン

「そんな山の頂上みたいな場所で生活できるのかな。

 気候も、目まぐるしく変わりそうだよね」


 ナイル

「ボクだったら嫌だなー。

 国境越えて出かけるなんて滅多になかっただろうけど、戻るのも一苦労だ」


 ロイロ

「だな。

 でも、下の方が暮らしやすそうだ。

 身分がどうこうって言われても、案外気楽だったのかもしれないな」


 ――たしかに、と全員が頷く。


 ロイロ

「さあ、そろそろ行きましょう」


 ――――――――――――――――


 シアン

「リア……見て……」


 リア

「……!

 うわぁ……」


 眼下に広がる景色。


 リア

「すごい……綺麗……

 私たち、あそこから来たのね……米粒みたい」


 ナイル

「だいぶ登ったね。

 これは……確かに美しいなぁ…」


 リア

「外の景色も綺麗だけど、山の中も自然がいっぱいね」


 シュン

「俺もそれ思った。

 小さな川があちこち流れてるし、植物も元気だし……

 食べられる果物や薬草も多くて、登りがいあるよ!」


 もきゅもきゅ

 と、ポルも果物をかじっている。


 リア

「ふふ……人里も楽しみね」


 ロイロ

「俺は、武器が楽しみです」


 リア

「武器?」


 ロイロ

「ええ。双国はこの地形のおかげで良質な鋼が手に入るらしくて。

 鍛冶屋の腕も良く、武器生産国家としても有名なんですよ」


 ナイル

「へぇ……ロイロ、ほんと詳しいね。

 ボクも覗いてみたいな」


 リア

「鍛冶屋……見せてもらえないかしら」


 ロイロ

「はぁ……それはやめておいた方がいいと思いますよ。

 堅物のおっさんばかりですから」


 リア

「えー、見たかったのに」


 シアン

「…………誰か、いる」


 ロイロ

「兵士か?」


 シアン

「…うぅん…村人」


 リア

「!」


 村人

「……? 見ない顔だね。旅の人かい?」


 シュン

「うん! 双国の見物に来たんだ」


 村人

「へぇ、こんな山国によく来たね。…どこから?」


 シュン

「……煌龍国だよ」


 村人

「まぁ! 煌龍国の人!

 ゆっくりしていって。

 ここから上は空気も薄くなるし、慣れてないなら一気に登らず何日かかけた方がいいよ。」


 ナイル

「何日も?」


 村人

「高山病って言ってね。

 頭痛や吐き気、めまいが出ることもあるの」


 シュン

「初めて聞いたな。煌龍国には、こんな山ないし」


 

――「お蕎麦……!」と盛り上がる一同。

しかし次の瞬間、現実に戻る。


(俺たち、貧乏だし……無理だよな)


(一応、姫の護衛なんだけどな……)

(むしろ姫も同じ生活してるのどうなんだよ)


ロイロ

(王族の旅とは思えないな……)


リア

「……今、なんか失礼なこと思わなかった?」


一同

「「「いえ別に」」」


 ――――――――――――

 

 村に到着――

 

どこからともなく、笛の音や太鼓の音、琴の音が流れてくる。

昔話の歌を口ずさむ者、コマを回して遊ぶ子供たちの姿も見えた。


 リア

「綺麗な村ね……」


 シュシャ

「素敵な音色で、心が落ち着きますね」


 シュン

「えぇ!? 蕎麦やすっ!!

 え、蕎麦やっす!!

 なんでこんなに安いの!? みんな食べれるじゃん!!!」


 ロイロ

「まじか……久々のご馳走だな」


 リア

「えー! 食べよ食べよ!」


 一同、大歓喜。


 砂利敷きの地面。

 ヒノキで作られた簡素な椅子。

 狐の銅像が据えられた出店の蕎麦屋で、並んで腰を下ろす。


 ――ずるる。


 (うんまあぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!)


 シュン

「俺……泣けてきた……」


 シュシャ

「母を思い出すな……」


 シアン

「……あったかい」


 レオ

「沁みるねぇ……」


 ナイル

「ほんと、美味しいね。

 山で食べる温かい蕎麦……

 これで温泉にでも入れたら、もっと最高だね…」


 村の子供

「おんせん、あるよ? あそこ」


 一同

「……え?」


 視線を向けると、確かに湯気の立つ印と、狐の銅像。


 ナイル

「え、ここ天国? 天国なの?」


 ロイロ

「俺たち、知らねぇ間に死んでたのか?」


 シュン

「……いやいや、でも流石に高いでしょ?」


 ……………………………………


 シュンが料金を確認しに行く。


 シュン

「今日、ここ泊まろう……!」


 ――超絶、安かったようだ。


 ――――――――――――――――――――


 湯に浸かり、体を休める一行。


 ナイル

「はぁ……極楽だね♡」


 シュン

「双国、最高……!!」


 シュシャ

「いい湯だった。布団もふかふかで、ヒノキのようないい香りがしたぞ」


 ロイロ

「寄った甲斐があったな」


 シュン

「高山病も気になるし、今日はゆっくりして、明日もう少し登って他も見ようか」


 一同

「賛成ー!」


 ――――――――――――――――――――


 リア

「あぁ……気持ちいい……」


 リアも湯に浸かり、体を休めていた。


 それにしても――


 (凱帝国の支配国とは思えない。

 村人も疲弊している様子はなく、みんな穏やかで明るい。

 でも……若い男の人は、あまり見なかった。

 もっと上層にいるのかしら……。

 それに、狐の飾り物が多い。

 狐を、神として祀っているのかしら……?)


 ガサッ。


 リア

「……! 誰?」


 …………………………


 音のした方へ、そっと近づく。


 「もきゅ??」


 リア

「なんだ、ポルか……びっくりした」


 小さく息をつき、ポルを抱き上げる。


 そのまま、何事もなかったように湯へ戻り、

 ポルを胸元で抱えたまま、再び肩まで浸かる。


 リア

「……ふふ、あなたも温まる?」


 ポル

「もきゅ……」


 湯気が、静かに立ちのぼる。


 ――静寂が戻る。


 風が、木々を揺らした。


 …………………………


 その奥。


 わずかに、枝が軋む。


 ―――――――――――――――――――


 シュン

「宿、温泉、晩飯付き、ふかふか布団。

 最高すぎる……双国から出たくないかも……♡」


 リア

「ふふ。本当にいい場所ね。

 明日は、村の人の話も少し聞いてみたいわ」


 ロイロ

「……あまり目立たないでくださいね」


 リア

「わかってるわよ」


リア

「とりあえず、今日は寝ましょ」


ロイロ

「そうですね」


シュン

「おやすみー……」


シュシャ

「おやすみなさいませ!」


ナイル

「いい夢見てね♡」


レオ

「…ぐぅ…ぐぅ……」


シアン

「……おやすみ」


ポル

「もきゅ」


――それぞれが、静かに床につく。


――――――――――――――――――――――


翌日。


 リア

「でも……やっぱり、登るのは辛いわね……」


 シュン

「ほんと……

 ここから出たくないって言葉、訂正するかも……」


 ナイル

「でも、ずっと登りっぱなしって感じでもなくなってきたね。

 家屋も増えて、ちゃんと村って感じ」


 シュン

「出店も多いし、休憩には困らないね。安いし!」


 ロイロ

「お。ちょっと、あの村寄っていいですか?」


 ――武器屋を見つけるロイロ。


 シュン

「じゃあ、みんな別れて行動しよっか」


 ・シアンとシュシャは団子の出店へ

 ・ロイロとリアは武器屋と伝統工芸品

 ・シュン、ナイル、レオは衣服屋や八百屋


 シュン

「最高だよ双国!

 ほんと何でも揃う! 国外出なくていいじゃん!」


 ロイロ

「言ってること、二転三転してるな」


 リア

「工芸品も実用的で綺麗だったわ。

 武器だけじゃなくて、物でも貿易してるのね。

 意外と裕福な国なのかもしれない」


 ナイル

「でも……若い男は、ほとんど凱帝国の兵として連れて行かれたらしい」


 リア

「ええ……息子が帰ってこないって嘆いていた村人もいたわ。

 潤っているけど……少し、寂しい国ね」


 ロイロ

「……負けた国は、奪われます。

 煌龍国も、そうならないように強くならんとですね」


 リア

「ええ……もちろん。

 煌龍国がまた強くなったら、双国の人たちを解放して、友好国に戻れないかしら」


 ロイロ

「……王が不在では、難しいでしょう。

 完全侵略しないのは地形のせいもありますが、

 指揮する者がいない無法地帯になっている状態なんでしょう」


 リア

「……王は、凱帝国に殺されたのよね。

 それに、四部族の長も……

 父上がとてもショックを受けていたのを覚えているわ」


 ロイロ

「確か、王妃は若くして亡くなって……姫がいたはずですが……」


 リア

「ええ……。

 でも…、その姫も、襲撃の際に放たれた火で亡くなったそうよ」


 リア

「銀糸の髪に、宝石のような瞳。

 とても美しい姫だったって」


 ナイル

「へぇ……双国の姫……一目見てみたかったな」


 シアン

「……あそこ、人が……」


 シアンの指す先で、女性が足を滑らせ、山肌に倒れていた。


 ナイルが駆け下り、抱えて戻ってくる。


 ナイル

「大丈夫?」


 女性

「……いたた……」


シュンはすぐに背負っていた鞄を下ろし、慣れた手つきで中から布と薬草を取り出し、腫れた足に触れた。


シュン

「足が腫れてる。折れてはいないけど、動かさないで」


手早く患部に薬草を当て、布で固定していく。


シュン

「少し冷やした方がいい

 これで、応急処置は大丈夫」


女性

「……ありがとう。あなたたちは?」



 ナイル

「ただの観光客だよ。

 こんなところで、綺麗なお嬢さんに会うなんて……運命かな?」


 女性

「……観光客?

 じゃあ、あなたたちは氷霧の剣士様じゃないのね?」


 ナイル

「……氷霧の剣士?」


 女性は目を輝かせる。


 女性

「凱帝国の兵から人を守ってくれる、美しい剣士様がいるんです。

 顔を隠してるけど、長身で、とても素敵な殿方だって」


 リア

「その方、どんな人なの?」


 女性

「詳しくは誰も見たことがなくて……

 でも、イケメンなんですって!」


 リア

「イケメンなの?」


 女性

「イケメンなんだって!」


 ――少し冷めた視線の男たち。


 ――――――――――――


 シュン

「骨折じゃなくてよかった。

 これ、帰ったら塗ってね」


 女性

「ありがとう!」


女性は何度も頭を下げると、

痛む足をかばうように、ゆっくりと歩き出す。


それでも振り返っては、小さく手を振った。


ナイル

「気をつけてねー」


やがてその背中は、山道の向こうへと消えていった。



 リア

「……氷霧の剣士、か」


 ロイロ

「そんな胡散臭い話、信じるんですか?」


 リア

「素敵じゃない! 響きとか特に!」



 ロイロ

「へーへー。イケメン好きはわかりませんね」



――言い合う二人。


その光景を、

どこか高みから、じっと見つめる影があった。


……風が、止む。


木々は揺れているのに、

そこだけが、不自然に静かだった。


気配はない。 


だが――


視線だけが、たしかに、そこにあった。


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