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双国ノ巫女 〜九尾の力を持つ雪女の姫は、戦場でその力を解き放つ〜  作者: Su
出会いと誓い――護衛テュエルとレイラの軌跡
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婚姻話を聞いた護衛、即ブチギレて暴走する


そろそろ、テュエルが護衛になって6年が経つのか……。


考えてみると、これまで彼に何か贈ったことは一度もない。

本来なら5年目くらいで渡すものだろうに、完全に忘れていた。


何か贈ろうか……。


本人に聞いても、どうせろくな答えは返ってこないだろう。

(レイラ様からなら何でも嬉しい!!髪でも、爪でも、抜けた歯でも!!)

……とか言いかねない。


…自分で考えよう。



レイラ

「…爺、一番腕のいい刀鍛冶に依頼したい物がある」


「……ダメですよ……私が陛下から怒られてしまいます……」


レイラ

「私のではない」


「ほぉ、テュエル殿ですな!?

 なら話は別……といいたいところですが、一番腕のいいとなると、少し難しい話やもしれませんね」


レイラ

「?」


「癖者なんですよ。あの陛下にも屈しない老人です」


レイラ

「父上よりも強い、そんな者がいるのか。なんとかできないのか?」


「ふぅむ……そもそも行くことも困難極まりない場所です。場所は知っていますが」


レイラ

「私が出向けばいいか?」


「うーーーーーん。姫様にはその道も危険ですので、とりあえずどのような武器か詳細をお聞きしてみてもいいですか?

 陛下に話を通して作らせましょう」


レイラ

「わかった。描いてこよう」


――――――


一方、テュエル――


ポカーーーーーーン。

城壁の上で天を仰ぎ、力なく横たわる。


半休……夕方までか……何をするんだ、普通の人は。

気が狂いそうだ。

――レイラ様の側に居れない、俺には休みそのものが罰のようなものだ。


テュエル

「レイラ様…今何をしているんだろう……」


そこへ、見慣れぬ風体。外套で顔を覆った者が関門を通り、城へ向かっていく。


(怪しいな…)


テュエル

「……興味はないが……暇だし、“忍びごっこ”でもしますかね……」

そう呟くと、外套の者を追う。


――宮殿へ向かうのか……?

あの紋章は……凱帝国……?

敵国じゃないか……何のためだ……

――嫌な予感がする……。


凱帝国の使者が、ダインと謁見室で話している。

聞き取りづらい声だが、テュエルは距離を詰める。


――その瞬間、頭が真っ白になった。

声も出ず、ただ目だけを大きく見開く。

「……っ……」

息すら詰まり、言葉は何も出てこない。


心臓が早鐘のように打ち、手足が震える。

――これが現実だとは、信じたくなかった。


――――――――――――


使者

「それでは賢明な判断を期待していますよ。」

くつりと不気味な笑みを浮かべ、踵を返す。


………………………………


ダイン

「……………はぁ……」


ダインがため息をついたその瞬間、影のようにテュエルが現れた。――まるで空気の流れを裂くこともなく、音ひとつ立てず、目だけが鋭く光った。


テュエル

「陛下…、まさか、受理なさるつもりですか」


ダイン

「……機密事項を盗み聞きとは、感心しないな」


テュエル

「誤魔化さないでください!

 気づいていて聞かせたんでしょう?!」


ダイン

「…………前々から来ていた話だ…。」


テュエル

「…そんな決定したら、ボクは絶対許しませんよ」

「あんな、何人も女を侍らせていて、飽きた者は殺すと言われている、悪名高いソンゴルの……妃ではなく【愛人】など!!!」

怒りで顔が歪み、拳を握りしめる。


ダイン

「……国のための婚姻、政略結婚、一般的なことだ。ソンゴルの野郎も、レイラを見たら気持ちが代わることもあるかもしれん……」


テュエル

「陛下…!レイラ様の気持ちはどうするのですか!

レイラ様を愛していらっしゃるなら、その決断は絶対すべきではありません!!!戦をしましょう!!

俺が最前線で叩きのめしてやりますよ!!」


ダイン

「口を慎め…立場をわきまえろ…」

(何も失わないことなど、できるわけがない……)


テュエル

「…もういいです!話になりませんから!」

呆れと怒りで顔が歪む。

そのまま踵を返す。


ダイン

「レイラを連れ、国から出ようとは思わないことだ。

そのようなことをしたら、それこそ戦になり、国が終わるぞ」


テュエル

「ボクには国など関係ありません。

レイラ様を人質にするより1億倍いいです…!!」


一拍。


「……レイラ様以外は、全部どうでもいい」


そう言い残すと、扉の向こうに姿を消した。

背中さえも見せず、完全にその場を去っていく――



ダインはこめかみに手を当て、心底困り果てた表情を浮かべる。

「…………」


人質……か…………。

選べるわけがない、国……民……娘……

天秤にかけるものではない。


戦……流石に無理だ、規模が違う、猪100匹をクマ1匹で闘うようなものだ……


(私一人で…………)

(…いや)

 人間の戦としての理に従わねばならぬ


ただの縁談……


 ――煌龍国……友だった国。


(……今は、違う)

(リンドウの死)


あの時から、あの国との関係は止まったままだ。

……今さら、声をかける理由はない。


……いや、違う。

かけられないのだ。


(あの王の子は……)

(……読めぬ)




ただの婚姻……


それだけで国を守れるなら……


(……安いものだ)


そう思おうとして――


わずかに、言葉が止まった。


テュエルは馬に跨り、駆け去っていった。

――その行為がどれだけ危険か、後になって知ることになる。


――――――――


レイラ

(…もう……夕方なのに、遅いな…。

あいつのことだから


「レイラ様!お会いできなくて苦痛でした!

ボクはもう休暇などいらないです。

むしろレイラ様のお側にいることこそが休暇なのです」

とか言いだして、定刻になった瞬間出てくると思ったのに……。)


……………………暇だな。


椅子に腰掛け、背もたれにもたれかかる。

畳の柔らかさが足元に心地よく伝わり、思わず小さく息をつく。

目を閉じれば、いつの間にか少し眠ってしまっていた。


――柔らかな手の感触に、ふと意識が引き戻される。

ゆっくりと目を開けると――


「姫さま」


レイラ

「ん…爺…?」

――どうやら、眠ってしまっていたようだ。


「テュエル殿はまだ戻ってないのですか?」


レイラ

「…あぁ、すぐに戻ってくると思ったが、意外と休日を有意義に楽しんでいるようだ」


「そのようですな!^^

それと、夕餉の時間です。その際、陛下からお話があるそうですよ」


レイラ

「……話?」

思わず息を呑む。




――なんだか、今日はいつもの日常の匂いがしない。


胸の奥が、ざわつく。


その頃――


テュエルは、もう戻る気などなかった。



次回、ふたりの距離が少しだけ変わります。




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