父の骨を、母のもとへ
…………………………ドクン……ドクン……
落ち着く匂い……愛の匂い……
それと、困っている匂い……………………
ドクン、ドクン………………
心臓の音…………………………
………………バクバク……バクバクバク……
「…………うるさいな………………」
その鼓動のうるささに耐えかねて、
レイラはゆっくりと目を開けた。
すると――
目の前には、自分の抱き枕にされているテュエルの姿………………
テュエル
「…………!
レ、レイラ様……お目覚めでしょうか……?
お、おはようございます!^^」
「寝起きのお顔もお美しいですね!
雪から顔を覗かせている蕗のとうのように、儚げでございました!!」
(あぶねー……)
(……あと一歩で、吸い寄せられるように距離を詰めるところだったぜ……)
(……危うく、理性が限界を越えるところだった……)
レイラ
「…………おはよう……」
(なんとも言えない顔)
テュエル
「……!
ご、誤解です!!
ボクは何もしていません!!」
「あの後、手を握ったままレイラ様が眠りにつかれたのを確認して……
去ろうとしたのですが……
手を引っ張られて、そのまま………………///」
言葉にしておいて、
自分で言っててすごく恥ずかしくなるテュエル。
レイラ
「?
……別に、誤解などしてないが……?」
(なんで一緒に寝てたんだっけ、とは思った)
その時――
ガララ――、と扉を開ける音。
リア
「レイラ、起きた?!
おはよ――」
「えぇ?!////」
一緒の布団にいるテュエルを見て、固まるリア。
そこへ駆けつけるロイロとナイル。
ロイロ
「どうした、リア……」
ロイロ&ナイル
「……………………」
大浴場での会話を思い出し、
早速のやらかしを目の当たりにしてドン引きする二人。
テュエル
「……おい!!
ちがっ!!!」
珍しく荒々しくキレるテュエル。
ナイル
「……はぁ〜、若いっていいね」
ロイロ
「朝っぱらから盛ってんじゃねぇよ」
テュエル
「……………………!!!」
でも本当に口付け寸前だったため、
なにも言い返せないテュエル
レイラ
「……誤解するな。
私が寝ぼけて、抱きしめてしまっていただけだ……」
リア
「きゃーーー///」
ドキドキが止まらないリア。
ロイロ&ナイル
「どっちにしろ、すみにおけねぇヤツだね」
爺
「姫さま、おはようございます^^」
レイラ
「爺!」
テュエルをドンッと突き飛ばし、爺へと駆け寄るレイラ。
フラれたように、静かに沈むテュエル。
ロイロ
「やっぱり、ちょっと残念なヤツだなw」
ナイル
「ごめん……ボクは面白くて仕方ないよw」
「気の毒だけどw」
――――――――――――
朝食を食べる一行
シュン
「レイラ、もう起き上がって大丈夫なの?」
レイラ
「あぁ。
少し体がいつもよりだるいくらいで、
もうほとんど元通りだ。」
「シュン、そなたも看病してくれたと聞く。
ありがとう」
シュン
「俺は別に、たいしたことしてないよ///」
リア
「シュンとテュエルがずっと診てくれてて、
すごく安心だったわ」
シュン
「ほんとに!
テュエルは医学の知識もあって驚いたよ!
本当、なんでもできるよね!」
ナイル
「レイラちゃん……テュエルくんに、感謝の口付けでもしてあげたら?」
テュエル
「っ、ナイル殿……?!」
ものすごい目で睨みつけるが、
ほんの少しだけ嬉しそうなのが隠しきれていない。
テュエル
「……本当に、そういう無礼なことをおっしゃるのはおやめください。
レイラ様から褒美をいただくために、ボクは護衛をしているわけではありません!
ボクが何かをして、レイラ様から対価をもらうなど……そのような分際では――」
レイラ
「……………………いらないのか?」
(対価)
テュエル
「………………え?………………」
(まさか口付け?!)
――このやり取りがあまりにもデジャブすぎて、
全員が吹き出しそうになる。
レイラ
「……お前には……ずっとずっと……
……感謝しているのだが……
いらないのか………………?」
少しずつ、テュエルに歩み寄り、距離を詰めるレイラ。
テュエル
「……えっ……そ、そんな…………
そん、な…………し、心臓が…………
……持たないです………………!」
目を閉じ、完全にオーバーヒート寸前のテュエル。
レイラ
「こんな場でも良ければ…………
遠慮するな………………さぁ………………」
さらに近づく。
テュエル
「……………………っ……!
レイラ様っ!!!!!♡」
理性が敗北し、
キス顔のまま少し前のめりになる――
――しかし。
ガンッ!
テュエル
「ぶっ!」
レイラ
「……なにをしている?
目を開けろ」
テュエル
「???……………………!!!!」
ハッとして目を開く。
レイラ
「ずっと、渡せていなかったものだ。
……と言っても、私もついさっき爺から手渡されたものなのだがな」
そう言って、
レイラは大振りな双剣を差し出した。
テュエル
「…………え、これは……?」
レイラ
「本当は護衛五年目など、節目の時に渡すべきだったのだが……
うっかりしてな。
六年目の時に爺へ、
“最高の刀鍛冶に作らせてくれ”と依頼していたものだ」
テュエル
「…………………………」
造形美を前に、目を輝かせるテュエル。
レイラ
「お前の体は均衡が取れている。
左右対称の武器を持ったほうが、本来の力をさらに発揮できるだろう。
無理に使う必要はないが……
私からだ。
遅れて、すまなかったな」
テュエル
「………………ます……」
レイラ
「?」
テュエル
「…………ありがとうございます」
涙ぐみながら続ける。
テュエル
「ボク、こいつを肌身離さず持ちます。
こいつと一緒に寝るし、
こいつと一緒に闘うし、
こいつと一緒に厠にも行くし……
毎日、こいつのお手入れをします……」
もはや家宝。
レイラ
「…ふっ……
嬉しいなら、なによりだ」
リア
「よかったわね、テュエルw」
ロイロ
「すげーーーー」
――キラキラどころか、ギラッギラ
ナイル
「よかったね、テュエル君♡」
(キスのほうが嬉しかったかもしれないけどw)
シュシャ
「すごい立派な刃だな……!
まるで鬼の牙のようだ……!!」
シアン
「すごい…………
綺麗な鋼…………」
爺
「おっ、さすがシアン殿。お分かりになりますか?
神の縁台にある、貴重な玉鋼から造ったのですよ。
テュエル殿の屈強な肉体と、この大振りな剣が合わさったら……と、
レイラ様が自ら図案を設計なさったのです^^」
「愛されておりますなぁ〜、はっはっw」
テュエル
「…………レイラ様が……自ら………………」
じーーーーーーん。
もう心ここにあらずという様子で、
ずっと双剣を眺めているテュエル。
レイラ
「………………」
(喜んでもらえて、よかった)
シュン
「はぁー!ご馳走様!
今日も復興のお手伝い?」
リア
「なにもやることがなければ、そうしましょ」
レイラ
「さっき爺から聞いた。
ありがとう……国の復興、民の手当、炊き出し……
私が寝ているばかりに、手伝わせてしまって……」
少し、俯き気味に言う
リア
「私たちがしたくてしてるんだから、気にしないで!
レイラは今日はどうするの?」
レイラ
「………………父の遺骨を、
母の墓へ移そうと思っている」
――まだ復興中で、簡易的な墓しかなかった
リア
「ダイン王の……
私も手伝う?」
レイラ
「いや……私だけでいい。
母の墓は、私と父しか足を踏み入れてはならないことになっている」
シュン
「……!
わかったよ。こっちは任せて」
墓を特定されて、ミコトの骨で
何かされても困るからかな……と一行は察する
ナイル
「じゃあ今日は別行動だね。
また案内よろしくね、レイラちゃん?♡」
レイラ
「あぁ、すまないな……
早く移して差し上げたいんだ」
リア
「レイラ、ダイン王のお墓なんだけど……
一応、リュウコの敷地内にも造ってもいいかしら?」
レイラ
「?
なぜだ?」
リア
「村のみんながね、
簡易的なお墓に、毎日手を合わせているそうのよ……」
レイラ
「……!」
リア
「ミコト様のお墓も欲しかったって嘆いていたの。
ついで、なんて言ったら失礼だけど……
ミコト様のお墓も作ってもいい?」
レイラ
「………………………………
ありがとう……」
その粋な提案に、
レイラの瞳が涙で潤む。
リアは、にこっと笑った。
「じゃあ、またあとでね!」
そう言って、一同は食堂を後にする。
レイラがちらりと振り返ると――
まだテュエルが、双剣を愛でていた。
レイラ
「……………………ふっ…」
「…行くぞ……」
テュエル
「…はいっ!
どこまでもお供いたします^^」
リアたちと別れ、
レイラはダインの骨壷を抱え、
民へ簡易的な挨拶を済ませる。
そして――
母・ミコトの墓へと、テュエルと共に馬で向かった。
馬を操りながら、
後ろに座るテュエルへと視線を向けるレイラ。
その腰には、
先ほどの双剣が装着されている。
少しだけ、くすぐったい気持ちになった。




