目覚めた姫と、報われないはずの嫉妬心
ヤヒロ
「……!
姉ちゃん!!」
リア
「ヤヒロ!おはよう!
早いわね!」
イブキ
「リア様……!
こんな朝早くから、どうなさったのですか?」
リア
「……私たちにも、手伝わせて。
まだレイラが起きないし……
私たちにできることがあったら、なんでも言ってほしいの」
イブキ
「そんな……!
お客人に、雑用のようなことをさせるわけには……!」
――その時。
シュシャが、大岩を軽々と持ち上げる。
シュシャ
「おい。この岩は、どこへ運べばよい?」
イブキ&ヤヒロ
「………………あ、あちらです……」
(目が点)
ロイロ
「俺たちにも仕事させてくれよ。
こんないい所で、タダ飯食わせてもらってちゃ、バチが当たる」
シュン
「戦闘以外なら任せて!怪我人いたら手当するよ!」
ナイル
「運搬は、ボクに任せて?あと恋の悩みも♡」
ロイロ
「んな必要ねぇからさっさと仕事しろ」
リア
「ふふっw
元のリュウコを、完璧に取り戻すことはできないかもしれない。でも……手伝わせて?」
「できる限りのこと、手伝いたいの。
なんでも言って」
イブキ&ヤヒロ
「……ありがとうございます……!」
二人は目を潤ませて、微笑んだ
――――――――――――――――――
リアとレオは、瓦礫や崩れた破片などの細かい撤去作業。
ロイロとシュシャは、大岩や大物の運搬。
ナイルは、必要な資材の運搬。
シアンは、修繕作業。
シュンは、前日に怪我をした人々の手当と、
復興作業中の人たちへの炊き出しを手伝った。
――――――そして、夕方 ――――――――
シュン
「はぁ……!
つ、疲れた………………」
リア
「かなり過酷だったわね……w
でも、だいぶ進んだんじゃないかしら?」
ナイル
「うん。設計図も見せてもらったけど、
かなり近い形になってきてるみたいだよ」
レオ
「もー、はらへったーー力でねぇーー。」
シュシャ
「重労働ではあったが……
大岩がなくなって、ずいぶんスッキリしたな!」
シュン
「そうだ、大岩!
シアンの提案で、庭の方に置いたの正解だったよね!すごくいい味、出てた!」
リア
「さすがシアンね!
形のいい岩だったし!」
シアン
「…うん、座っても、寝てもいいようにした」
(シアン、少し照れる)
ロイロ
「この調子なら、
俺たちが手伝ってるうちに、復興終わるんじゃね?w」
リア
「そうねw
終わらせてから帰ってもいいかもw」
シュン
「あ!
爺さーーーん!」
リア
「爺!
おかえり!」
爺
「これはこれは……!
昨日まで、あれほど乱れていたのに……
まさか、手伝ってくださっていたのですか……?」
「本当に……
お客様なのに、申し訳ございません……!」
リア
「いいの!
好きでやっていることよ?」
ロイロ
「タダ飯食うのは、主義に反するんでね」
にやりと口角を上げる
爺
「本当に、ありがとうございます。
すぐに夕飯の支度を整えますので、
それまで大浴場でもよろしいですし、
居間でゆっくりくつろいでいただいても構いませんよ^^」
リア
「ありがとう!
じゃあ……お風呂、いただこうかしら」
「俺もーーー」
と、皆で連れ立って大浴場へ向かう。
―――――――――――――――――――――――
リア
「はぁー……いいお湯だった」
……ん?
ロイロ
「まじかよ!!」
ナイル
「うわぉ……すごいねぇ!」
シュン
「え?!
これ……いいの?!」
シアン
「……綺麗………………」
皆が、ざわざわと声を上げる。
リア
「?
どうしたの??」
ナイル
「爺さまがね、約束通りなんだ。
ロイロの槍と、シアン君の大弓、ボクの釵と暗器、
シュシャ君の大刀、
それにシュン君用の包丁まで……
全部、鍛え直して持ってきてくれたんだよ」
ロイロ
「……すげぇ……
ピッカピカだ……」
爺
「ロイロ殿の槍は、研磨のみに留めております。
刃の重心と均衡はそのままに、表面の摩耗のみ整えました」
「構造に手を入れれば、槍の“間”が変わってしまいますゆえ。
重さや癖がわずかでも変われば、手に馴染んだ感覚が崩れる恐れがございました」
「ゆえに今回は、“変えないこと”を優先いたしました^^」
ロイロ
「……!
さすがだな……ありがてぇ!」
シアン
「……持ち手側が、少し重い……」
爺
「余計なお世話でしたら申し訳ございません。
弓の歪みと手癖を拝見したところ、
引き始めの安定を優先した方が扱いやすいと判断し、
握りの重心をわずかに整えさせていただきました」
「張りの強さ自体は変えておりません。
矢を番えた際の癖が崩れぬようにしております」
(さらに、そっと矢筒を差し出す)
爺
「こちらも不足しておりましたので、
同じ規格の矢を補充しておきました」
(シアン、軽く弓を引いてみる)
シアン
「……!
引きやすい………………」
爺
「それは、よかったです^^」
ナイル
「この暗器もすごいよ。
使うのが勿体ないくらい、研ぎ澄まされてる」
爺
「遠慮なく、投げてお使いください^^」
「釵は取り回しを重視し、手首の返しに馴染むよう、
重心をやや中央寄りに整えております」
「暗器の方は、投擲時の回転が安定するよう、
偏りを抑え、重心を均しております」
「いずれも、手を離れた後の軌道が乱れぬよう、
最小限の調整に留めておりますゆえ」
ナイル
「……へぇ……
ここまで考えて作られてるんだね。ありがと、爺さま♡」
シュン
「まさか……
俺の分まで用意してくれてるなんて……
感動……」
爺
「姫さまに、お食事を振る舞って頂いたと聞きましたので。
ほんの、お礼です^^」
シュシャ
「おぉ…!この大刀……
かなり手が入ってるな。刃こぼれも無くなった…ありがたい!!」
ロイロ
「しかし、重くて大変だっただろ?」
シュシャ
「…うっ、ここまでの重量物を整えるのは骨が折れたはずだ…申し訳ない。」
爺
「いえいえ、大したことではございません^^」
「刃の傷み具合と重心の偏りを拝見し、
必要最低限の調整を施しただけに過ぎませんので」
ロイロ
「しかし、よくこんな大量の武器、1日もかからず手入れ終わったな!」
爺
「ええ……作業の手順を分けておりますので」
(にこ)
「それにつきましては……企業秘密ということで^^」
シュシャ
「……なるほどな。職人の技か」
皆、心から嬉しそうな表情になる。
リア
「……みんな、よかったわね^^」
――その時。
レイラの部屋の方から、かすかな声がする。
……?
リアが席を立ち、
レイラの部屋の扉を開ける。
リア
「テュエル……?
どうしたの……?」
……………………………………!!!
――目に飛び込んできた光景に、思考が一瞬止まる。
床に崩れるように座り込み、
誰かを強く抱きしめたまま微動だにしないテュエル。
その腕の中にいるレイラは、
ぐったりと力なく、呼吸すら分からないほど静かで――
(え……?)
リアの胸が、ドクンと大きく跳ねる。
視界が一瞬で狭まる。
音が遠のく。
(レイラ………?)
血の気が引き、指先が冷たくなる。
(……まさか――)
心臓が一度、強く嫌な音を立てた気がした、その瞬間。
テュエル
「レイラさま!!!!」
皆が一斉に駆け寄る。
リア
「レイラ!!!」
シュン
「レイラ、どうしたの?!
急変でも――……」
……言葉が、止まる。
テュエルの様子を見て、
全員が凍りついた。
シュン
「……え……
なんで……そんな……」
ナイル
「……ぶふっwww」
……え?
レイラ
「…………っ……リア……
……みんな……
おは……よ……」
「テュ…エル……苦しい……」
「…………………………」
その場にいる全員が、
ほんのわずかに“次の言葉”を待つように固まる。
――数拍。
ようやく、現実が追いついた。
リア
「レイラぁぁぁーーーーー!!!
よかった……!
本当に……心配したのよ!!」
「助けてくれて……
ほんとに……ほんとに、ありがとう……!!」
涙が、止めどなく溢れる。
レイラ
「……泣くな。
愛らしい顔が、台無しだぞ……」
指で、そっと涙を拭う。
リア
「……あ、あのね!
見て、レイラ!」
(爺へ視線を向ける)
……………………………………
レイラの視線が、ゆっくりとその人物を捉える。
一度、瞬きをして――
――止まる。
レイラの目が、大きく見開かれた。
信じられないものを見るように、
その姿を何度も確かめるように見つめる。
爺
「姫さま…………
お久しゅうございます……」
「ご無事で……
何よりでございます……」
(瞳に、今にもこぼれ落ちそうなほどの涙を溜めながら)
レイラ
「…………………………
……爺……なのか?」
爺
「……はい。
爺でございます…………」
レイラ
「……本当に……?」
爺
「……はい。
私でございます……」
――次の瞬間。
ガバッ、と起き上がり、
爺に抱きつく。
レイラ
「っっっ!!
爺!!!
爺!!爺ーーー!!!
ふぇえぇえぇぇぇぇん……!!」
皆が驚くほど、
子供のように泣きじゃくる。
レイラ
「生きてて……
よかったぁぁぁぁ……!!
爺ぃぃぃーーーーー!!!」
爺
「姫さま……
お会いしとうございました……」
「ご立派になられましたな……」
(よしよし)
レイラ
「じぃぃぃぃ……」
爺
「はいはい、爺ですよ^^」
……………………………………
皆が、はっとして
テュエルへ視線を送る。
――そこには。
骸骨のように正気を失ったテュエルがいた。
全員、
「見て見ぬフリ」を決め込んだ。
――――――――――――――――――
爺
「というわけで……禁足地にて姿を隠しておりました」
レイラ
「まさか……頂上へ行けば爺に会えるとは思わなかった……
すまなかったな、爺。苦労をかけてしまった」
爺
「私はただ隠れ住んでいただけでございます……
ご苦労なさったのは姫さまの方……
姫さまが困っている時に力になれず……
大変、申し訳ございませんでした……」
レイラ
「爺が無事で嬉しい。
また会えて……本当によかった……」
爺
「……歳をとると、涙腺がどうも……」
(眼鏡を拭く)
ナイル
「もう爺さま、何歳なのかわからないくらい歳取ってるもんね」w
レイラ
「……まさか爺も妖だったとは思わなかった……
禍々しい妖気も匂いもなくて、気づけなかったよ」
爺
「私は人を食ったりもしませんし、
戦闘も致しませんからね」
レイラ
「……もう……離れていかないでくれ、爺」
爺
「もちろんでございます」
テュエル
「…レイラ様、顔色が悪いです。
もう少し、お休みになられてください」
レイラ
「うん……そうするよ……」
爺
「後ほど粥でも用意いたしますので、
もうしばらくお休みになって下さいね^^」
リア
「じゃあ、またね」
レイラ
「あぁ…」
――――
テュエル
「……………………」
レイラ
「…………?」
(怒ってる匂い?)
レイラ
「どうした」
テュエル
「……いえ、別に^^
2日近くお休みになられていて、本当に心配したんですからね!
あんな真似、二度としないでください!」
レイラ
「うん、ごめん……」
(みんなの前で妖になってしまった……)
(どうするか……)
テュエル
「今後のことは大丈夫です。
ゆっくりお休みになって、
ちゃんと体を治してから考えましょう?」
レイラ
「……うん」
(相変わらず、
何を考えているのか読まれるな)
テュエル
「では、ボクも失礼します。
ゆっくり休まれて下さい^^
また目覚めた頃に来ます」
レイラ
「……………………」
テュエル
「では、お休みなさい」
布団から離れようとした、その瞬間――
ギュッとテュエルの裾が引かれる
テュエル
「……っ……?!」
レイラ
「……なぜ、怒っている?」
テュエル
「……え?」
服の裾を摘み、
レイラはじっと、見つめてくる。
(…………………………)
(かわいい……………………♡)
(――じゃなくて!!!////)
テュエル
「…怒ってなんていませんよ」
レイラ
「…………………………」
(信じてない顔)
テュエル
【「お前は自由にしてたらいい。お前を拒まない」】
レオの言葉を思い出す。
テュエル
「………………っ…
……嫉妬、しちゃいます…」
「爺殿との対面の時と、
ボクの時との落差が激しすぎて……
……少し、悲しかっただけです………………」
レイラ
「……………………………………」
沈黙。
テュエル
「………………………………」
(レイラを、ちらりと見る)
レイラは少し間を置いてから、
まるで何でもないことを確認するように、
ゆっくりと顔を上げる。
そして――きょとんとした表情のまま、
レイラ
「……だって、爺……大好きだもん」
テュエル
「……………っ…」
――グサッッッッ
(会心の一撃)
(レオ殿の嘘つき!!)
レイラ
「でも……
お前と会えたときのほうが……」
「もっと、
胸が……ギュッとしたな……」
少しの沈黙。
テュエル
「…………いい意味で、でしょうか?」
レイラ
「…………さぁ?」
テュエル
「…………」
(本当に、分かってないんでしょうね……)
テュエル
「とにかく、顔色が悪いです。
お休みになって下さい」
レイラ
「うん」
テュエル
「では……」
そう言い、踵を返そうとする。
レイラ
「……?
……待て」
テュエル
「……まだ、何か?」
(ちょっと傷心中なのに……)
レイラ
「……行くのか?」
テュエル
「…………え……」
(……居て…いいの?)
レイラ
「……手を握って、
寝付くまでそばにいてくれないか?」
テュエル
「…………………………………………………………」
無言で布団の隣の椅子に座り、
そっと、手を握る。
顔を真っ赤にして、嬉しそうにしているのが
きっと、バレバレなのだろう。
レイラが、ふっと笑ったのがわかる。
テュエル
(ちくしょぅ…………
殺す気か…………)
(なんて、いじらしい……
……かわいすぎでしょ………………)
「……はぁ……」
と小さくため息をついた。




