覚めぬ姫と、眠れぬ護衛の独白
風呂から上がり、食事を済ませ、部屋へ戻る道中。
爺
「まだ姫さまはお目覚めになっておりませんし、
明日、何かやりたいことなどはございますか?
テュエル殿は、きっと姫さまから離れないでしょうから、
案内はしてくれないと思います。
事前に仰っていただければ、案内役も手配いたしますが?」
リア
「ありがとう。でも大丈夫よ。
自分たちで、行きたいところに行くわ」
爺
「かしこまりました。
では、どうぞごゆっくりお休みくださいませ」
(ぺこり)
リア
「勝手に断っちゃったけど……大丈夫だった?」
シュン
「大丈夫でしょ。
俺も色々自由に見て回りたいし、
怪我した人たちも、また診ておかないと」
ロイロ
「そうっすね。
あの大岩、邪魔でしょうから、退かしてやらねぇと」
シュシャ
「うむ。我々がやった方が、効率も良かろう」
ナイル
「じゃあ決まりだね。
明日は復興のお手伝いでもしようか」
シアン
「…そうしよう」
レオ
「おー!」
リア
「みんな……ありがとう。
同じ気持ちでいてくれて、嬉しい」
シュン
「じゃあ今日はゆっくり休もう。
明日も、まだまだハードだからね!」
リア
「うん。
じゃあ、みんなお休み」
隣の部屋へ向かうリア。
「おやすみー!」
とみんなで手を振り合う
――――――――――――――――
レイラの部屋
――――――――――――――――
テュエル
「……熱は、下がってきたみたいですね。
………………お辛いですか、レイラ様。
寝ている姿もお美しいですが……
やはりボクは、起きている貴女と話がしたい。
口数が多い時に、
“うるさい”と言う代わりに、
冷ややかな目で睨まれたいです。
ボクの他愛もない話を聞いて、
少しだけ微笑む……
あの表情を、早く見せてください」
そっと、レイラの手を握る。
レイラ
「………………」
テュエル
「………………本当に……
……あなたが愛しくて…………
……………………愛しくて…………
たまりません。
このようなことを思うのは、
無礼だと分かってはいますが……
……どうにも、止められそうもありません。
……もし、
ボクのことが嫌になったら……
殺してくださいね。
その方が、きっと………………」
ふっと、息を吐く。
テュエル
「……おやすみなさい。
また、明日^^」
――パタン
レイラ
……………………………………………………
………………誰だ…………
【愛しくて……せん】
テュエル……………………?
そこに……いるのか………………??
……手が……あったかい……………………
【また明日】
レイラ
「……うん。
また、明日………………」
寝言と共に、再び眠りへ落ちる。
――――――――――――――――――
部屋近くの通路前。
存在感のある満月が、静かに辺りを照らしていた。
(満月……か……)
テュエル
「綺麗だな…………まぁ……レイ――」
言いかけてはっとする。
【こんな満月よりも、
レイラ様のほうがお美しいですよ。
どちらかというと、
レイラ様のおかげで満月が美しく見えますね】
かつて口にした言葉を思い出し、
今も変わらぬ気持ちだと実感して、鼻で小さく笑う。
「猿の兄ちゃん、寝れねぇの??」
テュエル
「……レオ…様」
(この人は、恐らく、レイラ様が一目置いている人物……)
レオ
「様とか硬ぇなw
レオでいいからw」
テュエル
「…レオ殿は、皆と休まれないのですか?」
レオ
「綺麗な月だなーって、眺めてた」
(結局、殿って言ってるけどなw)
「猿の兄ちゃんは?
また満月見て、姫姉ちゃんのこと考えてた?w」
テュエル
「……はい。その通りです」
(姫姉ちゃん……)
レオ
「考えすぎんなよ。
考えたって、しょうがねぇ」
「死んだ俺の友達がさ
……ほんっと喋んねぇヤツでさ。
最初、嫌なのか好きなのか、全然わからないやつだったんだよ」
「……でも、蓋開けてみたら、
どっちでもいいだけだったってオチなw
じゃあ、そう言えよーって話なんだけどさw」
「よく見てるとさ、そいつ、
事前に準備するヤツじゃなくて、
“何か起こった時に動く”ヤツだったんだよな」
テュエル
「……陛下もそういう風に、
いつも人を振り回していました」
レオ
「だろー?w
……姫姉ちゃんも、実はそうなんじゃねぇの?」
テュエル
「……!」
レオ
「近すぎて分からなくなること、あるけどさ。
そうなった時、
そう思った時に、行動する人なんじゃねぇの?」
――砦に助けに来てくれた時の【会いたかった】
――不意打ちで口付けられた、あの瞬間
――満月の夜、夜伽に誘われたあの日
テュエル
(…………………………)
レオ
「深く考えなくていい。
そうなった時は、姫姉ちゃんがちゃんと考える」
「お前は、自由にしてりゃいいんだよ。
姫姉ちゃんも、お前を拒まないって言ってたしな!w」
「自信持てなー」
テュエル
「…………」
レオ
「じゃ、冷えてきたし寝るわー。
じゃな!」
テュエル
「……はい。
……レオ殿、ありがとうございました」
レオ
「ん!」
「ばいばーい」
と軽い調子で手を振る
――――――
テュエル
「……自由に………………か………………」
――――――――――――――――――――――
チャポン………………
ロイロ
「…………朝風呂、最高だな」
ナイル
「おはようロイロ。
早起きだね」
ロイロ
「なんだ、貸切だと思ってたのによ」
ナイル
「……レイラちゃん、そろそろ目、覚ますかな」
ロイロ
「……さぁな。
覚まさねぇと、あいつ、ずっと静かなままだろうな」
ナイル
「テュエル君ねw
ほんと、びっくりするくらい静かになったよね。
話す時は普通だけどさ」
ロイロ
「もう少し……あいつから学びてぇんだけどな」
ナイル
「ロイロも珍しいよね。
稽古なんて、いつも教える側だったのに」
ロイロ
「自分より強ぇヤツなんて、そう見ねぇからな……。
圧倒的な壁を感じたのは、初めてだ」
「学べるなら学びてぇ。
それが味方ってんなら、ちょうどいい」
ナイル
「ほんと……敵じゃなくてよかったよ…………
……って、あれ?
噂をすれば……テュエル君?」
ロイロ&ナイル
「?!」
風呂から出てきたわけでもなく、
入ってたわけでもない。
――なのに。
テュエルの全身から、ありえないほどの蒸気が立ち上っている。
ロイロ&ナイル
「………………なんで?!」
(ガーン)
テュエル
「………………!」
――ぺこり
目が合い軽く会釈
ロイロ&ナイル
「!!」
――ぺこり
思わず体が反射的に会釈する
目にも止まらぬ速さで身体を洗い、
汗を流し、湯に飛び込み、
一度潜って浮かび上がったと思った次の瞬間――
湯殿から出ていくテュエル。
ロイロ&ナイル
「………………え……」
ロイロ
「早くね?」
ナイル
「体感……15秒?
いや、もっと短くない?」
「ていうか、あの蒸気……
もう修練後ってこと?」
ロイロ&ナイル
「………………………………」
ナイル
「次元が違うね………………?」
ロイロ
「……あぁ…………」
――――――――――――――――――
爺
「おはようございます^^
朝食の準備が整いましたので、
よろしければ食堂へお越しくださいませ」
「私めは少し用事がございます故、席を外しますが、
何かあればテュエル殿へお尋ねください。
きっと、姫さまのお部屋におりますので^^」
シュン
「ご飯まで準備してくれるとか、ありがたすぎる!」
レオ
「お腹すいたー!
早く食べたーい!」
リア
「ありがとう、爺。
気をつけてね」
爺
「ありがとうございます。
行ってまいります^^」
ロイロ
「んじゃ、行きますか。食堂へ」
――――――
シュン&リア
「ふわぁぁぁぁあ!」
シュン
「朝からこんな贅沢していいの?!
バチ当たらない?!」
リア
「温かい汁に、ご飯、お魚……
お浸しまで……」
シュン&リア
「しあわせぇぇぇぇ」
シュシャ
「ここまでしっかり食べられるのは、久々だな!」
ロイロ
「朝から腹いっぱい食えるのは最高だ。
これなら、ちゃんと仕事できそうだな」
ナイル
「一仕事、頑張れちゃうかもね」
シアン&レオ
むしゃむしゃと小動物のように食べている
リア
「あれ?
テュエルは?」
ナイル
「そういえば……
大浴場で見たきりだね」
リア
「え、お風呂で会ったの?」
ロイロ
「えぇ。
もう鍛錬済みのようでしたよ」
リア
「あんなに強いのに……
まだ鍛錬を怠らないのね」
ロイロ
「現状を維持するのも、
さらに強くなるのも、難しいことです。
日々の積み重ねが大事だと、
よく理解しているのでしょう」
リア
「感心するわ」
シュン
「すごいよね。
蓋を開けてみると、とんでもない人だけど」
(レイラのことに関しては)
ナイル
「そこも、もはや個性だよねw
今ごろ、レイラちゃんに
朝のご挨拶でもしてるんじゃない?」
――――――――――――――
テュエル
「レイラ様、おはようございます^^
今日の朝食は、
レイラ様の大好きなお魚ですよ。
……もっとも、
レイラ様なら、すでに匂いで
献立を察していらっしゃるでしょうが」
「苦手な熱い汁は、
ちゃんとボクがフーフーして差し上げますからね^^」
「…………ですが……
あまり寝坊なさると……
冷めてしまいますよ?」
寂しげに、微笑むテュエル。
「……早く、起きてくださいね」
と、誰にも聞こえないほど小さく零した。
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