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双国ノ巫女 〜九尾の力を持つ雪女の姫は、戦場でその力を解き放つ〜  作者: Su
出会いと誓い――護衛テュエルとレイラの軌跡
25/66

二重覚醒――崩れる山と蘇生の口づけ


下敷きになったリアへ、皆が一斉に駆け寄る。


 


「せーの!」の掛け声と共に、力を合わせ、柱を退かす。

軋む重みが、ようやく地面へと戻る。


 


ロイロがリアを引き起こし、そのまま腕の中で仰向けに寝かせた。


 


シュシャ

「シュン!!!急げ!!!姫さまが!!!」


 


シュン

「リアッ!!!!」


 


 


リア

「……はっ……はぁ……っ、ゲホ……!!」


 


 


咳き込むたびに、赤が溢れる。

ロイロの腕越しに、その体温が急速に弱まっていくのが分かる。


 


呼吸が浅い。胸の上下が頼りなく揺れる。

瞳は焦点を失い、どこも見ていない。


 


シュン

「リア!!ダメだ、戻ってきて!!」


シュシャ

「リア様!!!!」


ナイル

「リアちゃん!!」


シアン

「リア!!!」


レオ

「リアっち!!!」


 


 


ロイロ

「……リア。

こんなとこで、俺たち、置いていく気か……

まだ……一緒に行きたい場所も、やりたいことも……

たくさんあるだろ……」


 



腕の中で呼びかける声にも、リアは応えない。


 


まぶたが、わずかに揺れるだけで――

意識は、すでに遠くへ沈みつつあった。


 


光が、静かに消えかけていく。




――その時。


 


妖の姿を解かぬままのレイラが、

重い足取りで地を引きずるようにして、リアの傍へ近づいた。



一歩ごとに、身体が軋むように揺れる。

それでも止まらず、まっすぐに。


 


レイラ

「……ロイロ……すまない……少し……」



ロイロは何も言わず、レイラへと視線を向ける。

腕の中でリアを強く抱きしめたまま、その身体を静かにレイラの方へと向けた。


 

制止する声を振り切り――

わずかに自らの唇を噛み、血を滲ませる。


レイラはリアへと顔を寄せ、静かに口づける。

溢れた血が、そのままリアへと流し込まれていく。


 


――青緑の、静かな光が、ほのかに滲むように広がる。



最初は微かな灯火のように。

やがて、呼吸に合わせるように、確かに脈打つ光へと変わっていく。

 


村人

「……この光……ミコト様……?」



レイラが、ゆっくりと唇を離す。


 

リアの喉が、小さく動いた。



リア

「……ぅ……」

 


――浅く、途切れかけていた呼吸が、わずかに繋がる。

 

一行

「!!!!!」



一瞬遅れて、理解が追いついたように、皆が同時に息を呑む。


ロイロ

「リア!!」


シュン

「リアー!!」

 


リア

「……ん……え……?

……私……?」


 


ロイロに強く抱きしめられる。

シュンが涙を堪えきれず怒鳴りながら泣き、

その場にいた者たちの力が一気に抜けていく。


 


少し離れたところで、ヤヒロが立ち尽くしていた。


 


視線を落としたまま、何度か口を開きかけては、言葉を飲み込む。

やがて、意を決したように一歩、また一歩とリアへ近づいた。



ヤヒロ

「姉ちゃん……ごめん……ごめんなさい……!」



声は震えていたが、その中には確かな安堵と、助かったことへの実感が滲んでいる。



リア

「……ヤヒロ……無事で……よかった……」


――その瞬間。


 


 


 …………………………ドサッ




起き上がるリアと引き換えに、

レイラの身体が、力を失ったように崩れ落ちる。


九尾として解放されていた気配が、静かにほどけていき――

獣の輪郭は消え、再び“人の姿”へと戻っていく。



テュエル

「レイラ様!!!」

 

ガシッ、と咄嗟に抱き止める。

地面に落ちる寸前で、その身体を大事そうに支え、ゆっくりと膝をつく。


 


レイラの頭を腕に抱え込むようにして、顔を覗き込む。



テュエルの表情が、わずかに強張る。

そして――静かに曇っていく。


 


テュエル

「……あなたは……いつも……そうやって……

 ボクの話を聞かず……

 一人で体を張って、無理をして…………

 傷ついて、倒れてしまう……

 ……ボクを……

 ……一人、置いて……」


 


その声は、いつもより低く、震えていた。


 


リア

「え…………………………」

「……レイ……ラ……?」




周囲にも、同じ空気が伝播する。

“助かった”はずの空間に、別の緊張がじわりと広がっていく。


シュン

「まさか…………………………

 そんな…………そんなことって……」



ロイロ

「……………ッ」



シアン

「………え………」



シュシャ

「そんな……!

 リア様を助けていただいたこと、

 まだ礼もできていないというのに……!!」


ナイル

「……………………」


肩がわずかに揺れそうになるのを、

ナイルはぐっと堪えていた。



ヤヒロ

「ひ……ひめ……さま……」


 


ヤヒロを先頭に、

倒れているレイラの周りへ、村人たちが集まり始める。


 


テュエル

「………近寄るな……」


 


その声に、

明確な殺気が混じる。


 


テュエル

「レイラ様は……

 決して、奪わせない……

 俺が……絶対に………………!!!」


 


――レイラの治癒力。

それは、決して知られてはならないもの。


 


過去一の気迫で、

テュエルは村人たちを威嚇する。


 


村人たち

「……………………………………」


 


村人

「専属護衛の……テュエル殿ですね…………

 噂通りの、お方だ……」


 

テュエル

「………………」


村人の言葉があっても、テュエルは警戒を緩めなかった。

レイラから一切意識を逸らさず、わずかに抱え直す。



その腕に、力がほんの僅かに込められる。



村人

「テュエル殿……姫さま……

 私どもの無礼を、お許し下さいませ…………………」


「姫さま…………

 せっかく………………

 帰ってきていただいたというのに…………

 このような姿に…………なってしまって……」


「うっ……うっ…………」


 


嗚咽を上げる者。

声を殺して泣く者。

堪えきれず、咽び泣く者。


 


その場は、悲嘆で満ちていく。


リア

「レイラ………………

 ……いや……

 戻ってきて…………!!」


 


「レイラ――――――――!!!!」


 


 


テュエル

「お静かにして下さい!!!」


 


一喝。


 


そして、ふっと声を落とす。


 


テュエル

「………………せっかく、

 お休みになられたところなのです。

 起きてしまいます……」


 


 


「……え?」


 


 


全員が、凍りつく。


 


 


リアが、恐る恐る覗き込む。


 


 


レイラ

「……すぅ……すぅ……」


 


 


リア

「……寝てる……?」


 


 


一瞬の沈黙の後――

村人含め全員が、崩れ落ちるように脱力した。


 

シュン

「……ほんと……心臓に悪い……」


ロイロ

「…ほんま、勘弁してくれよ……」


シアン

「……よかったけどね。」


ナイル

「……ぶはっw」



(いや、それは誤解するやつでしょテュエル君……)


 


肩を震わせながら、ナイルは笑いを堪えた。




――その時。


 



「大丈夫かーーー!!」




声と共に、双国の兵たちが駆け込んでくる。




再会の叫び。

抱き合う親子。

泣き笑いの声。


 


ヤヒロ

「……父さん……?」

 


少し離れたところから、男がゆっくりと歩み寄ってくる。

ヤヒロの前で足を止めると、静かにその頭へと手を伸ばした。



父の手が、頭に乗る。



ヤヒロ父

「……よく守ったな」



ヤヒロ

「……へへ……」



その光景を見つめながら、

リアは、静かに微笑んだ――。


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