夫二人が喧嘩するので、雪遊びに連れていきます
テュエルの胸へ頭を預けたレイラ。
テュエルはその重みを受け止め、
慈しむように静かに撫でる。
――その優しい時間の裏では。
テュエル(内心)
(あぁぁ……♡ レイラ様が俺に身を預けて……♡)
(これは……“OK”ってこと……ですよね……?♡)
(ですよね……?♡)
(今夜まで待てるわけ……ない……!!)
テュエルは1秒ごとに理性が溶けていく。
レイラは気づいていない。
そして謁見が終わり、二人は自室へ向かう。
回廊を歩くテュエルは完全にピンク脳。
テュエル(内心)
(ふふ……♡ 自室……♡ )
(扉閉めたら……♡ 扉閉めたら……♡)
(レイラ様……今すぐ……♡)
レイラ
(……さっきからテュエルの気配……妙に静かだな)
自室に入った瞬間、レイラは気づく。
視線が……熱い。怖いくらい熱い。
レイラ
「テ、テュエル……??」
テュエルは一歩近づき、低く囁く。
テュエル
「……レイラ様……
このまま……俺が……脱がしてさしあげます……」
目が完全に“獣”。
レイラ
(あ、まずい……これは……)
さらに一歩。
テュエル
「王の務めを果たしている時のレイラ様……
たまらなく……美しいんです……♡」
完全に痺れてしまっていた。
レイラ
「テ、テュエルッ……! 今夜だって言っ――」
遮るように、低く甘く。
テュエル
「……今が……いいんです……!」
押し倒される、ほんの一瞬前。
―― ガシッ。
誰かの腕がレイラを引き寄せた。
レイラ
「……!」
レイラをかばうように抱きしめ、
テュエルへ鋭い視線を突き刺す。
シャガル
「……猿。
何を……盛っておる。」
目で語っている。
(2夜連続は確かに禁忌だ)
(昨日のは……余も悪かったが……)
(しかしレイラに飛びつくのは許さん)
テュエルは微笑んだ。
しかし目は完全に死んでいる。
テュエル
「あぁ……やっと起きたんですね、シャガル。」
「ボクたち、もう王位継承まで済ませてきましたよ^^」
【昨夜はたっぷり楽しんだみたいだな?】
【お前のせいで妖界行きだ】
【取り決め破ったのはそっちだからな】
【レイラ様を返せ】
シャガルの眉がピクリと動く。
シャガル
「……ふん。
王位継承、か。」
そしてレイラに向き直り、
シャガルはレイラをさらに抱き寄せ
その瞳に熱を宿して静かに微笑む。
シャガル
「レイラ……余のために、よくやった。
礼を言う。……お前は余の誇りだ。」
少し目線を落とし、レイラの着物をゆっくり眺める。
シャガル
「その着物も……よく似合っておる。
昨夜も思ったことだが……
――惚れ直した。」
言葉が落ちるたび、声が低く、甘くなる。
昨夜の熱をまだ引きずっている目。
完全に“恋人を見つめる目”。
レイラ
「……っ……シャガル……」
胸の奥がぶわっと熱くなる。
ただ一人の女として“溶けさせられた”顔へ。
シャガル
「……レイラ。
今日はもう、余に任せて休め。
お前の体は……余が守る。」
テュエルの目がギラリと光る。
テュエル
「“夫”として守るのは……俺なんですけど?^^」
ピキリ。
バチバチバチバチバチバチ!!
空気が戦火の匂いに変わる。
シャガル
「夫は、もう一人おる」
テュエル
「……知ってますけど?^^
どっちが“本命”かは別でしょう?」
シャガル
「言うたな、小猿」
テュエル
「えぇ、はっきりと言いましたよ^^」
バチバチバチバチッッッ!!!
レイラ
(あぁ……頼む……
王位継承の余韻くらい……浸らせてくれ……)
こめかみに手を当て、完全に困り果てた顔
二人が殺意の視線を交わした、その瞬間――
レイラ
「――もういい。」
スッ。
レイラはシャガルの腕から静かに抜け出し、
テュエルの脇をすり抜け、
一点の迷いもなく二人の間へ歩み出る。
そして表情を切り替え、
無表情の“王の顔”になる。
レイラ
「喧嘩なら外でやれ。」
シャガル&テュエル
「……っ」
レイラ
「まずは――着替える。
少し待ってろ。」
女王の一声。
二人とも反論の余地なし。
◆ ◆ ◆
レイラはきゅっと袖を引き、
帯を解き、流れるように普段着を肩に羽織る。
そして壁をとん、と軽く叩いた。
レイラ
「テュエル、着付けてくれ。」
テュエルは瞬時にシャキッと背筋を伸ばし、
深々と頭を下げる。
テュエル
「かしこまりました♡」
彼は手際よく衣を整え、
紐を結び、帯を美しく締めていく。
指先は迷いなく、流れるようで、
シワひとつ許さない完璧さ。
レイラは無言でその手の動きに身を預け、
ただ静かに呼吸を整えている。
――その最中。
テュエルはふいに横目でシャガルを見る。
ゆっくり、にやりと、勝ち誇った笑み。
(……ふ。)
(これが“夫の務め”なんて軽いものだと思うなよ。)
(レイラ様の着付けも、化粧も、髪も……
すべて俺が“幼い頃から”やってきたことだ。)
(お前にできるか?
この、“レイラ様の世界を完結させる仕事”が。)
(この領域だけは……一生、追いつかれてたまるか。)
そのドヤ顔は夫というより、
完全に勝利を確信したまさに猿の顔である。
シャガル
(……くっ……猿め……)
(……だが、確かに……これは……
余では届かぬ領分……)
彼の視線は自然とテュエルの手元へ。
見れば、帯の締め位置も、重ねの角度も、息を飲むほど正確だ。
シャガル
(慣れすぎだろう、この猿……)
(シワひとつ無いとは……)
テュエルは最後の紐を結び終えると、
レイラの肩の曲線を軽く確認し、静かに手を離した。
テュエル
「……完了しました、レイラ様。」
レイラは頷くだけで、
その仕上がりの完璧さを当然のように受け入れる。
シャガル
(……くっ……猿の分際で……
だが確かに、仕上がりは……完璧……)
しかし、その認めたくない感情が
次の瞬間、完全に吹き飛ぶ。
レイラから手を離した直後――
まるで幻術のように、布がひるがえった。
テュエルは一切の無駄もなく正装の紐をほどき、
一歩、軽く回転しただけで――
バサッ
次の瞬間には、
いつもの護衛服に、完全に着替わっていた。
髪も揺れず、呼吸も乱れない。
ただ当然のように胸に手を当てて立っている。
シャガル
「………………は?」
目が本当に、点になる。
シャガル
(こ……こやつ……
人間か……?
着替えとは……そんな……一瞬で……)
テュエルは軽く微笑み、
シャガルにだけ意味深な視線を送った。
テュエル(目が語る)
(これが“レイラ様に仕える者”の基礎ですけど?)
シャガル
(は、腹立たしい……!!)
(しかし、速すぎて見えんかった……)
テュエルは一瞬で“護衛騎士モード”に。
テュエル
「レイラ様、準備できました♡」
レイラは二人を見比べ、
さっきまでの疲れ顔から一転——
にやり、と口角を上げた。
レイラ
「よし、行くぞ。
ここに二人を置いとくと……建物が壊れる。」
肩をくいっと掴み、
シャガルの腕を引きながら外へ。
シャガル
「ど、どこに行くのだ、レイラ?」
レイラはさらに楽しげに目を細める。
レイラ
「外だ。」
シャガル
「そ、外!? なぜ――」
レイラ
「お前たち……ずいぶん元気そうだからな?」
テュエル
「えっ」
レイラ
「今日は——付き合ってもらうぞ。」
にやり、と完全に“遊ぶ気満々”の顔。
シャガル&テュエル
「つ、付き合う……?」
レイラ
「雪が積もっている。」
「場所を変えれば、ちょうどいい“発散”になるだろう?」
その声音には、どこか弾むような嬉しさがあった。
テュエルは一瞬だけ固まる。
幼い頃から知っている。
——冬のレイラは容赦がない。
テュエル
(……また、あの無慈悲な雪玉が飛んでくる……
……いや……でも……)
その胸の奥で、小さく笑みが灯る。
(レイラ様が……一番楽しそうになる季節だ……
可愛い姿が見られるなら……悪くない……♡)
“覚悟”と“喜び”が同時に満ちる、あの独特の感覚。
シャガルは逆に、不思議そうに首をかしげた。
彼はまだ知らない。
レイラにとって“雪”がどれほどの遊び場になるのかを。
夫二人の温度差をよそに、
レイラだけがわくわくと歩を進める。
この日の二人にとって、長い一日のほんの始まりであることも知らずに。




