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双国ノ巫女 〜九尾の力を持つ雪女の姫は、戦場でその力を解き放つ〜  作者: Su
出会いと誓い――護衛テュエルとレイラの軌跡
18/67

故郷は滅んだはずだった――それでも王女は戻り、民は膝をついた


 階段を上がった、その先――


 武器を構えた兵士たちが、道を塞いでいた。


 兵士

「止まれ!!

 ソンゴル殿下の命だ。

 全員、始末しろとな……悪く思うな」


 無防備にレイラを抱えたままのテュエルへ、刃が向けられる。


 ――静止。


 誰も、動かない。


 兵士

「…………………………」


 兵士

「……テュエル……?」


 ざわり、と空気が揺れる。


 兵士たち

「待て……」

「じゃあ……その方は……」


 兵士たち

「…………………………

 レイラ姫……?」


 レイラ

「……皆の者……」


 その声だけで、場の空気が変わる。


  レイラ

「すまなかった……

 随分と……留守にしてしまったな……」


 沈黙。


 誰一人として、言葉を発せない。


 ――次の瞬間。


 かつて、リアを捕らえ――そして取り逃がしたあの時、レイラに刃を向けた兵士が、小さく震え出す。


 兵士

「ぁ……ぁ……」


 喉が、うまく動かない。


 兵士

「……だから……」


 脳裏に蘇る。


 あの時――


 なぜ、反撃してこなかったのか。

 なぜ、刃を受けたのか。

 なぜ――あの場で、自分たちを傷つけぬよう立ち回っていたのか。


 兵士

「……最初から……」


 声が、崩れる。


 兵士

「我らが……双国の者だと……」


 ――気づいていたのか。


 脳裏に、もう一つの記憶が重なる。


 あの直後――

 自分を殴り飛ばした、あの男。


 兵士(……だから……エール将軍……いや……テュエルに……)


 理解が、遅れて押し寄せる。


 兵士

「……っ申し訳……ございません……!!」


 カシャン――!!


 その一人を皮切りに、


 武器が、次々と地へ落ちる。


 膝が折れ、頭が垂れる。


  兵士たち

「お帰りを……!!」

「ずっと……ずっと……」

「お待ちしておりました……!!」


 嗚咽が、重なる。


 それは――


 一度はすべてを失ったと、思い知らされた者たちの声。

 王も、姫も失い、国の誇りすら踏みにじられた現実に、打ちひしがれていた者たちの――


 それでもなお、捨てきれなかった想いが、今ようやく報われた歓喜だった。


 レイラ

「……皆……頭を上げてくれ」


 静かに告げる。


 だが、その声には、揺らぎがあった。


 レイラ

「私には……

 そんな資格はない……」


 視線が、わずかに落ちる。


 レイラ

「お前たちを置いて……

 逃げ出した……」


 レイラ

「弱く……愚かな姫だ……」


 兵士

「何を仰るのですか!!」


 顔を上げる。


 涙に濡れた目が、真っ直ぐに向けられる。


 兵士

「逃げるのは当然です!!」

「あなたの命より、尊いものなどありません!!」


 兵士

「ご無事で……

 本当に……何よりです……!!」


 レイラ

「………っ」


 視界が、滲む。


 レイラ

「……もっと早く……

 動くべきだった……」


 レイラ

「皆……本当に……すまない……」


 兵士

「謝罪など、不要です!!」


 声が震える。


 それでも、強く言い切る。


 兵士

「再び……我らの上に立ち……

 率いてくださるのなら……!!」


 空気が、張り詰める。


 全員の視線が、レイラへと集まる。


 レイラ

「……そのために……」


 静かに、息を吸う。


 レイラ

「覚悟を決め……

 戻ってきた……」


 それが何を意味するのか――


 凱帝国に刃を向けること。

 ソンゴルと、決定的に敵対すること。


 そのすべてを、レイラは理解している。


 それでもなお――選んだ。


 一拍。


 そして――


 歓声が、爆発する。


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


 ――帰ってきた。


 ようやく。


 故郷へ。


 その帰還が意味するものを、兵士たちも理解していた。


 それは、王の帰還であり――

 同時に、敵との決別。


 歓声は、しばらく鳴り止まなかった。



 そして――


 テュエル

「では……双国上層部、

 リュウコの地へは……」


 テュエル

「あれ以来、向かわれていないのですね?」


 レイラ

「あぁ……」


 短い返答。


 だが、その奥にあるものは、重い。


 思い出すから――では済まない。


 足が向かなかった理由は、それだけではない。


 テュエルは、それ以上を問わない。


 ただ、理解している。


 テュエル

「……なら、向かいましょう」


 迷いはない。


 レイラ

(……?)

(城はもう、ないはずだが……)


 わずかな違和感。


 ――だが。


 テュエル

「各自、支度を。

 双国の者かどうか、必ず確認しろ」


 その声に、兵士たちが即座に反応する。


 誰もが、その指示に従うことを当然としていた。


 肩書きはなくとも、

 その実力と統率力は――将軍に等しい。


 兵士たち

「ハッ!!」


 レイラ

「………………」


 わずかに、視線が揺れる。


 リュウコ。


 かつての全てが、あった場所。


 テュエル

「……ご安心ください」


 声が、柔らかく落ちる。


 テュエル

「ボクも…一緒ですから^^」


 レイラ

「うん……」


 わずかに、頷く。


 レイラ

「リア……」


 視線を向ける。


 レイラ

「皆も……来てくれないか」


 レイラ

「礼がしたい。

 ゆっくり……話もしたい」


 リア

「ええ」


 静かに微笑む。


 リア

「あとで……たくさん話そう」


 馬が用意される。


 一行は、砦を後にする。


 その道中――


 レイラは、テュエルの腕の中で、


 静かに、目を閉じた。


 張り詰めていたものが、ほどけていく。


 抗うことなく、


 そのまま――


 深い眠りへと落ちていった。


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