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妻を着飾りたい妖王と隠したい護衛がジャンケンで真剣勝負をしています


レイラは、並べられた浴衣の前で腕を組み、ため息をついた。

「……多すぎる……」


淡い色、華やかな柄、落ち着いた色。

どれも村の女性たちが、嬉々として用意してくれたものだ。


「レイラ様でしたら、こちらが――」

テュエルが、迷わず一枚を手に取る。涼やかな藍色に、控えめな花模様。


「……地味すぎないか?」

横から、シャガルが低く口を挟む。

「祭りだぞ。もっと――こう……華があった方がいい」


「護衛としては、人混みで目立ちすぎるのは避けるべきです」

テュエルの声には、冷静な緊張感が混ざっていた。


「……つまらん男だな」

シャガルの口調は、明らかに苛立ちを含む。

「こんなに美しい女を着飾らせないなど、もったいないだけだ」


「……気持ちはわからなくはありません」

テュエルはさらに踏み込む。

「しかし、こんなに美しいレイラ様を他の男に見せるなど、もったいない。見るのは――ボクだけで十分だ」


シャガルは眉をひそめる。

「ふん……目立とうが、余らが護ればいいだけだ。祭りで楽しむことを拒む理由にはならん」


火花が、廊下にまで漂うような緊張感。

レイラは、思わず頭を抱え、苦笑するしかなかった。

「……もう、なんでもいい……」


しかし二人は同時に黙ることはなく、互いを睨みつけ――

「ダメです!ダメだ!」


レイラはうんざりしながらも、頭を抱える。

「……もう……ジャンケンで決めろ……」


結局、勝負はジャンケンに持ち込まれた。

「……よし、余の勝ちだ」

シャガルの声で、浴衣の決定権は決まった。


テュエルは、悔しそうに眉をひそめる。

「……仕方ありませんね……」


レイラは、二人の火花散らすやり取りを見て、心の奥で小さく笑った。

(……二人とも、全然大人にならないな……)

(……まるで花火だ……)


―――――

 着付け

―――――


テュエルが慎重に一枚を手に取り、手際よく浴衣を整える。


帯を巻き始めるとシャガルが、低く口を滑らせる。

「……この帯、まるでお前のために作ったかのように似合っておる」


レイラは思わず背筋を伸ばす。

「…そ、そうか?」

(…恥ずかしい)


テュエルは髪を整えながら、後れ毛に目を留める。

「レイラ様……この後れ毛がまた、いい味を出しておりまして……艶やかで、魅惑的です……」


「……………っ」

(…もういい///)


シャガルも横から低く囁く。

「ふ……この髪の流れ、余が整えたわけではないが……実に余の好みだ」


テュエルも負けじと、真剣な表情で囁く。

「……レイラ様……美しすぎて、目が離せません……」


レイラは手で顔を覆い、思わず小さく震える声。

「……もう…!もう、もういい!!やめてくれ!!////」


二人は、まるで甘やかな攻防戦を繰り広げるように笑みを零す。


ようやく髪も帯も整い、祭りへ向かう準備は完了。

頬は真っ赤、心臓は早鐘のように打っている。


三人は揃って城門を出る。


――――


三人が村に現れると、

広場にいた人々のざわめきが一瞬止まった。

――まるで、世界が一瞬止まったかのようだ。



背筋の伸びた姿、整った顔立ち、

そして揃った華やかな浴衣。

その三人の佇まいは、村の祭りの喧騒を忘れさせるほどの圧倒的な存在感を放っていた。


子どもたちは目を丸くし、

大人たちは思わず立ち止まる。

その視線を一身に浴びながら、レイラは少し照れくさそうに肩をすくめた。


背後では、火花を散らす二人の男の視線が交錯していた。

だが、誰もが息をのむ――三人の輝きの前では、争いも祭りも、すべてが霞むかのようだった。


村の広場。賑やかな太鼓と笛の音。

三人は注目を一身に集め、レイラは少し顔を赤くしながらも目を丸くしていた。


まずは射的屋台。


シャガルが低く息を吐く。

「ふ……レイラ、なにがほしい」

「余に任せよ」

弾を打ち出すが、的はびくともしない。


レイラは眉をひそめる。

(……効いてないな……)


そこへ、横からポン、と軽やかな音。

「はい、レイラ様^^」

テュエルが一発で的を倒す。


シャガル、顔を真っ赤にして叫ぶ。

「まぐれに決まっておる! もう一回だ!!」

しかし、何度やっても落ちない。


ついには屋台の店主に文句を言い始める。

「裏で細工しておるな?!」


その刹那――


また横からポン、と音がする。

テュエル、淡々と笑みを浮かべて言う。

「レイラ様…こちらをどうぞ^^」

差し出された景品に、レイラは思わず小さく笑う。


シャガル、唇を噛みしめる。

「………」


テュエル、静かにドヤ顔。

「……………ふw」


レイラは手で口元を押さえつつ、

思わず笑いをこらえる。

(笑ってはいけないが……)

(テュエルは…)

(…ほんと、なんでもできるな……)



金魚すくいでも同じ展開。

シャガルが楽しそうに器を掬うが、テュエルは一瞬で金魚をすくい上げ、見事にレイラの手元に置く。


シャガルは悔しさで震える。

「……な、なぜだ……!!」


結局、輪投げでもテュエルが完勝。

レイラは楽しそうに目を輝かせる。


シャガルは、火花散らす戦いに敗北したものの、

次の作戦に出る。

屋台の食べ物を手に取り、

レイラが好むものを瞬時に選び出す。


「レイラ!!」

「お前はこれが好きだろう?!」

「…これで……どうだ……!」


差し出すその必死な笑顔に、

レイラは思わず顔を赤くしてしまう。

(こういうところ、かわいいんだよな…)


テュエルはそれを見て、静かに眉を上げる。

(……あのバカ殿………)

(違う勝負に逃げやがったな……)


レイラは心の中で小さくつぶやく。

(……ああ……もう……)

(二人とも……本当やめて……////)


三人の祭り序盤戦は、こうして火花と笑いに満ちたまま進んでいった。



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