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妖王に惚れた瞬間を知られた結果、ご褒美キスを頂きました


しばらく、静かな時間が流れた。


障子越しの光が、

ゆっくりと二人を包んでいる。


レイラは、ふと視線を上げてテュエルを見る。


「……テュエル」


名前だけで呼びかける。


テュエルの肩が、わずかに揺れた。


「……レイラ様」


やはり、様は外さない。

外す気など、最初からないのだろう。


それが、なぜか少し可笑しくて――

少しだけ、嬉しかった。


一瞬、間が空く。


テュエルは困ったように視線を逸らし、

それでも、はっきりと答えた。


「……名前は、呼びます」


「ですが……様は、外せません」


即答だった。


レイラは、思わず小さく笑う。


「……頑固だな」


「はい^^」


迷いのない声。


レイラは、少しだけ真面目な表情に戻る。


「未来のことは……」


「一緒に、決めよう」


「もう、一人で背負うな」


その言葉に、

テュエルの胸が、きゅっと締めつけられる。


「……はい」


短い返事。

だが、その中には確かな決意があった。


レイラが噛み締めるように目を伏せる


「……夫婦、なんだな……」


「ずっと一緒だったのに……」


「いや……」


「ずっと一緒だったから…」


「尊いと、気づかなかったんだな……」


「レイラ様……」


 テュエルは胸が熱くなるのを感じる


――その瞬間。


テュエルは、

自分でも驚くほど強く、衝動に駆られていた。


抱きたい。

今すぐに。


この人を、確かめるように。


少し距離を詰めかけて――


「……………!」


「…………だめだ」


レイラが、すかさず言う。


「首が……まだ痛む」


ぴしっと、手で制止。


「……っ」


テュエルは、理性と本能の狭間で固まった。


「……失礼しました……」


本気で反省しているのが、丸わかりだ。


その様子に、レイラはふっと表情を緩める。


「……代わりに」


「少し……一緒に、寝よう」


そう言って、布団を軽く叩く。


テュエルは一瞬ためらい――

それでも、そっと隣に横になる。


次の瞬間。


レイラは、迷いなく――

テュエルを抱き寄せた。


完全に、抱き枕。


「……っ?!♡」


「動くな」


「今は……これでいい」


テュエルの体は、完全に硬直している。


(……心臓が……もたない……)

(逆に……拷問では……?!♡)


(あと何回殺す気なんだ…………)


そんな彼に、

レイラは静かに、言葉を落とした。


「……なあ、テュエル」


「お前の中に、入った」


「潜在意識、というやつだ」


テュエルは、驚きながらも黙って聞く。


「私は……」


少しだけ、声を落として。


「お前に、愛していると言って」


「……抱きしめた」


一瞬の沈黙。


そして、

テュエルは小さく、息を吐いた。


「……やっぱり」


「そんな気が、していました」


レイラは、くすりと笑う。


「そうか」


しばらくして、

今度はテュエルが、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「……実は」


「意識が戻り始めたのは……」


一拍。


「シャガルのおかげでも、あります」


レイラの腕の中で、

彼は静かに続ける。


「あいつは……」


「必死に、俺の想いを受け止めて」


「攻撃も……全部、受け止めて」


「ずっと……語りかけてくれていました」


それは、認めたくなかった過去で、

それでも、否定できない事実。


レイラは、何も言わず――

ただ、腕に少しだけ力を込めた。


二人の関係も変わってきている……

それが…感じられて…複雑ながらも

嬉しかった。 



昼の光の中。


二人は、静かに寄り添う。


まだ、すべてが解決したわけではない。


だが――

確かに、ここから始まっていた。


夫婦として

三人の関係としての

第一歩が。



――――


レイラは、いつの間にか眠っていた。


温かくて、安定した体温。

腕の中にあるはずの、慣れた気配。


――だが。


ふと、意識が浮上する。


(……?)


少し、違う。


腕の中の匂いが、感触が、

ほんのわずかに――違う。


レイラは、ゆっくりと目を開けて。


「…………」


至近距離で、目が合った。


「……目が覚めたか」


穏やかに微笑む、シャガル。


「――――なっ!?///」


レイラは飛び起きる。


「……テュエルは??!」


「余が呼ばれた」


あっさり。


「……あいつがな」

「“そろそろ代わるか”と」


「気を利かせた、らしい」


「…………」


状況を理解した瞬間。


(テュエル……)

(あの男……!!)


怒るべきか、

照れるべきか、

殴るべきか。


シャガルは肩をすくめる。


「安心しろ」

「怪我をしているのは知っておる」

「手は出しておらん」


「抱き枕の役目を、引き継いだだけだ」


「……誰が引き継げと言った……」


髪をかき上げ、困ったように視線を逸らす。

だが――

どこか、安心している自分に気づいてしまう。


レイラは、観念したように息を吐いた。


その様子を、シャガルはじっと見ていたが――

ふと、思い出したように口を開く。


「……レイラ」


低く、穏やかな声。


「一つ、聞いてもいいか」


レイラの肩が、わずかに強張る。


「お前の潜在意識を見た」

「余は――確かに、そこにいた」


逃げ場のない事実。


「夕焼けの庭」


レイラは、びくりと肩を震わせる。


一拍。


「あれは……何だ?」


「…………」


言葉が、出ない。


レイラは、視線を逸らした。


(……終わった……)


喉が、鳴る。


「……な、なんだとは……?」


シャガルは急かさない。

ただ、逃げ場を残さぬ距離で、見つめる。


「…………」

(……逃げたい……)


小さく、絞り出すように。


「……こ、心を……動かされた、光景だ」


それだけで、

十分すぎる答えだった。


シャガルは、ふっと目を細める。


「……なるほど」


――だが。


それで終わらなかった。


「……そういえば」


何気ない調子で、続ける。


「余の頬を、触ったな」


「――っ!?///」


レイラの体が、びくりと跳ねる。


「なぜだ?」


静かで、逃げ道のない声。


「無意識、という言い訳は」

「もう、使えぬぞ?」


「ち、違っ……!」

「そ、そんなつもりで……!」


「ほう?」


ずい、と距離を詰める。


「ではなぜ」

「あんな顔で、触れた?」


「~~~~っ!!///」


耳まで赤くなるレイラ。


「……余の顔が、好きか?」


「なっ……!?」


シャガルは、楽しげでもなく、

ただ事実を確かめるように言う。


「お前のその反応が」


一拍。


「罪だな」


「や……やめろ……!」



「かわいいな」


淡々と、容赦なく。


「そ、そんなつもりだったわけじゃない……!」


必死な抵抗。


だが――

シャガルは、すでに満足そうに目を細めていた。


「分かっておる」


即答。


「だが」


間を置いて、低く。


「遅い」


その一言で、

レイラの思考は、完全に止まった。


「――――っ」


言い返す言葉も、

逃げる準備も、

全部、間に合わない。


シャガルは、ほんの一瞬だけ迷うように視線を落とし

――


それから、静かに距離を詰めた。


「……頑張った褒美だ」


低く、冗談めいた声。


「一つだけだぞ」


「――なっ……!?」


止める暇もない。


指先が、そっと顎に触れ、

逃げ場を作らないまま――


唇が、重なった。


深くない。

奪うようでもない。


ただ、確かめるように。

短く、静かに。


けれど――

はっきりと、意志のある口付けだった。


「……っ!!///」


レイラは、完全に固まる。


シャガルは、すぐに離れた。


ほんの一瞬の出来事だったかのように、

何事もなかった顔で。


「これ以上は」


肩をすくめる。


「余が、止まらぬ」


「…………」


何も言えないレイラ。


耳まで、首筋まで、真っ赤だ。


「……そんな顔をするな」


くつり、と小さく笑う。


「今回は、ここまでだ」


そう言って、布団からゆっくりと離れながら――

最後に、ぽつり。


「よく、耐えたな」


それが

誰に向けた言葉なのか、

言わなかった。


レイラは、布団に沈み込みながら、


(……シャガル……)


(……ほんとに……ずるい……)


心臓の音が、

いつまでも、うるさかった。


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