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また会う日まで――約束で結ばれた別れ

あっという間に、煌龍国での滞在は過ぎていった。

語り合い、笑い、時に心をさらけ出し――

気づけば、旅立ちの日を迎えていた。



城門の前には、すでに馬車が用意されている。


朝の空気は澄みきっていて、

昨夜の賑わいが嘘のように、静かだった。


一人、また一人と、

見送りに集まった顔ぶれが揃っていく。


ロイロは腕を組み、いつもの調子で口を開いた。


ロイロ

「もう行くのかよ。早いな」


レイラ

「あぁ……あっという間だったな」


シャガル

「長居する気はない」


「……だが、悪くはなかった」


それだけで、

ロイロは小さく笑った。



ナイルは相変わらず、にこにこと手を振る。


ナイル

「また来てね♡

 次はもっと平和な理由でさ」


レイラ

「ナイル……色々と世話になったな」


ナイル

「いいんだよ♡

 シャガル様?

 またお酒飲みましょうね♡」


シャガル

「ふん……考えておこう」


素っ気ない返事。

だが、拒絶の色はなかった。



レオは肩をすくめる。


レオ

「ま、三人とも達者でな。

 鬼の王様、姫姉ちゃんと仲良くな♡」


シャガル

「貴様もな」

「次に会う時まで、死ぬでないぞ」


レオ

「ははは、しばらく死ぬ予定ないからw」



シアンは少し距離を置いたまま、

三人をじっと見つめてから、短く言った。


シアン

「……またね、レイラ……シャガル……テュエル」


シャガル

「あぁ」


レイラ

「シアンもな」


テュエル

「はい。お世話になりました」



リアとシュシャの前で、

シャガルは足を止めなかった。


視線だけを向けて、それ以上は何も言わない。


シュシャも、黙っている。


リア

「ふふw シャガル、元気でね」


シャガル

「……ふん」


シュシャ

「貴様!最後の最後までリア姫さまに無礼だぞ!

 少しは礼儀というものを――」


言いかけた、その時。


シャガル

「世話になったな」


リア・シュシャ

「!」


リア

(ふふ……少しだけ、仲良くなれた……かな?)



ポルを肩に乗せたシュンが、一歩前に出る。


少し緊張した顔。

それでも、背筋はしっかり伸びていた。


シュン

「……気をつけてね!レイラ!」

「何かあったら、また連絡してよ!」

「俺……駆けつけるし!」


「絶対、力になる……!!」


レイラ

「……シュン……」


一歩、近づく。


以前は、頭に手を置くだけだった。

だが、今回は違った。


頭のてっぺん――

そこに、そっと口づける。


それは、

信頼の口付けだった。


シュンは顔を真っ赤にして、

「ず……ずるいよ……」と、精一杯言う。


その顔を見て、

レイラは少し照れながら、心からの感謝を滲ませた。


「本当に……ありがとう、シュン」


テュエルとシャガルは、

複雑そうにしながらも、どこか微笑ましげにその光景を眺めていた。


そしてシャガルは、一瞬だけシュンを見て


シャガル

「世話になった」


短く、しかし確かに。

それだけで、シュンは小さく息を吐き、静かに頷いた。


テュエル

「また会いましょうね」


そう言って手を差し出すと――


シュンの肩に乗っていたポルが、ぴょん、と軽やかに跳ねる。


そのまま、テュエルの肩へと移り、


「もきゅ」


名残惜しげに、小さく鳴いた。


テュエルはくすりと笑い、そっと撫でる。



最後に、リア。


リア

「レイラ……」


「もう、大丈夫よね?」


レイラ

「リア……本当に世話になった」


「弱く、情けないところばかり見せてしまった」


リア

「ふふ、気にしないで」

「いろんな顔のあなたを見れて、

 ……すごく嬉しかったの」


「次は、もっと気楽に“恋バナ”しましょ♡」


レイラ

「恋……バナ……?」


リア

「ふふw」


 テュエルとシャガルを見る。


リアは、二人を交互に眺めてから、

わざと少しだけ悪戯っぽく、

けれど真剣な声で言った。


「レイラを泣かせたら……」

「私が、連れ去っちゃうからね?」


冗談めいているようで、

その瞳には、一切の冗談がない。


テュエル

「なっ……!!

 リ、リア様……!」


反射的に声を荒げるテュエル。


シャガル

「はぁ!?

 余の妻を、どこへ連れて行く気だ!」


二人の反応に、リアはくすっと笑った。


「……大丈夫」

「ちゃんと分かってるわ」


そして、少しだけ声を落とす。


「二人とも」

「それぞれのやり方で」

「ちゃんと、レイラを想ってるって」


一拍置いて、柔らかく。


「だから――」

「三人で、仲良くね?」


その言葉に、

テュエルは一瞬戸惑ってから、深く息をついた。


テュエル

「……もちろんです」


守る者としての、まっすぐな返事。


シャガルも、鼻で小さく笑い、腕を組む。


シャガル

「無論だ」

「余が、その中心に立つ」


いつもの傲慢さ。

けれど、その奥には、確かな覚悟があった。


リア

「あははw」

「レイラ、いつでも逃げに来てね?♡」


 テュエル&シャガル

「………………っ」

 (こンのアマ)

 (こンの女童)


二人の殺気など意に介さず、

リアは楽しそうに微笑んでいる。

 

その笑顔を見て、

レイラは胸の奥が、じんわりと温かくなるのを感じる。


(リア……本当に……ありがとう……)


言葉にしなくても、

その想いは、きっと伝わっている。



馬車に乗り込む前、

シャガルはふと足を止め、振り返った。


シャガル

「また会おう」


それは命令でも、宣言でもない。

ただの、約束だった。


レイラ

「最長でも――一年後だ」


そう言って、手を振る。


シャガル

「その時まで」

「この国を、守っていろ」


冗談めいた口調。

だが、そこに込められた信頼は、誰の目にも明らかだった。


テュエルは一歩前に出て、

深く、深く、頭を下げる。


テュエル

「皆様、大変お世話になりました」

「また、お会いしましょう」


その背中には、

この地で得た覚悟と責任が、はっきりと刻まれていた。


馬車の扉が閉まる。


がたん、と小さく音を立てて、

車輪がゆっくりと回り出す。


「またなー!」

「元気でー!」

「次は一年後だぞー!」


声が、重なり、遠ざかっていく。


城門が、少しずつ小さくなり、

やがて、人影も、声も、視界から消えた。


それでも――

別れは、決して冷たいものではなかった。


再会を、疑わない別れだった。


 ――


揺れる馬車の中。


シャガルは、珍しく口数が少なかった。

外を見つめ、何かを考えている。


レイラは、何も言わない。

ただ、その余韻に身を委ねている。


隣に座り、

その横顔を、そっと見る。


(……静かだな)


思うだけで、口には出さない。


テュエルもまた、黙っている。


だが、その沈黙は、不安ではなかった。

すべてを伝え、すべてを受け取った者の沈黙だった。


馬車は、国境へ向かって進んでいく。


誰も言葉にしないまま、

それぞれが胸の内で、

ひとつの夜を、確かに越えたことを感じていた。


煌龍国は、もうすぐ視界から消える。


けれど――

そこで得たものは、確かに、ここにあった。

 

 

 

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