9 冒険者になる前に冒険者と揉めるな
朝の柔らかな光が街を照らす中、僕たち三人は石畳の道を歩いていた。
朝起きて思ったことがある。
昨日だけならいいかと思ってたけど、よく考えたら登録に一日って長くない?
「フェア、ギルドの登録って何するの?」
隣を歩くフェアに尋ねる。
「試験」
「え?」
思わず足が止まりそうになった。
おい、ノー勉で試験は無理だって。
「僕、なんにも勉強してないんだけど」
「大丈夫。実技だから」
フェアは振り返りもせず、あっさりと言う。
そういう問題じゃねぇよ。
しばらく歩くと、大きな建物の前でフェアが足を止めた。
「着いたよ」
重厚な木の扉を押し開けると、木の軋む音と冒険者たちのざわめきが一気に耳へ飛び込んでくる。
壁一面には依頼書が貼られた掲示板が並び、冒険者たちは依頼を吟味したり、仲間と話し合ったりしていた。
受付へ向かうと、女性職員が笑顔で迎えてくれる。
「ようこそギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルド試験を受けたいんですけど」
「かしこまりました。担当者をお呼びしますので、少々お待ちください」
職員が奥へ向かっていく。
……なんか、めっちゃ視線を感じる。
周囲を見回すと、何人もの冒険者がこちらを見ていた。
年齢のせいか。
しばらくすると、一人の職員が戻ってきた。
「お待たせしました。試験内容は薬草採取になります。準備ができるまでエントランスでお待ちください」
「はい」
僕たちはエントランスへ戻り、並んだ椅子へ腰を下ろした。
試験について話していると、奥のテーブルを陣取っていた三人組の冒険者が立ち上がり、こちらへ歩いてくる。
「おいおい、見ろよ。ガキが迷い込んでやがる」
「ギルドは幼稚園じゃねぇぞ?」
「俺が子守でもしてやろうか」
男たちはニヤニヤと笑っている。
すると、それまで黙っていたマキナがゆっくりと口を開いた。
「本当の子守したことないのに、私たちの子守できるの?」
おい。
今日初めてしゃべったと思ったら、それかよ。
このままじゃまずい。
場を収めなければ。
「大丈夫ですよ。男は四十からが本番ですから。その頃には子守もできます!」
一瞬、空気が止まる。
男の額に青筋が浮かんだ。
「……ガキが」
剣が勢いよく抜かれる。
「凍縛鎖」
魔法陣が展開され、氷の鎖が男の身体へ絡みついた。
鎖は一瞬で全身を縛り上げ、男は身動き一つ取れなくなる。
「大丈夫? 二人とも」
フェアがこちらへ歩いてくる。
「ありがとう」
「やばい人を煽ったら、こうなるに決まってるでしょ」
そう言って小さくため息をついた。
「そうだよ、マキナ」
「ごめん」
「ニア君もだよ!」
「え、僕も?」
騒ぎを聞きつけたギルド職員が慌てて駆け寄ってきた。
「な、何事ですか!?」
僕は事情を説明した。
もちろん、自分たちに都合のいいように。
「そんなことが……。すぐに職員が対応しますので、ご安心ください」
「お願いしまーす」
よし。
隣でフェアが呆れたように僕を見る。
「よくもまぁ、そこまで都合よく話を変えられるね……」
「まぁね」
読んでいただきありがとうございます。
なんでもいいので感想、評価をいただけたら嬉しくて嬉しくて震えます。
なんで旅行日に限って天気が悪くなるんですかね。
でもこっちのほうが深く記憶に刻まれる気がします。




