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デウス・エクス・マギア ~模写魔法の発動条件がTS(性別逆転)だったので隠れて使います~  作者: 星乃 緋咲
2章 ヒナサ村救出編

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10/25

10 薬草採取に来ただけなのに

 

 「皆さん、準備はお済みでしょうか?」


 受付カウンターの向こうで、ギルド職員が穏やかな笑みを浮かべながら問いかけた。


 受験者たちが頷くのを確認すると、静かに説明を始める。


 「それでは、これより試験を開始します。内容は薬草採取です」


 職員は手元の帳面へ目を落としながら続けた。


 「指定の薬草《ダミクド草》は南の森で採取できます。五株以上、状態の良いものを採取してください。採取の際は根を傷つけないよう注意を。また、森では野生の魔物も確認されています。戦闘は極力避け、安全を最優先してください」


 一度顔を上げ、受験者全員を見渡す。


 「もし薬草が見つからない場合や生育場所が分からない場合は、森の入口にあるヒナサ村へ立ち寄ってください。村の方々は森に詳しいので、採取に適した場所を教えてくださると思います」


 説明を終えると、依頼書が一人ずつ手渡された。


 「それでは、どうかお気を付けて。皆さんのご健闘を心よりお祈りいたします」


 一礼する職員へ軽く会釈を返し、僕たちは南の森へ向かった。


 ◇ ◇ ◇


 「ねぇ、薬草ってどんな草なの?」


 歩きながら尋ねると、フェアは依頼書を広げる。


 「えーっと……ダミクド草。特徴的な強い香りを放つ。抗菌・解毒の効果に優れているため治療薬の材料として使用される。葉はハート形で、夏になると小さな白い花を咲かせる。野山や道端の湿った場所に自生し、生命力が強く簡単には枯れない。伝説によれば、悪霊祓いや呪詛返しの儀式にも使われたことがある……だって」


 「へぇ」


 「とりあえず湿った場所を探しましょう」


 「いや、最初に行くのはヒナサ村でしょ」


 「え? なんで?」


 「聞いたほうが早いから」


 「まぁ、そうね……」


 馬車に揺られるうち、窓から流れ込む空気は街とは違う緑の香りを帯び、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。


 「あれじゃない? ヒナサ村」


 森の縁には、丸太の柵に囲まれた小さな村が見えてきた。


 「ここからは徒歩だ」


 御者が手綱を引くと、馬がゆっくりと足を止める。


 車輪の軋む音が止まり、静かな森の音だけが耳に残った。


 三人は礼を言って馬車を降りる。


 「あ、ちょっと僕、お花摘みに行ってくるから先に行ってて」


 「うん、わかった」


 「あ、ごめんごめん。紛らわしかったね。トイレ行ってくる」


 「分かってるわよ! あと、これから摘みに行くのは花じゃなくて草だから! うまいこと言ったみたいな顔しないで!」


 「そんなつもりないけど」


 僕は森の方へ歩き出し、マキナとフェアは村へ向かった。


 ◇ ◇ ◇


 「マキナちゃん」


 「ん?」


 「マキナちゃんって、エルフだったりする?」


 「え? 人間だけど。なんで?」


 「いや、その……か、かわいいから」


 フェアは視線を逸らした。


 マキナは首を傾げたまま、不思議そうな表情を浮かべる。


 「あ、ほら。もう着くよ」


 「うん」


 木製の門の前には、槍を携えた門番が一人立っていた。


 「すみません。今ギルドの試験でダミクド草を探してるんですけど、この辺で生えている場所って分かりますか?」


 門番は二人を一瞥すると、短く答える。


 「入れ」


 「え? いや、まだ――」


 言い終わるより早く腕を掴まれ、そのまま村の中へ引き入れられる。


 「ちょっ、待って!」


 背後で重い門が勢いよく閉まった。


 ガンッ――


 「大丈夫? マキナちゃん」


 「うん」


 フェアは閉ざされた門を見つめ、小さく息をつく。


 「仕方ないか。ニア君が来るまで、この辺で待ってよう」


 「うん」


 

読んでいただきありがとうございます。

なんでもいいので感想、評価をいただけたら嬉しくて嬉しくて震えます。


うれしくて震えるのであって会いたくて震えてるわけではありません。

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