8 異世界の屋台は衛生観念も異世界
祭りは熱気に包まれていた。
軒を連ねる屋台からは香ばしい匂いが漂い、絶え間なく呼び込みの声が飛び交う。
人々だけでなく、獣人など様々な種族が思い思いに祭りを楽しんでいた。
「二人とも、気になるものがあったら言ってね」
「わかった」
僕は綿菓子を頬張りながら答える。
「わかった」
マキナは、いつの間にか見たこともない食べ物を食べていた。
二人とも、いつの間に買ったんだよ……。
「あれなに?」
マキナが屋台の方を指差す。
「うん?」
看板には『魔法の射的屋』と書かれていた。
「やってみたい」
屋台には動き回る謎の人形や、作り物のスライム、光る宝石のような景品まで、様々なものが並んでいる。
「らっしゃい! 一回六発、銅貨五枚だよ!」
「一回だけお願いします」
「お嬢ちゃん、魔法の射的は初めてかい?」
「ない」
「よし、じゃあルール説明だ! さて、君が今手にしているこの杖。これは『撃てば当たる』と思ったら大きな誤解だ。当たるかどうかは姿勢、呼吸、精神状態、昨日の睡眠時間、そして何より『覚悟』に左右される。次に立ち位置だが――」
マキナは店主へ杖を向けた。
パァン!
凝縮された光弾が店主の首へ綺麗に直撃する。
「うおおおおっ!」
吹き飛んだ店主は景品棚へ激突し、そのまま盛大に崩れ落ちた。
「ちょっとぉ! なにしてるのマキナちゃん!」
「パーフェクトゲーム」
「いや、『パーフェクトゲーム』じゃないから!」
崩れ落ちた店主が、ゆっくりと上体を起こす。
「だ、大丈夫ですか?」
マキナは満足そうな顔で店主へ手を差し伸べた。
「……話はまだ終わってねぇが、勝負は終わったな……見事だ。全部持っていきやがれ……」
「いらない」
フェアは二人の手を掴むと、その場から全力で走り出した。
「すいませーん!」
「ちょっとマキナちゃん! いくら射的用で威力が抑えられてる杖だからって、人に向けちゃ危ないでしょ! ていうか当ててるし!」
「いや、うるさい奴がいたら首を撃ち抜けってニアに言われたから」
「ニアくんは一体なに教えてるの!」
「僕、喉乾いた」
「綿菓子ばっか食べてるからでしょ!」
しばらく屋台を歩いていると、通りの端に妙な店を見つけた。
紫色の布で覆われた小さなテント。その入口には、怪しげな文字で大きくこう書かれている。
『あなたの前世、占います』
「ニアくん、やってみよ!」
「え……本当に金の無駄」
フェアが興味津々といった様子で看板を覗き込む。
「ちょっと!老人のスピに付き合ってる暇なんてないんだけど!」
話を聞かずにマキナとフェアはテントの中へ入っていった。
「もう!」
中には小さな丸机が一つ。その向こうに、黒いローブを纏った老婆が座っていた。
机の中央には、淡い紫色に光る水晶玉が置かれている。
「ようこそ。過ぎ去りし魂の記憶を覗く館へ……一人銅貨三枚。水晶に手を置けば、その者の魂に刻まれた前世が映し出される」
うわ……
フェアが目を輝かせる。
「面白そう! 私からやっていい?」
「どうぞ」
フェアが水晶玉に手を置く。
すると水晶の中に白い靄が広がり、ぼんやりと何かの姿が浮かび上がった。
老婆が目を細める。
「ほう……お嬢ちゃんの前世は……」
僕たちは水晶玉を覗き込んだ。
「……羊だね」
「羊?」
「羊」
「私、羊だったの?」
「しかも結構毛並みがいい」
絶対髪が白いから適当に白い動物言っただろ。
「へー、私羊だったんだ」
フェアは僕の肩を押した。
「次、ニア君」
「僕はいいって……」
水晶に近づくと白い靄が渦巻いた。
「ん」
老婆が眉間にしわを寄せる。
「お前さんの前世はサルじゃ」
「あ?」
僕は婆さんの顔を指でなぞった。
「婆さんや今から来世に送ってあげようか?そしたらあんたの前世はスピリチュアル詐欺師だ」
フェアは僕の後ろから脇の下に腕を入れて後ろに引っ張った。
「ちょっとニア君落ち着いて!」
「落ち着いた。よしマキナ次はお前だ」
「私はいい。お金の無駄」
「一人だけ逃げれると思うな」
マキナの手を引っ張り、そのまま水晶玉に押しつけた。
「お嬢ちゃんは……ん、んー。芋じゃ!」
マキナは鞘に入ったナイフを握る。
「お金返して」
僕はマキナを羽交い締めにした。
「落ち着け!まだイモ女って可能性もあるだろ!」
「そっちのほうがなんかやだ」
フェアは僕たちを押すようにしてテントの外へ出る。
「ありがとうございました」
フェアがそう言うと背後から、老婆の声が聞こえた。
「……また」
「次はどこ行く?」
「もういいよ……」
屋台を回っているうちに、気づけば空は夕焼けに染まっていた。
「ねぇ、みんな。私、明日は冒険者ギルドに登録しに行くんだけど、一緒に来る?」
「え、行く」
僕は食い気味に答えた。
「マキナちゃんは?」
「私も行く」
僕たちは受験生なのに、一体何をしているんだろう。
読んでいただきありがとうございます。
なんでもいいので感想、評価をいただけたら嬉しくて嬉しくて震えます。
この前花火大会に行きました。
身長が小さくて何も見えませんでした。




