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デウス・エクス・マギア ~模写魔法の発動条件がTS(性別逆転)だったので隠れて使います~  作者: 星乃 緋咲


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7 異世界は治安が悪い


  館から大量の魔導書を持ち帰ると、父さんが不思議そうにこちらを見た。


 「お前、それどうしたんだ?」


 「友達からもらった」


 「え……女?」


 「いや」


 女の子からもらったなんて言ったら、面倒くさいことになりそうなので黙っておくことにした。


 「本当にもらったんかぁ。パクったんじゃなくて」


 息子のことを何だと思ってるんだ、この人は。


 「違うよ。そんなことより、魔法使いになりたいんだけどどうすればいい?」


 「めんどくさいからやめたほうがいいよ。学校に入るためにも勉強しないといけないし」


 めんどくさいからやめたほうがいいって、どんな教育を受けたらそんな教育方針になるんだよ。


 「それくらいなら私が教えるよ」


 「え?」


 「私、ニアが思ってるよりすごいんだからね」


 母さんは口元に笑みを浮かべ、得意げに言った。


 「本当に?」


 「うん」


 「へぇ。じゃあ明日からお願い」


 「人にお願いする態度じゃないわね……」


 こうして、学校へ入るための日々が始まった。


 ◇ ◇ ◇


 母さんからは一般教養と魔法の基礎を教わり、父さんからはよく分からない剣術を叩き込まれ、時々マキナのもとへ通って魔導書を読み漁る。


 そんな毎日を過ごしているうちに、気づけば十五歳になっていた。


 「試験まであと十三日だけど大丈夫? 明後日には王都行きの馬車が来るからね。着くまで二日かかるよ」


 「二日?」


 「うん」


 まじかよ……。


 ◇ ◇ ◇


 二日後。


 「頑張ってね」


 「落ちたら次は一年後だからなー」


 プレッシャーかけるなよ。普通にやばいだろ。


 「大丈夫よ。ここまで頑張ってきたんだから」


 「うん。じゃあ行ってきます」


 家を出ようとした瞬間、母さんに呼び止められた。


 「あっ、待って!」


 振り向いた僕の腕を取ると、母さんはリストバンドをはめる。


 「なにこれ?」


 「それを見せないと学校に入れないの」


 クラブかよ。


 「あと、このリストバンドには個人情報も登録されてるからなくしちゃだめよ。まぁ、試験が終わるまでは外れないけどね」


 え?


 ◇ ◇ ◇


 馬車かぁ……懐かしいな。


 中へ乗り込むと、見覚えのある銀髪の少女が静かに座っていた。


 「マキナ?」


 「……なに?」


 「なんでいるの?」


 「私も試験を受ける」


 へぇ、住所不定でも受験できるんだ。


 車輪が地面を刻むたび、馬車が大きく揺れる。


 「あー、酔う……」


 「大丈夫? まだまだだよ」


 「なんか、サスペンション魔法とかないの?」


 「なにそれ?」


 車輪が土を削る音に、別の足音が混ざる。


 「盗賊だ!」


 その声と同時に、周囲で一斉に剣が抜かれた。


 「こういう時は目立っちゃダメなんだよ」


 「わかった」


 小声で話していると、左斜め前に座っていた男が立ち上がった。


 「俺が倒す」


 そう言い残すと、男は馬車から飛び降りる。


 「炎よ、我が手に集い牙となれ 炎弾(ファイヤクーゲル)


 詠唱が終わると同時に放たれた炎の弾が、盗賊の肩を貫いた。


 「よし!」


 しかし、その直後。


 別の盗賊が背後へ回り込み、男の首へ剣を突きつける。


 「おとなしくしていればよかったものを」


 その瞬間、一人の白髪の少女が静かに立ち上がった。


 「氷弾(アイスクーゲル)(フォアハング)


 彼女がその言葉を口にした瞬間、無数の氷弾が盗賊たちを一斉に貫き、その場で氷漬けにした。


 「助かりました! まさかこんなところで盗賊が出るなんて……」


 御者は白髪の少女へ何度も頭を下げる。


 「いえいえ」


 それ以降は特に何事もなく、馬車は王都を目指して進み続けた。


 「あのさ、ずっと思ってたことがあるんだけど、言っていい?」


 「なに?」


 「マキナと初めて会ってから結構経つじゃん」


 「うん」


 「なんか全然変わってなくない?」


 「え……」


 静寂が流れる。


 「……ある。変わったところ」


 「なに?」


 「歯が増えた」


 「え、きもちわる」


 マキナは人差し指で口角を引き上げ、奥歯を見せる。


 「なんだ、ただの親知らずじゃん。歯茎ごと増えたのかと思った。オシリスの天空竜みたいに」


 「何だか知らないけど私のことなんだと思ってるの?」


 しばらくすると馬車がゆっくりと止まり、王都の門が静かに開いた。


 門の向こうには、大勢の人々が行き交い、活気あふれる街並みが広がっている。


 「これ、祭りでもやってるの?」


 「いろんなところから人が集まる時期だからね」


 「試験まであとどれくらいだっけ?」


 「九日」


 「それまで宿に泊まるんだよね?」


 「うん」


 「試験まで余裕ありすぎじゃない?」


 「その分、王都で遊べる」


 余裕だなぁ。


 「そうだね」


 車輪の音が徐々に小さくなり、やがて馬が足を止める。


 踏み板を降り、周囲を見渡した。


 「どこに行けばいいか全然わからないんだけど」


 「まずは宿じゃない?」


 「たしかに。宿どこ?」


 「知らない」


 途方に暮れていると、さっき盗賊を倒した白髪の少女がこちらへ歩いてきた。


 「迷ってるの?」


 「あ、さっきの」


 「うん」


 「はい」


 「私、今から宿に行くところだから一緒に来る?」


 「お願いします」


 「私はフェア。よろしく。あと、敬語はいらないよ」


 「僕はニア。こっちはマキナ。よろしく」


 「よろしく」


 フェアは人懐っこく笑うと、そのまま宿まで案内してくれた。


 しばらく歩くと、一軒の宿の前で立ち止まる。


 「着いたよ」


 扉を開けると、カウンターの奥には中年の男性が立っていた。


 「いらっしゃい。一泊、飯付きで一人銀貨三枚。三人で銀貨九枚だ」


 「別々でお願いします」


 「あぁ。部屋は二階。男は手前、女は奥だ。ベッドは壊すなよ」


 ん? ……まぁいいか。やっと休める。


 ◇ ◇ ◇


 「……ニア」


 ん……。


 「朝?」


 目を開けると、すぐ横にマキナが立っていた。


 ここで一つ、疑問が浮かんだ。


 起こされるとしたら扉越しに声が聞こえるはずだ。なのに、どうして真横から聞こえるんだ?


 「おはよう」


 「おはよう……。鍵閉めてたよね? どうやって入ったの?」


 「呼んでも返事がないから、死んでるのかと思った」


 対話不能。


 「そうなんだ。それでどうしたの?」


 「朝ごはん」


 「わかった。準備したら行くよ」


 眠い……朝ごはん食べたら、もう一回寝よ。


 食堂へ向かうと、フェアが手を振った。


 「おはよう、ニアくん」


 「おはよう」


 「眠そうだね」


 「眠い」


 目をこすりながら答えると、フェアは小さく首を傾げた。


 「今日はなにか予定あるの?」


 「ない。寝ることを予定に入れていいならあるけど」


 「そっか。じゃあ私と出かけよ?」


 うわ。


 「どこに?」


 「屋台通りとか」


 ……

 

読んでいただきありがとうございます。

なんでもいいので感想、評価をいただけたら嬉しくて嬉しくて震えます。

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