2 異世界は森に行くと大体美少女が倒れてる
今、僕より頭一つ分ほど大きな銀髪ツインテールのゴスロリ人形が倒れている。
びっくりした……。捨てるならせめて見えないところに捨ててくれよ。マジで死体かと思ったじゃん。こういうのって買った店で引き取ってくれたりしないのか?
それにしても、ずいぶんリアルな人形だな。
「……ぅ……」
かすかな声が聞こえ、思わず足を止める。
「え……?」
音声ボイス付き……なわけないよな。
恐る恐る手首に触れると、指先へ一定の鼓動が伝わってきた。
「生きてる!?」
僕は慌てて少女の肩を軽く揺すり、耳元で声を張り上げる。
「大丈夫ですかー! 大丈夫ですかー!」
返事はない。
えっと……次は何だっけ。
そうだ、人を呼ぶんだ。
「誰か来てくださーい! 誰かー!」
声が森中へ響き渡る。
すると、静まり返っていた森が一斉にざわめいた。
茂みが揺れ、草を踏みしめる音がこちらへ近づいてくる。
やがて木々の隙間から、犬のような顔をした二足歩行の魔物がひょこっと姿を現した。
僕と目が合う。
「すみません、人を呼んできてもらえますか?」
魔物は一度だけ首を傾げると、森の奥へ駆けていった。
……言葉、通じた?
まあいいや。
次は確か心臓マッサージだったはず。
※脈がある人に心臓マッサージをしてはいけません。
大きく茂みが揺れる。
振り向くと、先ほどの魔物が戻ってきていた。
しかも一匹ではない。
後ろから次々と同じ魔物が現れ、あっという間に十匹近い集団になる。
全員が僕を見つめ、低く唸り声を上げた。
「……いや、誰が仲間を呼べって言ったんだよ! 人を呼べって言ったんだよ!」
返事の代わりに、コボルトたちは一斉に飛びかかってきた。
◇
数分後。
「……はぁ」
辺りには倒れたコボルトだけが転がっていた。
とりあえず全部倒した。
僕は少女へ視線を戻す。
まあ、こういう時は魔力でも流せば何とかなるだろ。
異世界だし。
少女へ大量の魔力を流し込むと、閉じていた瞳がゆっくりと開いた。
「……ミズ……」
「水ね」
水を飲ませると、少女は少しだけ表情を和らげる。
「君が……助けてくれたの?」
「ん? うん」
「ありがとう……」
「何があったんですか?」
「…………覚えてない」
……これ絶対面倒事に巻き込まれるやつだ。
帰ろ。
「大変ですね。それじゃあ、僕はこの辺で」
「……まって」
小さな声が背中へ届く。
「お礼がしたい」
「いや、お礼はいりません」
逃げるように歩き出す。
「じゃあ、さようなら。お大事に」
「……まって。何でもする」
その一言で足が止まった。
「え、何でも?」
「うん」
「……何でも?」
「なんでも」
何でもしてくれるなら何でもしてもらわないとな。
「じゃあ、魔導書とか持ってない?」
「魔導書が欲しいの?」
「うん」
「わかった」
「え、持ってるの?」
「うん。たくさんある」
「ほんとに?」
そういえば、名前を聞いてなかった。
「君、名前は?」
「私、マキナ。君は?」
ロボットみたいな名前だな。
「僕はニア。よろしく」
「よろしく」
こうして僕たちは、翌日の同じ時間にここで会う約束を交わし、それぞれ家へ帰った。
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私は異世界転生をしたいです!




