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開幕うっかり

「ひいぃぃぃぃぃぃ」

「もうやめてくれぇ! 」

「アッー! 」

「gyaoooooooooooooooooooooooo」


 カエデがドラゴンの里を訪れてから3時間、そこは地獄絵図と呼ぶにふさわしい光景が広がっていた。

 本来ドラゴンのような高位の種族は肉体の構築に魔力を用いている。

 そのため魔法に対する強い態勢と再生能力を誇る。

 それに合わせて肉体に作用する薬に対して絶対と呼ぶにふさわしい防御力を持っている。


 その反面、モミジたちの作る体内の魔力に作用する、いわゆる魔法薬の類は少々厄介な相手となる。

 もっともその巨体故に少量の魔法薬ではどうすることもできず、かといって量を用意しても素直に呑み込んでくれる相手ではないため普通の人間ならそんなものを用意することはない。

 ついでに言うと、少量でもドラゴンの魔力を狂わせることができる魔法薬は存在するが、どこかのおっちょこちょいとその保護者クラスでないと作成できない為高額だったりもする。

 通常の魔法薬でさえ一般家庭の生活費半年分といえばその価格も見えてくるだろうか。


 今回モミジがやらかしたのは、この魔法薬である。

 ドラゴンの里は険しい山中にある。

 その山は火山として有名であり、地下からは温泉が湧いている。

 その温泉を調べようと考えていたカエデは、瓶を取り出した。

 

 それは、以前若返りの薬を入れていたものだった。


 若返り薬、それは体内の魔力を活性化させて肉体に作用させるというものだ。

 普通の魔法使いでは一生かかっても作り上げることはかなわず、さらに上級の兵士であっても一生に一回見ることができれば幸運といえるほどに希少な薬だ。

 その理由は唯一の製作者たちが物騒な森に引きこもっているからというものだが当の本人たちは収穫後の野菜に振り掛けて再度収穫をするために使っている。


 その薬液が、瓶の底に少しだけ残っていたことにカエデは気付くことはなかった。

 こうしてカエデは薬液の残った瓶で温泉のお湯を掬い取り、お湯のサンプルを手に入れた。

 それと同時に、その温泉には魔力を活性化させる魔法薬が溶け込んでしまった。

 通常の魔法薬であれば限界まで薄められた挙句効果なんてものは消えてしまうだろう。

 しかしそこは、最高峰の魔法使いと賢者が作り上げた逸品。

 温泉に含まれる、火山から漏れ出した魔力に働きかけて魔力活性化の効果をお湯に反映させ、さらに肉体への作用までを温泉に付与した。


 普段自身たちが使っている温泉が、よもやそんなことになっていようとは夢にも思っていなかったドラゴンたちは何の気なしに温泉につかり、そして体内の魔力を活性化された。

 そして、活性化した魔力は肉体の保全に回りドラゴンたちの衰えた肉体は魔力へ返還され、逆に活性化した体内の魔力は新たな肉体へと変わった。

 こうして里に残ったドラゴンたちは若返ることとなったが、人間のように肉体に働きかけて若返るわけではなく、むしろ体内と体外の魔力を無理やり交換したために激痛にさいなまれることとなった。

 

 こうしてうっかり者はドラゴンの里にもう一つ伝説を残した。


 ついでに後日温泉は封鎖となったがこっそり若いドラゴンが入浴した際はちりちりとした痛みがあるだけでのた打ち回るような激痛ではなかったと述べたことから老いるほどに肉体の保全が必要になるとされ、温泉は前面に解放されることとなった。

 それと同時に、ドラゴンは寿命がなくなった。

 また若返りの温泉のうわさは人間の里まで広まり、一時気は大規模なドラゴン討伐まで計画されたが、ドラゴン側に神龍とまで呼ばれる強力な個体が現れたことでその計画は取り消された。


 その誕生の裏にはうっかり魔法使いがかかわっていたというのは、ドラゴンの里に語り継がれる話である。

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