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第41話 もう一人のアーカ

そいつは通りの奥から歩いてくる。


ゆっくり。


迷いのない足取り。


石畳の上を、


まっすぐこちらへ。


俺は動かない。


クロウも。


エリシアも。


風だけが吹く。


空は赤い。


そして。


そいつは俺の前で止まった。


顔を上げる。


同じ顔。


同じ目。


同じ声。


「……久しぶりだな」


俺は言う。


「……誰だ」


そいつは少し笑う。


「冷たいな」


少し間。


「アーカだ」


クロウが横で笑う。


「やっぱりな」


俺は目を細める。


「別のループか」


もう一人の俺は頷く。


「そう」


少し間。


「かなり前の」


エリシアが言う。


「……観測番号」


少しだけ考える。


「七百台」


クロウが言う。


「古いな」


そいつは肩をすくめる。


「お前よりはな」


俺はそいつを見る。


体。


傷。


服。


全部同じだ。


だが。


目だけ違う。


何かを知っている目。


俺は聞く。


「ここは何だ」


もう一人の俺は答える。


「墓場」


クロウが笑う。


「言い方がいい」


そいつは空を見る。


赤い空。


揺れる雲。


「観測が終わった世界」


少し間。


「放置された」


エリシアが小さく言う。


「維持停止」


もう一人の俺が頷く。


「そう」


俺は聞く。


「なぜお前は残ってる」


そいつは俺を見る。


少し笑う。


「逃げた」


クロウが笑う。


「俺と同じだな」


そいつは首を振る。


「違う」


少し間。


「俺は失敗した」


沈黙。


風が吹く。


遠くで建物が崩れる。


この世界は、


もう長くない。


俺は聞く。


「何を失敗した」


そいつは答える。


「終わらせるのを」


クロウが笑う。


「なるほど」


俺は言う。


「終わらせたかったのか」


そいつは空を見る。


少しだけ遠い目。


「何百回も見た」


少し間。


「同じ世界」


「同じ失敗」


「同じ結末」


俺を見る。


「だから終わらせようとした」


俺は言う。


「できなかった」


そいつは頷く。


「外に触れた」


エリシアが止まる。


「……コア」


そいつは頷く。


「そう」


俺は聞く。


「それで」


そいつは少し笑う。


「世界が壊れた」


クロウが笑う。


「いいね」


俺は言う。


「そのあとどうした」


そいつは答える。


「逃げた」


少し間。


「この層に」


エリシアが小さく言う。


「残骸世界」


そいつは頷く。


「ここは安全だ」


クロウが笑う。


「長くはないがな」


そいつは俺を見る。


じっと。


「お前」


少し間。


「まだ続けてるのか」


俺は答える。


「終わらせる気はない」


そいつは少し驚く。


それから笑う。


「昔の俺だ」


クロウが言う。


「未来の俺もいるぞ」


そいつはクロウを見る。


少しだけ眉を上げる。


「……なるほど」


少し間。


「全部揃ったか」


俺は聞く。


「何が」


そいつは答える。


「分岐」


沈黙。


風が強くなる。


赤い空が揺れる。


そいつは言う。


「ここに来たなら」


少し間。


「次は外だ」


クロウが笑う。


「そのつもりだ」


俺は聞く。


「どうやって行く」


もう一人の俺は指をさす。


遠く。


城の方向。


「観測塔」


エリシアが小さく言う。


「……残ってるの」


そいつは頷く。


「一つだけ」


クロウが笑う。


「行くしかないな」


俺はそいつを見る。


「お前は来るのか」


そいつは少し考える。


それから首を振る。


「俺はここでいい」


少し間。


「お前が行け」


俺は言う。


「なぜ」


そいつは答える。


「同じ顔は二人いらない」


クロウが笑う。


「いい理由だ」


俺は頷く。


「分かった」


振り返る。


観測塔の方向。


空が崩れ始めている。


この世界はもう長くない。


俺は言う。


「行くぞ」


クロウが笑う。


「だな」


エリシアが小さく頷く。


三人で歩き出す。


崩れた王都を抜けて。


観測塔へ。


その背中を、


もう一人の俺が、


静かに見ていた。

第41話でした。


「別のアーカ」は、

ループを終わらせようとして失敗した存在です。


つまり、

今のアーカの可能性の一つでもあります。


クロウ、別アーカ、現在のアーカ。


三つの分岐がそろいました。


次回からは、

観測塔へ向かう物語になります。


ここから物語は、

さらに“外側”へ進んでいきます。

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