第40話 別の王都
足が地面に触れる。
だが。
感触が少し遅れてくる。
俺は目を開ける。
「……」
クロウが隣にいる。
エリシアも。
だが。
景色が違う。
王都だ。
確かに。
城壁。
石畳。
塔。
全部同じだ。
だが。
静かすぎる。
クロウが言う。
「……人がいないな」
俺は周囲を見る。
通り。
市場。
店。
全部ある。
だが。
誰もいない。
エリシアが言う。
「ここ」
少し間。
「別のループ」
俺は聞く。
「いつの」
エリシアは答える。
「分からない」
クロウが笑う。
「いいね」
俺は歩く。
通りを。
風だけが動いている。
旗が揺れる。
だが。
人の気配がない。
市場の台を見る。
果物が置いてある。
だが。
腐っていない。
時間が、
止まっているみたいだ。
クロウが言う。
「捨てられた世界だな」
俺は聞く。
「どういう意味だ」
クロウが答える。
「観測が終わった」
エリシアが言う。
「近い」
少し間。
「維持されてない」
俺は城を見る。
同じ形。
だが。
空が違う。
赤い。
薄く。
混ざっている。
クロウが言う。
「ここ」
空を見る。
「崩壊寸前だ」
そのとき。
遠くで音がした。
石が落ちる音。
俺は振り向く。
塔の上。
何かが動く。
クロウが目を細める。
「……いるな」
俺は言う。
「人か」
エリシアが小さく言う。
「違う」
影が屋根から降りる。
音もなく。
ゆっくり。
俺たちの前に立つ。
人の形。
だが。
顔がない。
黒い。
輪郭が揺れている。
クロウが笑う。
「また残骸か」
エリシアが首を振る。
「違う」
少し間。
「観測体」
俺は剣を握る。
影がこちらを見る。
顔はない。
だが。
確実に見ている。
そして。
声がした。
「……対象確認」
クロウが笑う。
「喋るな」
観測体が言う。
「異常個体」
俺を見る。
「検出」
エリシアが言う。
「まずい」
クロウが言う。
「もう来たか」
観測体が続ける。
「記録更新」
空に文字が浮かぶ。
ERROR
ERROR
ERROR
観測体が止まる。
そして言う。
「……重複」
クロウが笑う。
「気づいたか」
俺は聞く。
「何だ」
クロウが言う。
「この世界」
少し間。
「もう一人いる」
俺は目を細める。
「……誰だ」
その瞬間。
背後で足音。
振り向く。
通りの奥。
人影。
歩いてくる。
ゆっくり。
そして。
そいつは言った。
「……また会ったな」
俺は固まる。
その顔。
その声。
その歩き方。
全部。
知っている。
クロウが笑う。
「いいね」
俺は呟く。
「……俺だ」
第40話でした。
ついに「別のループ世界」が本格的に登場しました。
そして最後に現れたのは、
もう一人のアーカです。
ループ世界では、
同じ人物が別の選択をしている可能性があります。
この出会いが、
物語の次の展開に大きく影響していきます。
次回から、
「もう一人のアーカ」の話が始まります。
引き続き読んでいただけたら嬉しいです。




