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第33話 第三層

光が消える。


足が地面に触れる。


音がない。


完全に。


俺は立っている。


クロウもいる。


エリシアも。


だが。


何かがおかしい。


「……静かすぎるな」


俺が言う。


クロウが周囲を見る。


「音がないんじゃない」


少し間。


「削られてる」


俺は足を踏み出す。


石の床。


のはずだ。


だが。


感触が薄い。


踏んでいるのに、


踏んでいないみたいだ。


エリシアが言う。


「ここは」


少し間。


「記録の外側」


俺は聞く。


「外?」


エリシアが頷く。


「ログに残らない層」


クロウが笑う。


「いいね」


壁を見る。


黒い。


ログがない。


流れていない。


止まっている。


いや。


“存在していない”。


俺は手を伸ばす。


触れる。


感触がない。


だが、


そこにある。


矛盾している。


クロウが言う。


「長居はできないな」


俺は聞く。


「なぜ」


クロウが答える。


「ここ」


少し間。


「記録されない」


俺は言う。


「だから?」


クロウが言う。


「お前も消える」


エリシアが小さく言う。


「正確には」


「残らない」


俺は黙る。


意味は同じだ。


クロウが言う。


「さっき三割だったな」


俺を見る。


「ここで一気に来るぞ」


俺は言う。


「……どれくらい持つ」


エリシアが答える。


「数分」


短い。


俺は前を見る。


空間が広がっている。


何もない。


ただ、


奥がある。


「進むしかないな」


クロウが笑う。


「いい判断だ」


歩く。


三人で。


音はない。


足音もない。


呼吸も、


薄い。


俺は気づく。


「……言葉も削れてる」


クロウが言う。


「思考もな」


エリシアが言う。


「急いで」


進む。


奥へ。


そのとき。


前に、


何かがあった。


人影。


座っている。


動かない。


クロウが止まる。


「……またか」


俺は目を細める。


「上位か」


エリシアが首を振る。


「違う」


少し間。


「それ」


「残骸」


俺は聞く。


「何の」


エリシアは言う。


「消えた人」


空気が重くなる。


俺は近づく。


人影。


顔がない。


輪郭が曖昧。


だが、


人だったもの。


クロウが言う。


「削られきったやつだな」


俺は立ち止まる。


それを見る。


なぜか、


少しだけ、


懐かしい感じがする。


理由は分からない。


思い出せない。


エリシアが言う。


「見ないで」


俺は聞く。


「なぜ」


エリシアは言う。


「引っ張られる」


その瞬間。


人影が動いた。


ゆっくり。


顔のないまま、


こちらを見る。


俺の中で、


何かが揺れる。


記憶。


断片。


知らないはずの、


何か。


クロウが言う。


「離れろ!」


俺は動けない。


足が止まる。


思考が、


遅い。


人影が手を伸ばす。


触れる寸前。


エリシアが俺の腕を掴む。


強く。


「ダメ!」


その瞬間。


視界が戻る。


俺は後ろに引かれる。


クロウが人影を蹴る。


存在が崩れる。


黒い粒になって、


消える。


沈黙。


俺は息を吐く。


「……今のは」


エリシアが言う。


「残りかす」


クロウが言う。


「記録に戻れなかったやつだ」


俺は言う。


「……俺もなるか」


エリシアが答える。


「何もしなければ」


短い。


俺は頷く。


「じゃあ進む」


歩き出す。


止まらない。


止まったら、


終わる。


クロウが言う。


「見えてきたぞ」


前。


空間の奥。


黒の中に、


一点だけ、


白い光。


エリシアが呟く。


「……出口じゃない」


俺は聞く。


「何だ」


エリシアは答える。


少しだけ、


声が低くなる。


「“外側”」


クロウが笑う。


「いいね」


俺は剣を握る。


「……行くぞ」

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