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第32話 上位の追跡

塔の中の空気が変わる。


静かだったログが、


一斉に逆流する。


クロウが顔を上げる。


「……来たな」


俺は剣を握る。


「さっきのやつか」


エリシアが首を振る。


「違う」


少し間。


「複数」


その瞬間。


壁が割れた。


音はない。


ただ、


存在だけが侵入してくる。


一体。


二体。


三体。


同じ“人の形”。


同じ“曖昧な輪郭”。


赤い目。


上位管理者。


クロウが笑う。


「増えたな」


俺は言う。


「戦えるか」


クロウが即答する。


「無理だな」


エリシアが言う。


「逃げて」


上位管理者の一体が言う。


「発見」


もう一体が続ける。


「異常個体二」


三体目。


「観測対象一」


全員の視線が、


俺に向く。


背中が冷える。


クロウが言う。


「完全ロックされたな」


俺は言う。


「逃げるぞ」


走る。


塔の奥へ。


ログの床を蹴る。


上位管理者が動く。


速い。


空間ごと滑るみたいに、


距離を詰めてくる。


エリシアが叫ぶ。


「右!」


俺は体をひねる。


次の瞬間、


左の空間が消えた。


完全に。


クロウが言う。


「直撃したら終わりだ」


俺は答える。


「分かってる」


走る。


ログの通路。


曲がる。


跳ぶ。


止まらない。


だが。


思考が一瞬、


遅れる。


足が半拍遅れる。


クロウが言う。


「来てるぞ」


俺は歯を食いしばる。


「……ああ」


削られている。


判断が、


遅くなる。


後ろで声。


「捕捉」


「補正」


「削除」


エリシアが言う。


「中心まで行って」


俺は聞く。


「何がある」


エリシアは答える。


「出口」


クロウが笑う。


「便利だな」


エリシアが言う。


「一度しか使えない」


俺は言う。


「十分だ」


通路が開ける。


広い空間。


中央に、


縦に伸びる光。


ログの柱。


エリシアが言う。


「そこ!」


俺は跳ぶ。


柱へ。


その瞬間。


空間が歪む。


上位管理者が前に現れる。


一体。


完全に前に。


逃げ道を塞ぐ。


「到達前に排除」


俺は止まらない。


剣を振る。


一閃。


当たる。


だが浅い。


相手は動かない。


腕が伸びる。


触れる寸前。


クロウが割り込む。


指を鳴らす。


空間がズレる。


俺の体が横にずれる。


直撃を避ける。


クロウが言う。


「行け!」


俺は踏み込む。


光の柱へ。


手を伸ばす。


そのとき。


後ろから、


三体同時に来る。


速い。


逃げ切れない。


エリシアが叫ぶ。


「アーカ!」


俺は振り返らない。


手を伸ばす。


届く。


光に触れる。


その瞬間。


視界が弾ける。


落ちる。


光の中を。


音がない。


重力もない。


ただ、


落ちている。


クロウの声。


「成功か?」


エリシアの声。


「まだ」


俺は目を閉じる。


頭が重い。


思考が、


少しだけ遅れる。


何かを思い出そうとする。


――思い出せない。


何を考えていたか、


一瞬で消える。


俺は呟く。


「……まずいな」


エリシアが言う。


「進んでる」


クロウが言う。


「どれくらいだ」


エリシアが答える。


「……三割」


俺は目を開ける。


「何が」


エリシアは言う。


「あなた」


少し間。


「もう三割、消えてる」


沈黙。


クロウが小さく笑う。


「いいね」


俺は言う。


「笑うな」


クロウが言う。


「いや」


少し間。


「ここからが本番だ」


光が消える。


俺たちは、


別の場所に立っていた。


見たことのない空間。


ログが、


黒い。


静かすぎる。


エリシアが呟く。


「……ここ」


少し間。


「第三層」

読んでいただきありがとうございます。


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