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第26話 再構成される世界

白い光が広がる。


静かに。


だが確実に。


世界を書き換えていく。


空が閉じる。


裂け目が消える。


赤いログが、


一つずつ消えていく。


王都が戻る。


崩れていた建物。


割れていた石畳。


倒れていた人々。


すべてが、


なかったことになるみたいに。


戻っていく。


クロウが呟く。


「……すげえな」


俺は答えない。


コアに触れている。


白い光。


無数の世界。


無数の記録。


全部が流れ込んでくる。


エリシアが言う。


「今」


「選んでる」


俺は目を閉じる。


見える。


選択肢。


壊れた世界。


壊れる前の世界。


もっと前の世界。


別の世界。


存在しなかった世界。


全部が、


同時にある。


クロウが言う。


「やるなら早くしろ」


「固定される」


俺は聞く。


「固定?」


エリシアが答える。


「一度決まったら」


少し間。


「戻せない」


白い光が強くなる。


時間が動き出す前。


最後の猶予。


俺は見る。


パン屋。


空き地だった場所。


そこに、


小さな店がある可能性。


あった世界。


なかった世界。


どっちもある。


俺は手を伸ばす。


その世界へ。


触れる。


選ぶ。


光が弾けた。


風が吹く。


音が戻る。


時間が動く。


王都。


人々が動き出す。


兵士が叫ぶ。


だが。


何かが違う。


クロウが周囲を見る。


「……戻ったか」


エリシアが言う。


「うん」


俺は地面に立っている。


空を見上げる。


裂け目はない。


ログもない。


普通の空。


だが。


完全じゃない。


俺は歩き出す。


王都の通り。


角を曲がる。


そこに、


店がある。


黒パンの店。


小さな看板。


狭い窓。


あの店だ。


俺は立ち止まる。


扉を開ける。


中に入る。


店主がいる。


覚えている顔。


同じ声。


「いらっしゃい」


俺は何も言わない。


ただ、


黒パンを見る。


確かにある。


俺は一つ取る。


熱い。


同じだ。


紙袋の感触。


匂い。


全部。


戻っている。


店主が言う。


「今日は混んでるな」


俺は聞く。


「何で」


店主は答える。


「王都の南で騒ぎがあったらしい」


俺は目を細める。


「……被害は」


店主は言う。


「大したことない」


「すぐ収まったってよ」


俺は黙る。


軽い。


軽すぎる。


クロウが後ろから入ってくる。


「成功か?」


俺は答えない。


店の外を見る。


エリシアが立っている。


少しだけ、


遠い。


クロウが言う。


「どうした」


俺は言う。


「……減ってる」


クロウが眉をひそめる。


「何が」


俺は答える。


「記憶」


クロウが自分の頭を押さえる。


「……ああ」


少し笑う。


「来たな」


エリシアが言う。


「当然だよ」


俺は外に出る。


エリシアを見る。


「何を削った」


エリシアは少しだけ黙る。


そして言う。


「均衡」


俺は聞く。


「誰の」


エリシアは答えない。


ただ、


少しだけ笑う。


「全部は戻らない」


クロウが言う。


「等価交換か」


エリシアが頷く。


「近い」


俺はパンを持ったまま、


立っている。


確かに戻った。


街はある。


人もいる。


だが。


俺の中の何かが、


少しだけ消えている。


思い出。


回数。


細かい部分。


削れている。


クロウが言う。


「……面白いな」


俺は聞く。


「何が」


クロウは笑う。


「世界が」


少し間。


「お前を削り始めた」


エリシアが静かに言う。


「違う」


「世界じゃない」


俺は聞く。


「じゃあ何だ」


エリシアは答える。


「あなたが選んだ」


風が吹く。


王都は、


何もなかったみたいに、


普通に動いている。


俺はパンを一口かじる。


温かい。


確かに、


存在している。


だが。


俺は呟く。


「……減ってるな」


エリシアが小さく言う。


「まだ、ね」

読んでいただきありがとうございます。


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