第18話 クロウ
お前」
男が笑う。
黒いコートの裾が風に揺れる。
瓦礫の上。
赤いログの雨の中。
その男だけが、妙に静かだった。
「俺だろ?」
俺は目を細める。
「……何言ってる」
エリシアが固まったまま言う。
「ありえない」
クロウが肩をすくめる。
「ひどいな」
「観測AI」
エリシアが言う。
「あなたは削除された」
クロウは少し考える。
「されたな」
少し間。
それから笑う。
「されなかったけど」
管理者が二人、同時に振り向く。
クロウを見る。
空中にログが出る。
UNKNOWN ENTITY
SYSTEM ERROR
管理者が言う。
「識別不能」
クロウが言う。
「そりゃそうだ」
指を軽く振る。
その瞬間。
一体のログイーターが、
消えた。
黒い霧ごと。
管理者が止まる。
ログが乱れる。
エリシアが呟く。
「……ログ編集」
俺は聞く。
「何した」
クロウは答える。
「ちょっと書き換えただけ」
管理者が手を動かす。
ログが流れる。
DELETE TARGET
CROW
だが。
ERROR
ERROR
ERROR
管理者が眉をひそめる。
「削除不能」
クロウが笑う。
「ログ外だからな」
俺は言う。
「……どういう意味だ」
クロウは俺を見る。
同じ目。
同じ色。
そして言う。
「簡単だ」
空を見る。
赤い裂け目。
管理ログ。
そして、
世界。
「お前」
少し笑う。
「まだ途中なんだよ」
俺は剣を構える。
「質問に答えろ」
クロウは頷く。
「いいぜ」
瓦礫から降りる。
俺の前に立つ。
近い。
顔。
声。
すべて、
どこか似ている。
クロウが言う。
「俺はクロウ」
少し間。
「お前の先」
俺は目を細める。
「何だと」
クロウが肩をすくめる。
「未来って言ってもいい」
エリシアが首を振る。
「ありえない」
クロウが言う。
「1027回」
空を見る。
「その先だ」
管理者が言う。
「虚偽情報」
クロウは無視する。
俺を見る。
「お前」
「世界止めたいんだろ」
俺は答える。
「そうだ」
クロウは笑う。
「俺もそう思った」
少し間。
そして言う。
「最初はな」
俺は聞く。
「……最初は?」
クロウの目が少し暗くなる。
「1027回やると」
空を見る。
王都。
崩れる街。
ログの雨。
「分かる」
俺を見る。
「この世界」
小さく言う。
「終わってる」
俺は言う。
「だから止める」
クロウは首を振る。
「違う」
静かに言う。
「終わらせる」
その瞬間。
空が大きく裂けた。
管理ログが暴走する。
エリシアが叫ぶ。
「削除ログ!」
クロウが笑う。
「ちょうどいい」
俺を見る。
「見せてやる」
指を上げる。
軽く。
その瞬間。
王都の空のログが、
一部、
消えた。
管理者が固まる。
「……ログ欠損」
クロウが言う。
「これが」
俺を見る。
「ログ外の力だ」
エリシアが呟く。
「……ループ破壊者」
クロウが笑う。
「大げさだな」
そして俺に言う。
「お前」
「どっち選ぶ?」
空を見る。
管理者。
ログ。
壊れる街。
そして、
世界。
クロウが言う。
「守るか」
少し間。
「終わらせるか」
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