第17話 王都パニック
空から、もう一つの影が落ちてきた。
赤い裂け目の奥。
光を切り裂いて、
ゆっくり降りてくる。
王都の人々が空を見る。
ざわめき。
悲鳴。
「また落ちてくる!」
「何なんだあれ!」
石畳の広場。
最初の管理者が立っている。
その横に、
もう一つの影が降りた。
同じ白い服。
同じ無表情。
管理者。
エリシアが呟く。
「……管理補助」
俺は聞く。
「増えるのか」
エリシアは肩をすくめた。
「削除作業だからね」
二人の管理者が並ぶ。
同時に手を動かす。
空に文字が浮かぶ。
DELETE PROCESS
RESTART
赤いログが流れる。
その瞬間。
王都の地面が割れた。
ログイーターが出る。
一体。
三体。
五体。
街のあちこちから。
黒い霧。
歪んだ体。
人々が逃げ出す。
「魔物だ!」
「逃げろ!」
「助けて!」
ログイーターが人に向かう。
俺は走った。
剣を振る。
一閃。
黒い霧が裂ける。
だが再生する。
別のログイーターが家を壊す。
石壁が崩れる。
瓦礫。
煙。
エリシアが言う。
「数が違う」
俺は聞く。
「何体だ」
エリシアは空を見る。
赤いログの流れ。
計算するみたいに。
「……三十」
俺は笑った。
「多いな」
ログイーターが迫る。
俺は踏み込む。
剣を振る。
二体を斬る。
黒い霧が舞う。
だが増える。
止まらない。
管理者が言う。
「対象を排除」
二人同時に手を動かす。
空気が歪む。
俺の足元。
赤い線。
エリシアが叫ぶ。
「上!」
俺は跳ぶ。
次の瞬間。
石畳が消えた。
空間ごと。
黒い穴。
削除ログ。
俺は着地する。
「……なるほど」
管理者が静かに言う。
「異常個体」
「処理優先度上昇」
空のログが変わる。
DELETE TARGET
PRIORITY MAX
エリシアが苦笑する。
「最悪」
俺は剣を肩に乗せた。
「慣れてる」
ログイーターが群れで来る。
十体。
同時に。
俺は前へ出た。
一体を斬る。
二体目を蹴る。
三体目を避ける。
黒い霧が爆ぜる。
だがまだ多い。
街が壊れていく。
建物。
道。
広場。
エリシアが言う。
「このままだと」
俺は聞く。
「何分だ」
エリシアが答える。
「五分」
俺は少し笑った。
「余裕だ」
その瞬間。
空がさらに裂けた。
赤い光。
王都全体を覆う。
管理者が言う。
「最終処理開始」
ログが落ちる。
無数。
赤い光の雨。
エリシアが呟く。
「……世界削除ログ」
俺は空を見る。
「本気だな」
エリシアが言う。
「あなたのせい」
俺は言う。
「知ってる」
ログイーターが迫る。
だが。
そのとき。
後ろから声。
低い声。
静かな声。
「……1028回目か」
俺は止まる。
振り向く。
瓦礫の上に、
一人の男が立っていた。
黒いコート。
長い影。
男が笑う。
「随分粘ったな」
俺は目を細める。
「……誰だ」
男はゆっくり言った。
「クロウ」
エリシアが固まる。
「……嘘」
クロウが肩をすくめる。
「まだ残ってたのか」
観測AI。
そして俺を見る。
同じ目。
同じ視線。
クロウが言う。
「お前」
少し笑う。
「俺だろ?」
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