第9話
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ゼロ様が敵を倒しに行かれて私はニナと一緒に敵の襲撃に備えます。時々森のなかで何かが爆発するような音がしますがあんまり心配はしていません。
「あ、アリシアさん……」
「怖がらないでいいですよ、私も戦えますから」
ゼロ様と出会う前はこれでも一人前の冒険者でした。今回は敵が多いかもしれませんが心強い味方がいるので上手くやれるでしょう。
しばらくすると、剣や斧などを持った男たちが5人ほどやって来ました。私とニナを見るとどこか下衆びたような目で私たちの体を見てきます。
「へへへ……あのガキさえいなけりゃこっちのもんだ」
「流石大将!あいつはきっと魔法に飲み込まれてますね!」
男たちは私たちを動揺させるためかそんなことを言ってきますが意に介していては埒があきません。私はそんな戯言より明確に聞きたいことを聞きました。
「あなたたちは何故私たちを襲うんですか?」
すると大将と呼ばれた男がニヤニヤしながら教えてくれた。
「互いに気持ちよくなるついでに教えてやるよ!」
……くそみたいな男ですがどうにかして情報を聞き出さなければいけません。
「もう一度聞きます……何故このようなことを?」
「何度もうるせぇよ!早く俺らを楽しませやがれ!!」
そして男たちは私たちに襲いかかりました。剣の間合いに近づかれると戦いにくいので先手を打ちます。
「魔符『小火炎』ッ!」
赤いお札を投げて男たちに当たる。その瞬間、お札が燃え上がり男たちの防具や体に引火した。
「うわぁっちぃ!!」
「ひ、火がぁ……!!」
何人かの男は勘が良かったのか回避させられましたが、半分は削ることが出来ました。
「この女ッ!」
残った2人は急いで距離を詰めますが近接攻撃の間合いには程遠いです。
「魔符『雹乱』」
青いお札を投げるとそれに当たった所が凍りつきました。狙いは外れてしまいましたが足に当たった男たちの動きを止めることは出来ました。
「く、くそっ!こんなはずじゃ!!」
「あなたたちは私を侮りすぎましたよ」
私は襲ってきた男たちの鎮圧に成功しました。ですが何かを見落としている気が……
「あ、アリシアさん……!」
焦った声をあげるニナを見てみると黒づくめのシーフがニナの首もとにナイフを当てていました。
「……動くとこの女を殺す」
「くっ!」
「よくやったぞ!ハイドと呼ばれるだけあるな」
ハイドという名前を聞いて心当たりがありました。それは隠密スキルが異常に高く不意討ちをされれば必ずやられるという盗賊のことです。
「貴様の負けだまずは武器を捨ててもらおうか?」
ニナを人質に取られている以上迂闊には動けません。私は渋々魔符を地面に捨てます。作れることは無いのですが、一度解除すると作るのに手間がかかるので実質攻撃する方法が封じられました。
「腰に差している剣も捨てろ」
言われた通り剣も捨てます。これで完全に丸腰です。
「じゃあ服を脱いでもらおうか」
流石にそれには応じることは出来ません……勿論、ハイドはニナにナイフを当てて少しだけ首を差し込みます。
(ゼロ様……!)
私は仕方なくその命令に応じるために服に手をかけ……
ヒュボッ
変な音がした瞬間にハイドの頭がどこかへ吹き飛びました。辺りにはおびただしい程に血が撒き散りました。
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「ヒット……あいつらを生かす理由がなくなったな」
狙い通り、黒づくめの奴を排除した俺は動きを止められた奴らを次々と狙撃していく。
何やら指示をしていた男以外の奴らの頭を吹き飛ばして、リーダーの男も腕だけを吹き飛ばしてから俺はバレットを分解して、アリシアの所へ向かった。
アリシアのところに到着すると赤黒い何かが地面に染み込んだ挙げ句、聞くに耐えない悲鳴が響いていた。
「ぉ、俺の腕ぇ……!」
「黙れ口を閉じろ」
俺はリーダー格の男の凍った足を砕き地面に転がした。運が良いことに傷口が凍っていたためそんなに痛みを感じなかったようだ。
「俺の女によくも手を出したな?どうなるか分かってんだよな」
それだけ言うと『榛名』を展開して首に当てた。
「さてと……本来だったら直ぐにでも地獄に落としたいところなんだが……俺の質問に答えたら命だけは助けてやるよ」
するとその男は涙を流しながら命乞いを始めた。
「だのむぅ……まだじにだくない……!!」
「じゃあ質問だ、ここにいる皇女を襲ったのは何故だ」
「い、依頼でだ……やげにほうじゅうが高かったから受げだ」
「依頼主は?」
「『ブロークン』」
俺はニナに『ブロークン』という名前を知っているかどうか聞くと、ショックを受けた様子で震えながら言った。
「わ、私の父の昔の名前です……」
なるほど……どうやら深い何かがあるらしい
「こ、こごまでしゃべったんだ……だすげで……」
「分かった……ほらよ」
俺は魔力操作で男の細胞を活性化させて治癒に入った。しばらくすると吹き飛んだ腕や足が生えたのだった。
「ほら、早くどっか行け」
するとその男は全力で走って『ルーミア』に向かったのだった。
「……良かったんですか?」
「まさか?罪は償ってもらうさ」
すると遠くの方で何かが爆発するような音がした。それは水風船を割るような乾いた音だった。
「言っただろ?地獄に落とすとな」
とりあえずはスプラッタな状況を直視した二人のケアが先だ。二人とも耐え難い状況を味わった以上手を打たないと後から影響を及ぼすと思いひとまず、『ルーミア』に移動することにした。
「展開『コンコルド』」
魔力を操作していつもの車両を作りだして二人を乗せる。そして思いっきりアクセルを踏み込んでかっ飛ばす。
そして車を城門ではなく城壁の側に止めて二人を降ろした。
「今からすることは裏技だ。誰にも言うなよ」
何の事か分からない二人を担いで俺は城壁を走り始めた。魔力で足に抵抗を作り落ちないように壁面を走る。そんな方法で入ってくる人なんかを想定できるはずもなく、スムーズに登ることが出来た。
「二人とも気分はどうだ?」
「「…………」」
ガタガタ震えて声すらも出ないようだ。この調子だと多分降りるときは気絶でもするんじゃないか……?
俺は楽にしてやるために間隔を無くしてそのまま壁面をダッシュした。
「「きゃあああ!!」」
そんな悲鳴をバックに聞きながら全速力で走る。そして地面が見えてきたところで飛んだ。
「展開『イージス』!!」
魔力を操作して弾力のある盾を展開してそれに飛び込んだ。柔らかい衝撃とともに減速でき、普通に着地することが出来た。
「到着って……ありゃありゃ」
背負っていた二人は完全に意識を手放していた。




