第8話
ひとまず、アリシア達を襲っていたドラゴンを討伐したことで二人の安全を確保することが出来た。ふと、ステータスを確認してみると『魔力操作』に新しい能力が付与されていた。
『魔力操作』・・・使用頻度の高い物を登録することができる
どうやら、イメージをしないでもすぐに武器を展開できるようになったようだ。新しい能力を試すのは後にしてまずは二人の様子を見なければ。
「怪我はないか?」
「ぜ、ゼロ様ぁ……!」
アリシアはかなり怯えていたらしく俺の胸に飛び込んで泣きついてきた。おまけに尻尾もぶるぶる震えていて不覚にも可愛いと思ってしまった。
「よしよし……もう大丈夫だ」
「うぅ……」
これはどうやらしばらくは復活しそうにないな。そう思った俺は新しい能力を試すことにした。
まずは普段から使うククリナイフを登録して展開する。すると一発でいつも使っている長さと握りやすさのナイフが装備される。これは良い機能だ。
他にも色々と登録するがふとしたきっかけで名前をつけることにした。
「双剣の方は……『榛名』と『浜風』にするか」
右手の白と赤を基調としたナイフを『榛名』と名付け、左手の銀と碧のナイフを『浜風』とすることにした。
そんなことをしていると気持ちが落ち着いたのかアリシアが俺を見上げてきた。その目はまだ赤く腫れていたが守りたくなるような可愛さがあった。
「あーんんっ!とりあえず落ち着いたところで早く用件を済ませよう」
そう言って少女とアリシアを立たせ、村に向かうことにした。そして城門にたどり着くとそこには武器を持った村の住人が待ち構えていた。
「何者……っておまえか」
その先頭にはアリシアを狙っていた男が立っていた。あれだけされて怯えないとは中々に胆力があるようだ。
「俺じゃなくてこの子が用があるんだ」
長居しても面倒になりそうなので大人しく下がることにした。対称的に少女は前に1歩踏み出した。
「私は『スカーレット王国』の第3皇女『ニナ・スカーレット』です」
その発言に俺以外の全員が驚きに満ちた表情を浮かべた。俺は当然ながらこの国の事に関しては全く知らないので価値が分からないが王女なのかーということだけは理解した。
「現在、隣街である『ルーミア』において獣人を迫害するための活動が行われています。皆さん注意してください」
「……用件はそれだけか?」
「ええ、これから街に戻ってこの運動をなるべく縮小させます」
それだけ言うと少女……いやニナは踵を返して『ルーミア』の方へ向いた。その後を俺とアリシアで追っていく。しばらく歩いて城門が見えなくなるとニナは急にその場に座り込んだ。
「き、緊張した……!」
「大丈夫ですか?」
アリシアがニナを気遣って優しく話しかける。その様子を俺はただ見ることしか出来なかった。
「ご迷惑をおかけしました……もう大丈夫です」
心が落ち着いたようで改めて俺とアリシアにお礼を言った。
「今回は私のわがままに付き添ってくださった挙げ句命まで助けていただいて……ありがとうございました」
「あー発言いいか?」
「なんでしょうか?」
お礼の言葉を遮るタイミングで聞いてしまったが俺はそのまま続けることにした。
「あんた……だいぶ無理してないか?体が震えてるぞ」
実を言うと城門を離れた辺りからずっと体が震えていたのだった。最初は緊張のせいかとも思っていたがいっこうに治らないので聞いてみることにしたのだった。
すると突然ニナはその場に泣き崩れたのだった。
「こ、怖かったよぉ……!後ろから追われるし……向こうの人たちは睨んでくるしぃ……うぅ……」
「そ、そうだよな……」
突然の展開に動揺を隠し得ない俺とアリシアだが最初に動いたのはアリシアだった。ニナを抱きしめると優しく頭を撫で始めた。
「もう大丈夫ですよ……ここにいる限り何も心配する必要はありませんよ」
「ほんと……?」
「はい!ゼロ様がいる限り心配事はありません!」
嬉しいことを言ってくれるアリシアに感動しそうだが今はそういう状況じゃないようだ。
すぐさま『榛名』と『浜風』を展開して構える。魔力操作で周囲を確認してみると、ここから先にある森の中に何かしらの反応が
あり、数は2桁を越えているようだ。
「お客さんが来たようだ……アリシア、戦えるか?」
「任せてください!こう見えても冒険者なんですよ?」
そう言ってアリシアは懐からお札のような物を取り出した。
「……なんだそれ?」
「『魔符』といって属性のついたお札です。私……魔法は使えないのでこれが魔法の代わりなんです」
アリシアは魔符を取り出して構えた。ひとまず、アリシアにニナを任せるとしよう。
「じゃあ任せた。俺は遠い奴から……」
そう言い切る前にニナに向かって矢が飛来した。俺は『榛名』を振るって矢を切り払う。
「というわけだからちょっくら行ってくる」
そう言って足に力を込めて地面を蹴る。地面と水平に飛ぶように進んでいくと弓をつがえた兵士が見えた。その表情はあり得ない物を見るかのようになっていた。
「驚く前に攻撃しろよ、そしたら助かったかもしれないのに」
その言葉が兵士に届いたかどうかは知らないが返事を聞く前に兵士の胴体を一閃する。
「さて次は……っと」
どこからともなく魔法が襲いかかってきた。規模も狙いも甘く特にダメージはなかったがそれでも厄介だ。
「もう一発撃ってきてくれないかなー」
するとその頼みが届いたのか、4発の魔法が別方向から飛んできた。今度は直撃するのがいくつかある。
「増えてやがる……」
体を捻って直撃を回避して飛んできた方向のひとつへ走り込む。魔力の流れで相手がどこにいるのかすぐ分かるので見つけるのは容易だ。
すぐに一人を見つけて大きく踏み込む、すると後ろの方で何かが炸裂したようだがそこに俺はいない。術者はそのせいで反応が遅れて無防備な姿をさらしている。
「馬鹿な……こんなことが……」
それが最後の言葉となり術者は二度と日の出を見ることは無くなった。
次の敵を探すために周囲を偵察すると他の魔法使いは俺を追うために移動しているようだったがあまりにも展開が遅い。
「展開『バレット』」
『榛名』と『浜風』を分解して新しく『バレット』を展開する。これは現代でいう対物ライフルをモチーフとした銃だ。魔力を込めれば自由に破壊力と射程をあげることができる。
「試し撃ちも兼ねてだ……派手に行こうぜ」
生い茂った木の上に陣取って術者を探す。するとさっそく一人発見した。そいつは木の周囲をうろうろしながら俺を探しているようだが木の上にいるとは思っていないのだろう。
俺はためらうことなくそいつにバレットを向けて引き金を引く。申し訳程度の反動を肩に感じたが威力は絶大で術者の頭を綺麗に吹き飛ばした。
「ヒット、パーフェクトだ」
そして次の標的を探しだしてまた狙撃をする。気がつけば魔法職の奴を排除し終わっていた。
「ふぅ……アリシアはどうなっている……」
この木の位置からだとあまり見えないので一番高い木の上に移動する。そしてアリシアの方向へバレットを向けると驚きの光景が目に入った。だが、心を落ち着かせて狙いをつけて……引き金を引く。




