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第7話


「……兄さん?」


横転した馬車から助け出した見ず知らずの美少女に兄さんと呼ばれて当然ながら心当たりなんてない。


「ゼロ様、この方と面識があるのですか?」

「まさか……初めて見たぞ」


前世というか前の世界でも下に兄弟はいなかったから完全に人違いだとは思う。


「家を出た兄さんがどうしてここになんか……」

「その事なんだが全くの人違いだぞ」

「え……?」


完全に人違いをしたらしくその事実を認識してさらに恥ずかしくなったのか、顔を隠してその場に座り込んでしまった。


「……それよりもどうしてここまで馬車で来たんだ?」


とりあえず、馬車で逃げてきたであろう理由を聞くことにした。


「……実は、私追われているんです」

「何故だ、理由を聞いても?」


するとその少女は分かりやすく話をしてくれた。どうやら、『ルーミア』で大々的に反乱が起きるらしい。理由が獣人を迫害するためらしい。


「あんたはそれを他の街に伝えるためにか?」

「……この近くに獣人の住む村があってそれを伝えるために走っていたんです」


まさかの理由だった。恐らくその村はアリシアが村長をしていた村だろう。だが、馬車が横転した以上移動するのは大変だろう。


「……一人で大丈夫か?」

「何とかするしかありません」


その少女は確固たる信念を持ってそう言った。その姿はとても眩しく直視できない。


「……仕方ない、村まで送っていく」

「ゼロ様……いいんですか?」


アリシアが不安そうに聞いてくる。勿論、あの村とは関わりたくないがアリシアのソワソワした態度が気になっていたので手を貸すことにした。


「村まではそう時間は掛からんし、まぁ……帰りのことは考えてもらうが」


そんな会話をしているうちに体の重みはだいぶ解消されていた。ひとまず、魔力で再び車を構成して運転席に乗り込む。


「ほら、早く行くんだろ」


突然の展開に混乱している美少女は何をどうして良いか分かっていなかった。


「とりあえず乗ってください」


アリシアがそう言ってその女の子を後ろに乗せてアリシアは助手席に乗る。全員が乗ったことを確認して俺はアクセルを踏み込んだ。


『ルーミア』に向かうときよりも倍の速度で『エントラ村』に車を走らせる。数十分走らせるとエントラ村の城門が見えてきた。まぁこの辺が近づくのが限界だろう。


「到着した……って大丈夫かよ?」


車のなかには荒い運転をしたせいか完全にダウンしている美少女二人がいた。アリシアに至っては耳と尻尾も垂れ下がっている。


グロッキーな二人を降ろして車を分解すると、とりあえず横に寝かせた。幸いにして地面の草は柔らかくしばらくすれば治るだろう。


「とりあえず休んどけ」

「すみません……お手を煩わせて……」

「気にするなって、俺とお前の仲だろ」


アリシアが申し訳なさそうな態度を取っていることに何となく居心地を悪くして慰めた。多少効果はあったのか耳と尻尾に少し活力が戻ったような気がする。


「ゼロ様……」

「とりあえず安全は確保するさ、ゆっくり休んでろ」


それだけ言うと周囲に魔力を広げてある程度のスペースを確保する。魔力の感触からするとここから数百メートル先の森の中に何個かの生命反応があった。


敵か味方か分からない以上まずは偵察してから判断をするために気配を絶ちつつそれに近づいていく。幸いにして木々が視界を悪くしていて、近づくのは容易だ。


視線の先には錆びた剣を持った『コボルド』が3体で歩いていた。犬のような姿の二足歩行動物にどことなく違和感を覚えるがそんな考えは捨てて相手の様子を伺う。


コボルドたちとの距離は40メートルぐらいだが風下にいるために嗅覚では察知することが出来ないようだ。


「……ハッ」


両手にククリナイフを展開して相手との距離を詰める。遮蔽物を上手く利用して察知されないように近づきあと5メートルまで詰めることができた。


その距離に入ると相手も違和感を覚えたのかこちらに目を向ける。その頃には剣の間合いに入ることができていた。手近にいたコボルドを両手の剣でクロスに切り裂く。


息絶えたコボルドに目を向けず次の敵に標的を定める。突然の襲撃に反応できてないコボルドは武器を構えることすら出来ていなく、俺は躊躇することなく首を切り飛ばす。


残りは一匹だが、やっとのことで武器を構えることができたコボルドに焦る必要はない。そいつは持っていた錆びた剣を振りかざし俺を断ち切ろうとするがその剣筋をナイフでずらす。


突然の衝撃にコボルドは狙い通りに剣を振ることが出来ずに大きな隙を見せた。がら空きの胴体にナイフを突き刺し、そのまま横に一閃すると物の見事に真っ二つになった。


「こんなものなのか……」


異世界の生き物ということもあって少しばかり期待していたが呆気なく拍子抜けしてしまった。切り伏せたコボルドの剣をとりあえず回収して背中にくくりつける。


剥ぎ取りを終えたその時アイリスの悲鳴が聞こえてきた。全速力で駆けつけるとそこには巨大なドラゴンに睨まれて動けなくなった二人がいた。


「城門から近いって言うのに……!!」


何故こんな村に近いところにドラゴンが出るか謎だがこのままではアイリスやあの美少女が食べられてしまう。


「おい!!こっち向け!」


そう言って魔力で銃を構成するとそのまま狙いをつけて圧縮した魔力の塊を発射する。それは狙い通りドラゴンの首に命中するも鱗が魔力を拡散させたようで効果的な攻撃にはなっていなかった。


だが、ドラゴンの注意を俺に向けることは出来た。ゆっくりと首をもたげ何かをチャージする態勢に入った。そして口の周りからはオレンジに輝く物が見えた。


ーーーーガァァァァァァ!!!


周囲の大気を震わせる音と共に燃え盛るブレスが放たれた。魔力操作で正面に濃縮した魔力を広げてカバーする。そしてブレスがぶつかったが、その余波熱が俺の体を蝕むが直接的なダメージはなかった。


ほんの数秒のことだが体感的には長い時間だった。ドラゴンは完全に俺を消滅しきったと確信していたが、無傷の俺を見て少し動揺していた。


「じゃあ……反撃させてもらおうか」


俺は双剣を構築して一気に間合いを詰める。前の二本足をすり抜けて懐に潜り込むや否や左右の剣をただ素早く、そして加速させるように振り続ける。


どれぐらいの数の斬撃を食らわせたか分からないがドラゴンの鱗はボロボロになり肉どころか骨まで見えていた。


あまりのダメージに悲鳴に近い鳴き声をあげるが容赦はしない。次の部位に向かうために足に力を込めて跳ぶ(・・)。上に移動した俺は双剣をドラゴンの頭から兜割りの形で断ち切っていく。


俺が再び地面に着地したときにはドラゴンの頭は立てに二つに割れていた。完全に生命活動を停止したドラゴンは大きな地響きを立てて地面に崩れ落ちた。

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