第4話
「アリシアはここの村長なのか?」
「そうですよーこれでも一応村の皆さんからは信頼されているんです」
正直な話、プロポーションがいいとはいえまだ若いかと思っていたが……まさか村の長をしているとは想像できなかった。
「とりあえず中に入ってもらえませんか?」
「……世話になる」
アリシアに勧められて中にはいるとシンプルな作りとはいえ立派な雰囲気を出したエントランスが出迎えていた。
「部屋もたくさんあるので好きな部屋を……と言いたいところなんですけど……」
「何かあるのか?」
「ええ……実は私の部屋以外はここ最近まったく手付かずで放置されていました」
「どれくらいだ?」
「……ざっと30年」
……俺の気のせいだろうか30年と言う数字が聞こえたんだが。
「色々と分からないんだが歳はいくつなんだ?」
「女性にそれは聞いたらダメですよ♪」
満面の笑みを浮かべながら拒否されてしまい追及することを諦めた。これ以上詮索しても地雷を踏み抜く自信しかない。
「話を戻しまして、使える部屋が1つしかないので私と一緒に寝ましょう?」
「俺は帰る」
するとアリシアは追いすがるように俺の腰に抱きついてきた。柔らかい胸が当たっている感触がしたがそれを楽しんでいる余裕はない。
「ま、待ってください!そこは迷いながらも選ぶところじゃないんですか!?」
「離せよ!どう見たって罠じゃねぇか……!」
「わ、わかりました!それでは客間で寝てもらうのはどうでしょうか!?柔らかいベッドはありませんがゆっくりとは過ごせますよ」
帰ろうとする俺を引き留めてまで宿泊を勧めてくるアリシアに俺は折れることにした。そうしなければ際限なく続きそうだ。
「俺は客間で寝るそれでいいな」
「ゼロ様がそれよければ問題ありませんよ」
こうして俺はアリシアの家に泊まることになった。時刻は既に夜となり村にも静寂が訪れている。ひとまず家にあった物で料理を作り腹ごしらえをすると俺は外に出た。
明かりもなにもない村のせいか空を見上げれば満点の星空を見ることが出来た。勿論知っているような星座はなかったが月はとても綺麗だった。
そんな夜景を見ているとアリシアの家の方で何やら騒ぎが起きたらしく慌ただしい。俺が家に向かうとそこでは複数人の男たちに囲まれている。
「何でこんなことをするんですか!?」
「アリシア様……いえ、アリシアあなたを『内乱罪』で拘束します」
男たちの代表者がそう言ってアリシアの手を掴んで連れていこうとした。アリシアは抵抗したが敵うはずもなく引きずられていく。
「これは何かの間違いですわ!!」
「言い逃れはよせ!これは村の総意だ!」
「村長は私ですわよ!?」
「もう違うのだよ」
言い合っている男とアリシアの間に別な男が現れた。そいつは背が180ぐらいはあるだろうか、かなり高めでそこそこに体格が良かった。そして何よりハンサムだった。
「アリシア殿が行方不明になったと聞いてすぐに次の村長を決めたのです。帰ってこられるとは思いませんでしたが」
「……私を嵌めた……ということですか?」
その村長らしき男は口を歪ませながらアリシアに近寄る。
「私はあなたがほしいんですよ?アリシア様」
「や、やめて……」
抵抗するアリシアだが男は止めるはずもなくゆっくりとしかし確実に迫っていく。
「まずはその唇でも……」
そう言って男が近づこうとした寸前で俺は魔力と殺気をばらまいた。
「おい、俺の女に何してやがる」
不遜とも言える発言に眉をしかめる男たちだった。勿論村長らしき男はあからさまに面白くないような顔をしていた。
「貴様……それはここにいる女がどのような存在か知っての発言か?」
「自分の価値を分からずに自分を押し売りする女だ」
「それなのに手を差し伸べると?」
「当たり前だ。ここでこんな美少女を見捨てたんじゃ男が廃るってものだしな」
そう言いながら敵の数を確認する。周りにはそれなりの人数がいるが一番強いのは目の前の村長らしき男だろう。他はどうとでもなる。
「ゼロ様!ここの人たちはみんな普通じゃないんです!!」
「黙っていてもらおうか」
村長らしき男はそう言ってアリシアの口を塞ごうとするがそれに抵抗して何とか振りほどいた。
「ここの防御が突破できなかったのはここにいる人に狩られたからなんですよ!!」
アリシアの言葉を聞いて何となくではあるが理解した。まぁ普通に考えればそうなのだろうが俺にとっては何の関係もない。
「だからどうした?その程度で俺がお前を諦めるとでも?」
「……ゼロ様……ッ」
「むしろこの状況をどうしてほしいんだ?」
するとアリシアの目から涙が一筋こぼれた。まるで宝石のように輝きそして地面に落ちる。
「……私を……私を助けてくださいッ!!」
「分かった。この『ゼロ』全力で答えよう!」
そして俺は魔力を操作して両手にククリナイフのような剣を作り上げた。そしてそのまま一番近い男に容赦なく剣を振り抜いた。その挙動に反応できなかった男は為す術もなく胴体と首が永遠にさよならした。
「そ、その男を殺せ!」
泡を食ったように武器を構えて俺に攻撃をかけてくるがあまりにも動作が遅い。攻撃をするときには既に2人目を処理して3人目に攻撃をしようとしたが横から何かが迫ってくるのを感じてその場から離れた。一瞬後さっきまでいたところに炎が上がっていた。
「なかなか勘がいいな」
「……魔法か」
今更ながら魔法と言う概念があるのを思い出した。
「ちっ……」
俺は遠距離から攻撃される前に懐に飛び込もうとして前に出るが今度は、他の男たちからの攻撃によって阻まれる。それが普段から使っているフォーメーションらしく練度が高く突破するのに一筋縄ではいかない。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「……めんどくさ」
アリシア腕に抱きながら攻撃をしてくる村長らしき男は俺との距離をしっかり取っているせいか余裕ぶっているようだ。俺はこのままだと埒が明かないし何より疲れると判断し強引な手に出ることにした。
周囲の雑魚を切り捨てるために近いやつに攻撃を仕掛けようとすると、案の定村長らしき男が魔法を撃ってくるが俺はそれを無視して雑魚を1人殺す。背中には既に魔法が迫ってきているのを感じて半歩だけ横に動き、ギリギリで回避する。
「なに……!」
「はッ!」
息を一瞬吐いて脚に力を入れ地面を蹴る。その勢いで術者に迫るが距離は遠くこのままでは確実に一発はもらうだろう。勿論相手も当てられることを分かっているようでこれまで以上に魔力を込めていた。
そして解き放たれた魔法は業火を伴って俺に襲い掛かる。だが、慌てることもなく俺は左の剣を横薙ぎに切り払う。すると俺に襲いかかっていた魔法が何事もなかったかのように消滅してしまった。
あり得ない光景にその場にいた全員が呆然としたが俺だけは動きを止めずにそのまま術者との距離を詰めた。
「お姫様は返してもらう」
一言そう言って右手の剣を村長らしき男の肩に突き立てそのまま構造を分解する。塞いでたものを無くした傷口からは大量の血が流れ出していた。流れるように一連の動作を終えた手元には呆然としているアリシアがいた。
「怪我はないか?」
「……だ、大丈夫です……」
アリシアは顔を真っ赤にして俯いてしまった。このまま追い討ちをかけても良かったのだがその前に処理すべき事がある。
「さてと……これを見ても俺と戦う?」
表情は恐らく笑っていたと思うが目は確実に笑っていなかったと思う。俺の問いかけに生き残っていた連中は即座に武装解除して地面に這いつくばった。




