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第3話


「ところで……どうしてあんなところにいたんだ?」


街まで案内してもらう途中に無言というのも辛いので疑問に思っていたことをアリシアに聞いてみた。


「簡単に言いますと誘拐されたところを何とか逃げ出していたんですよ」


どうやらあの男たちは奴隷商らしく時折色んな村を襲って女子供を拐っているようだ。


「ちなみに奴隷制度っていうのは一般的なのか?」

「そうですね。とは言っても奴隷にも複数種類あります」


アリシアの説明によると奴隷は3種類あるらしく、『勤労奴隷』『犯罪奴隷』『社会奴隷』である。


『勤労奴隷』はいわゆる仕事人で、それなりに辛い仕事をさせられるらしい。とは言ってもある程度の身分保証はされているようで何かあれば買った側に責任が問われるようだ。


『犯罪奴隷』は文字通り犯罪を犯したものがなるものでこれについては一切の保証がない。いくら死のうが欠損が起ころうがまったく関与しないのがこの身分であり、おまけに特例がない限り身分から解放されることはない。


『社会奴隷』は戦争やクーデターにより追いやられた貴族がなる身分で、大体は身分保証されるものの対価として自由を制限されるらしい。分かりやすく言うならば『国のために身を粉にせよ』というわけだ。


「なるほど……それだとアリシアは勤労奴隷にさせられそうだったということか?」

「いえ……そう言った正規の奴隷ではなく違法に取引される類の方でした……」


そう言いながら目と耳を伏せるアリシアを見て何となく察することができた。有り体に言えば貴族の玩具(おもちゃ)ってとこだろう。


「とりあえず誘拐されるのは防いだ訳だが、自分の住んでいたところに戻りたいとかないのか?」

「それは……」


言葉を濁すアリシアを見た段階で気持ちは察することが出来た。


「……アリシアのいたところにも行ってみたいのだが」

「そんなゼロ様のお手を煩わせるような事は……!」

「そこは乗り掛かった船さ」

「ありがとうございます……!」


アリシアは頭を下げてお礼を言ってくれた。その態度に少しばかり気恥ずかしさを覚えたのは秘密だ。


「それでなんだが、これから行く街とアリシアの地元はどっちが近いんだ?」

「距離で言うとさほど変わりませんね。どっちもここから徒歩で2時間くらいです」

「うん普通に遠いよな」


現代日本人からすると結構な距離だと思うんだがやはりこの世界では普通なのだろうか。


「本来であれば馬車を使って移動する距離なんですけど」

「俺らには移動手段がない……」


とそこで俺の頭に1つの妙案が閃いた。とても簡単なことだ、祝福を使えばいい。


「1つ試してみたいことがあるんだ」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「これはすごいですね!!」


尻尾をパタパタと振りながら外を見ているアリシアがそんな感想を漏らしていた。その目は初めて見るものを逃すまいと輝いていた。


「しかしまぁ想像通り行って良かった」


今こうしているのは俺の『魔力操作』によって作られた《車》に乗っているからだ。現代日本にあるような車をイメージして作ったものの最大速度はそんなにあげてはいなかった。


最も維持しつつ動かすということもあって俺の負担はそれなりにあるものの倒れるほど辛いわけではない。


「村らしき物が見えてきたんだが……」

「そうですねあれが私の地元の『エントラ村』です」


見えてきたのはちょっとした門と周囲を囲む壁だった。想像していた村と違いそれなりに守りは固そうだ。おまけに壁の手前には堀も掘ってありどう見てもそんじょそこらの村とは思えない。


「実はこの近くに危険度が高い魔物が生息する森があるんですよ」

「つまりそこから出てくる魔物を防ぐためにこんな防備をしているということか」

「そういうことになりますね。まぁ過去に村が襲われた事がありますけど防御を突破されたことはありませんよ」


アリシアは大きな胸を張ってそう言った。勿論揺れた、何がとは言わないが。そうこうしているうちに村の入口付近にたどり着いた。


余談ではあるが門が見えてきた段階で魔力で作った車は解体して徒歩の移動に切り替えている。そして村の入口に到着すると当然のことながら門番が待ち構えていた。


「そこの黒いの止まれ!ここから先は許可証を持ったものしか入れん!」

「許可証ってなんだ?」

「許可証っていうのはいわゆるギルドカードです。あれは身分を保証するものですからね」


異世界から来た以上しかたないことだが当然ながら持ってはいない。それに許可証を持っていない人が入りたいと言ったらどうするのだろう。


「ちなみに許可証がない人でも銀貨1枚払えば仮許可証が出ます」


俺の疑問を知ってか知らずかアリシアがしっかりと補足を入れてくれた。まずはアリシアが自分のギルドカードを取り出して門番に見せた。


「あ、アリシア様でしたか!?」

「ええ……帰って参りましたわ」


門番に声をかけるアリシアはどことなく敵意を向けているようなそんな感じだった。心なしかアリシアの尻尾も揺れている。


「とりあえずこの方も一緒に中に入れてもらえます?」

「で、ですが……規則で決まって……」


門番がそう言い切る前にアリシアが銀貨を2枚取り出して門番に見せた。


「勿論お金は払いますわ?」


門番は固い表情を浮かべながら渋々と言った様子でアリシアと俺を村の中に通してくれた。

見た目はゲームで見かける城砦都市だが中身自体は素朴な感じの農村だった。そのギャップにどことなく違和感を覚える。


「それにしても……何であの門番は俺を中にいれようとしなかったんだ?」


アリシアと門番との会話の途中でもう一人の門番がじっと俺の様子を窺っているのが気になってしょうがなかった。


「実はですね……ここは余所者を受け付けたくないんです。私たちは閉鎖的な生活しかしていませんから」


言われてみれば高い壁を作り中に閉じこもればすぐにでも外界との交流は絶つことが容易だ。だがそれに何のメリットがあるのだろうか。


「細かい話はおいといて泊まる場所を決めませんか?」

「……恥ずかしい話、文無しだ」

「それは知ってますよ。ですので私の家に泊まってくれませんか?」


美少女からのお泊まりOK宣言をもらったが期待よりも不安しかない心境に少し驚いている。俺はそんな微かな感じに自信を持つことが出来ずにとりあえず先送りにした。


「分かった、その代わり部屋は別にしてくれ」

「ふふふ……恥ずかしいんですか?」

「アリシアは綺麗だから間違いが起きるかもしれないからな」

「別に私は構いませんよ?」


明け透けな言葉に俺の方が負けてしまった。そんな会話をしながらアリシアの後について行くと村のなかで一番大きな建物の前に着いた。とてつもなく嫌な予感がした。


「……一応聞くがここアリシアの家か?」

「そうですよ♪」


それを聞いて俺はがっくり来た。実は村長の娘とか言われても驚かないことにした。


「私……実はここの村長なんです」

「……はい?」


予想の斜め上を行く答えに呆然としてしまった。


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