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決起

 1610年三月、藤堂氏の所領であり、東西を結ぶ交通・軍事の要衝たる伊賀を藤堂高虎の養子、藤堂高吉が攻めた。高吉の攻撃から長い長い戦乱の火蓋が再び切って落とされた。


「伊賀上野城までの間に存在する敵兵は、少のうございます!!大半の兵は、安濃津に居る模様!!」

「申し上げます!!伊賀上野城の城主、高清は、城内に不在!行方を探っております!!」

高吉陣営には、続々と情報が寄せられていた。既に真田信繁隊が伊賀上野城に向けて進撃を開始していた。ただ、敵側は、まだこちらの行動に気付いていないようだった。


 藤堂高清は、高虎の弟であり、このとき伊賀上野城の城代を任せられていた。その高清は、城から少し離れた小山で鷹狩りをしていた。

「天気は、曇っておるが、雨は、まだ降る気配は、ないのう。鷹狩りは、おもしろいのう。」

高清と近臣が、談笑にふけっていた。彼の周囲では、平和な日常が続いていた。しかし、直後に届いた一報が、平和な日常を一瞬にして破壊した。


「申し上げます!!違い棒の旗を担いだ何者かの勢が、城を攻撃しております!!」

「なにぃー!? どこのどやつじゃぁ!!」

伝令兵の報告に高清が激情し、雄叫びをあげた。

「すぐに手勢を率い我が城へ駆けつけるぞ!!」

「はっ!!」


 高清が伊賀上野城に駆けつける。そこには、違い棒の旗がはためいており、三千程度の敵兵が城門に攻撃を仕掛け、藤堂高清配下の守備兵がそれを押し返していた。なお、伊賀上野城守備隊は、五千程度が常駐、高清の手勢は、百程であった。数のうえで敵軍を上回っており、更に籠城側である分、高清軍が有利とみられた。

しかし、鷹狩のために城主が城を離れていたため兵力が分断されたこと、なにより城主が城内に居ないことが大きな痛手となった。

「くそ!!城に入る隠し穴へ急ぐぞ!」


 高清が隠し穴に向かうも、そこには、六文銭に赤の布地という派手な旗を持った兵が一面に居た。

「なんとぉ!くぅ!突破じゃぁ!強行じゃぁ!!かかれー!!」

業を煮やした高清が強行突破を図ろうと試み、敵軍と交戦となった。

「我こそは、かの大乱において上田を守り通し、秀忠軍を撃退した真田信繁である!!我らに抗おうとする者あらば正面切ってお相手いたす!!」

「なに!?殿!危のうございます。あの旗といい、あの赤き甲冑。あれは、真田にござります!!」

「・・・なっ!!どういうことじゃ!高野山を抜け出したと?敵は、一体何者じゃぁ!!」

事態を把握しきれず狼狽する高清軍に対し、ここぞとばかりに真田隊が突撃を敢行した。


 真田隊の鉄砲隊が両側から襲い、正面からは槍隊と騎馬隊が猛攻し、わずか百程度の高清隊は、次々と討ち取られていき、戦場から逃げる者も続出し、局地戦は、真田隊の勝利に終わった。

「ひいぃ!!ひぃいぃ!! わしゃー逃げる!!」

伊賀上野城の城主、高清は、降参だとばかりに一目散に逃げ出した。高清は、討ち取られまいと考え、藤堂氏の本拠である津城に退散し、主力兵を率いて再戦を果たそうと図った。

「申し上げます!藤堂軍の大将、高清、逃亡!」

「行方を追い、ひっ捕らえよ!!ただし、伊賀を抜けたら深追いをするな!!」」

「はっ!!」

真田信繁から報告を受けた高吉が、高清の捕縛を家臣に命じた。


 城主が退散してしまった伊賀上野城。城兵の士気は、もちろん落ちる一方で兵士の間には、不安がつきまとっていた。

「城門を開け、白旗を掲げ、家老の首を差し出し降伏するのならば、我らの兵を温存することが出来まする。降伏を勧告すべきだと進言します。」

「うむ、そうせよ。信繁、頼む。」

「はっ!。」

大将、高吉は、信繁の降伏勧告案を飲んだ。降伏を伊賀上野城に勧告し、返答が来たのは、二時間後のことだった。


 城門が開き、同時に天守閣に白旗が掲げられた。すると、城門から首桶を持った兵が出てきて高吉の前に歩いてきた。

「家老の首にございます。わしらの命をお助けくださると。それだけは、守ってくだされば皆、投降する意志にござります。どうか、ご容赦を!」

「あい、わかった。」

「ありがとうござり申すー!」

戦いは、これにて終焉した。この戦いは、後に「伊賀上野合戦」と呼ばれることになる。敵軍の武装解除が終わったとき、日付けが変わろうとしていた。


「なにー!!?高吉が謀反と?糞たわけがぁー!!」

報せが駿府に滞在していた高虎に届いたのは、戦いから翌日のことであった。

「即刻、兵を率いて伊賀に赴く!真田の小童ともども首を落とし、京三条河原に晒すわぁ!!!!」

高虎は、養子、高吉の謀反を予期出来ず、それ故、怒りが何倍にも高まった。血圧が、二百を超えるほどに。

徳川幕府主力軍、高虎勢、徳川譜代軍を伴った大軍八万が駿府を出立し、高吉・真田軍を蹴散らすべく立ち上がった!


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